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「弱さ」も幸せのために:福岡 幸一郎(EAPメンタルヘルスカウンセラー)

「INTERVIEW」では、カウンセリングプラットフォーム「メザニン」のカウンセラーに広報室からインタビューを行い、その”人”を掘り下げます。

外資系企業に長く勤め、厳しく成果を求められる環境でビジネスマンとして活躍してきた福岡カウンセラー。メンタル不調も経験し、様々な人と関わるなかで福岡カウンセラーが見出した「人生の意味」とは何だったのでしょうか。

福岡 幸一郎
大学卒業後、一般外資系企業で営業・マーケティング部門に勤務。営業管理職、本社コンプライアンスマネージャーを経験する。
カウンセラー資格取得後は、個人向けのオンラインカウンセリングの提供、ストレスマネジメント講座の講師などとして活動している。


人が生きる意味とは何か

—— 福岡さんが心理に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか。

若い頃から、人が生きる意味だとか、人生とは何なのかとか、そういったことを考えていましたね。大学は農学部に入学したんですけれど、哲学に興味を持って、1回生の時は哲学の先生のゼミに通ったりもしていました。
キルケゴールとか、ニーチェとかを推薦されて読んでいた記憶があります。

—— 大学を出た後は、一般企業に長く勤められています。

社会人になってからは、哲学よりも自己啓発の本をよく読むようになりました。
もっと仕事ができる人になりたい、今のままじゃダメだ、そんな気持ちからだったと思います。

—— 「もっと仕事ができる人になりたい」という思いは、どこから来るものだったのでしょうか。

貧しい家に生まれ育ちましたので、少しでも自分のスキルとか能力を高めてキャリアアップしてやろうという気持ちがあったんですよね。
そういう思いで、勉強というか、本を読んでいました。

でも、そうやって上のポジションを目指して働くことに、割と早めに挫折してしまいました。
会社の中では、早いペースで昇進していっていたと思います。けれど、一生懸命働いて、収入やキャリアアップを追求しても、どうやら幸せにならないぞ、と考え直すことになりました。

そこからまた、人間の幸せってなんだろう、生きる意味はなんだろうといった学生の頃に持っていた疑問に回帰しました。
でも、今度は哲学じゃなくて心理学に向かっていったんです。


ミドルになってぶつかった壁

—— 「挫折」というのは、何があったのでしょうか。

僕はずっと営業職でした。それが50歳になる前、45ぐらいの頃かな、営業の最前線というよりはバックアップに回るような、そんなポジションに異動しました。
営業の最前線は本当にしんどかったので、このまま前線に戻らずにキャリアを歩むことができると思っていたんですね。

ところが、大きな組織変更があって、もう一度営業に戻ってくれという話になってしまって。

しかも勤務地が遠方だったんですね。子どもの教育を優先して、単身赴任しました。
赴任先では若い人から自分よりも年上のベテランまで、年齢も価値観も異なる人たちを部下に持つことになって、そして成果を出せというミッションを与えられました。
でも、思うように成果が出ない。

そうしているうちに社内で色々とトラブルが重なって、上司ともうまく連携できず、自分には味方がいないんだという考えに支配されていきました。

—— 今こうして振り返ってみると、当時の福岡カウンセラーはどういった状況だったと分析しますか。

自分で自分を追い込んでいましたね。
誰も分かってくれない、八方塞がりだと、そうやって意識が自分の内側に向いて行った。すると今度はネガティブな考えに取り憑かれて、なんでもネガティブに捉えるようになって。

助けを借りるということが上手くできなかった。
これが、最大の失敗だったと思います。

それは僕の性格的な問題でもあったでしょうし、僕らの世代に共通のマインドセットでもあったと思います。
男は弱音を吐いてはいけない、管理職は弱い部分を見せてはいけない、みたいなことです。

—— それは、ある種の「男らしさ」でしょうか。

昔はそれが美徳とされていたんですよね。
「女々しい」なんて言葉は、まさにそれを表していますよね。

—— 求められた成果が出ないことで追い詰められて行ったわけですが、その後はどうなったんですか?

ここで「カウンセラーのおかげで」なんて言えたら、話としては綺麗でしょうけれど、違うんです。

当時、会社の中で権限のある方が手を差し伸べてくださって、違うポジションに移してくれたんです。
環境が変わって、自分の心身の調子も戻りました。

多分、「様子がおかしいぞ」と察して下さったのでしょうね。
ある時、私に電話をして下さったんです。

口では「大丈夫です」なんて答えていましたけれど、会社を辞めようかと悩み始めてました。
なので、これが最後の電話になるかもしれないなと思いまして、思い切って「実はちょっと上手くいってなくて」と打ち明けたら「そうか」と言って僕の話を丁寧に聞いて下さりました。

直接の上司だったころは、厳しい指導をいただいて落ち込んだこともたくさんありましたけれど、自分が一番ピンチだったときに助けていただいたのもこの人でした。
会社を辞めたいまでも、お付き合いさせていただいています。


人の幸せに貢献する

—— 挫折を経て、若い頃は哲学に向かった興味関心が、心理学に向いたわけですけれども、哲学と心理学は福岡さんにとって何が違ったのですか?

心理学の中でも、ポジティブ心理学の存在を知って、これだなと思いました。

ポジティブ心理学
ウィリアム・ジェームズやアブラハム・マズローの影響を受けて、アメリカの心理学者マーティン・セリグマンが開始した心理学分野。日常生活をより充実したものにすることを重視する。
セリグマンが開始を提唱した1998年以降、メンタルヘルスやウェルビーイングに関連するさまざまな研究が展開されている。

僕は、日常生活がどう変わるのか、ということが大事だと思っています。
哲学は、非常に難解ですけれど、それを学ぶことで毎日が楽しくなるわけではないと思うんです。
そういう観点で見たとき、ポジティブ心理学は生活に対して身近で、人が幸せになることにはっきりと貢献しているなと感じます。

なんだか、怒られそうだな(笑)

—— 福岡カウンセラーにとっては、幸せになることが大事なんですね。

キャリアに挫折して、人は何のために生きるのか、人生って何の意味があるんだろうと問い直した時に、僕にとっては幸せになることが人生の意味なのかなと思ったんです。

—— 「幸せになれる壺」的なものも、ある意味では幸せに貢献していると考えられるんでしょうか。

……究極、そうだと思います。
もちろん、現実で不具合を起こしていないかどうか、周りの人に迷惑をかけていないかどうかは大事になってきますけれど。

悩みとか、苦しみがあるなら、まずはカウンセリングで話しに来て欲しいなとは思います。

—— 最後に、どんなカウンセラーになりたいと考えていますか?

カウンセリングを受けるということは凄くハードルが高いことだと思います。特に、私のような中高年の男性には、心理的なハードルが高いのではないでしょうか。
男らしさ的なものが、どうしても存在していますよね。

それと、カウンセラーの男女比で言うと、女性のカウンセラーの方が圧倒的に多いです。
多分、中高年の男性にとっては、僕みたいな人は選択肢になると思います。

根底にあるのは、過去の苦しい時間を過ごした自分自身に何かしたい、そんな思いです。

インタビュー、構成:メザニン広報室

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