高齢者の運転について。
交通事故は運転者に起因する割合が約95%と極めて高く、運転者のエラーをどのように防ぐかが最大の課題である。そのため事故防止が可能な自動車の開発が急がれる。2023年12月に国土交通省が18年中に発生した自動車が関係する交通事故約41万件を分析した結果、自動運転によって約9割の死傷事故を削減できると公表している。
高齢者の交通事故をみると、22年の65歳以上の事故件数は、10年前と比べると、66%にまで減少した。しかし、全体の事故件数が大きく減少したにもかかわらず、高齢ドライバーの事故の割合は、16%から24%に浮き上がった。
また75歳以上の後期高齢者による死亡事故件数は19年に401件を示したが、それでも前年と比較すると、59件減少した。これらの数値から自動ブレーキ、横滑り防止装置、車間距離制御装置、誤発進抑制装置などさまざまな事故に対する車の安全装置の導入が進んだことが分かる。
19年に免許証を自主返納した人は、98年の制度導入以降最多の60万人を数えた。しかし、その後の自主返納者数は減少傾向にあり、21年の運転免許証の返納件数は52万件で、前年より3万5千件減少した。とくに後期高齢者の自主返納者は28万5件で、前年より2万件も減った。
高齢ドライバーによる交通事故は依然として大きな課題であるにもかかわらず、自主返納は増加傾向から減少傾向に転じている。むろん、これには高齢人口が増大し、運転免許保有者数が増加したことと関連するが、高齢者の運転事故防止には、現在のところ免許返納が最も有効な手段である。
しかし、その背後にはさまざまな課題が存在する。近年は高齢世帯が増え、自動車による移動は生活を維持するにはますます必要性が増しているため、免許の返納が進まない。また運転を止めると、要介護状態になりやすい。
具体的に言うと、運転を止めた人は、運転を継続している高齢者に比べると、時間が経つにつれて、要介護状態の危険度がおよそ8倍に上昇する。また免許返納後外出が減った人は都市部で24%、過疎地では56%である。これは運転を止めると生活範囲が狭まり、活動量が減少することを示唆する。
さらに免許を返納した後の不都合は都会と田舎など地域によって大きく異なるのは言うまでもない。都市部では25%の人が不便さを覚えるのに対し、過疎地では60%以上の人が不便さを感じる。
これらの問題を解決するためには、自治体の支援や公共交通の充実など、高齢者が安心して運転を止められる環境の整備などさまざまな意見があるが、一朝一夕では解決しそうにもない。
当面、現存の車や新車には最新の安全運転装備を普及させながら、科学技術の助けを借りて、運転免許不要の安心、安全な自動運転車を1日でも早く導入するのが喫緊の問題である。
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