お腹の人とのあーだこーだ
やさぐれ妊婦の危惧
それは妊娠期間も5ヶ月を迎えるという時だった。
やさぐれ妊婦は神妙な顔をしていた。
5ヶ月に入ればお腹はどんどん大きくなると人生の先輩(母・祖母)に聞いてマタニティー用品や腹帯を買い揃えてはいるのだけど…。
やさぐれ妊婦は旅館のバイキングを食べるだけ食べて『もう入らーん!げふー!』みたいになってきた自分のお腹をさすった。
そして…妹に心配していることを告げた。
『お腹もおっぱいもお股も破裂したらどうしよう…。』
『いや…ならんから。』
即座に否定してくれた妹はきっと優しい。
でも、人生の中でこういっちゃなんだけど太ったことがなくて、おっぱいもAAサイズじゃない?という自分の体で過ごしてきたやさぐれ妊婦はかつてないほど出てきたお腹が心配だった。
破裂したらどうしよう(しません。)
お腹の人は『だいじょうぶだよぅ!まかせて!』なんて言ってる。
うん、任せるよ…。(そうするしかない。)
お腹の人の味覚
お腹の人は私が物を食べた時によく反応しているのかお腹の人がいる部分が食べ物を食べた際はよく張ったりしている。
耳をすますと聞こえるのは…。
『からいっからいっ!』
ところころして笑っている。
お腹の人は辛いのが好きなのか、みのりんも最近はカレーや担々麺の辛いものを無性に食べたくなる時があった。
その他にもコーヒーには『にがいっにがいっ!』ってやっぱりころころしているし、酸っぱいフルーツジュースには『すっぱい!』とケタケタしている。
その代わり甘いのとしょっぱいのには無反応。
『甘いものに興味ないのかな?』
『そうなのかも?』
かつては自分達も持っていただろう胎児の感覚を外の世界で感じながらたつみのりはその不思議な感覚を2人で楽しんでいた。
そして、ある時たっつんは気付いた。
反応していたのは味覚じゃなくて…
それはたっつんがスパイスを調合して作ったえぇカレー粉でカレースープを作った時だった。
きっと辛いものだからお腹の人は喜ぶだろうなぁなんて食べていたら案の定お腹がきゅうっと張ってくる。
『からいっからいっ!って言ってる。』
『うん、でもその前に不思議な匂い~って言ってたよ。』
その後に『おいしいっ』って言ってたと隣で2杯目のカレースープを飲んでいるたっつんが教えてくれる。
そこでたっつんの手が止まった。
『…甘いにもしょっぱいにもあんまり強い匂いってないよね。』
『…ないねぇ。』
お腹の人が反応している辛いには香辛料の独特の香りがする。
苦いはコーヒーを飲んだときでコーヒーの香りに包まれていた。
そして、酸っぱいはフルーツの酸味がつーんと鼻を抜けていた。
お腹の人…味じゃなくて香りに反応してたのか!!
『妊婦さんが香りに敏感になるのも関係あるのかねぇ…。』
『もしかしたらねぇ~。経口摂取じゃないから確かに味覚使ってないもんねぇ。』
実際には分からないけど、お腹の人の感覚って私たちとよっぽど違うし、反応しているところも全然違う。
外に出てきたら一緒に答え合わせをしよう。
お腹の人はまたころころしていた。