中東の緊張。

 2023年10月7日に始まったイスラエルとガザを中心とするイスラム教組織ハマスとの大規模な衝突から戦線が広がった。現在はパレスチナだけではなく、レバノンのヒズボラとの戦闘が激化し、またイエメンのフーシーとも交戦しており、シリア、イラン、場合によってはトルコにまで戦線が拡大する可能性もある。
 イスラエル軍は9月から本格的にレバノンのヒズボラの拠点を攻撃し、政府の発表によると、15日にも51人が死亡した。一方、ヒズボラもテルアビブ近郊に向けて弾道ミサイルを発射し、応酬を続けている。この状況は中東を戦場とする第三次世界大戦と言っても過言ではない。
 こうした状況の中、同月9月25日にわが国や米国、フランスなどは共同でイスラエルとヒズボラに対し、直ちに21日間の停戦を求める声明を発表した。同日の国際連合の緊急安全保障理事会でも各国から緊張緩和を求める声が相次いだが、イスラエルのダノン国連大使はレバノンへの攻撃の正当性を主張した。
 これまでもガザとレバノンを巡って国際連合や各国の外交努力が続いているが、現在なお、和平の見通しについては、不透明の状態である。双方の対立が根深く、短期的な解決は難しい見通しとなっている。
 断固としたイスラエルの姿勢が和平交渉を難航させている。同国は自国の安全保障を最優先に考え、ハマス、ヒズボラ、フーシーなどの敵対勢力に対して強硬な対応を続けている。とくにイランとシリアの支援を受けているヒズボラは大きな脅威で、その軍事力や影響力を削ぐために積極的な軍事行動を行っている。
 また米国の軍産複合体の動向も米国政府を通して、中東情勢に影響を与えている。軍需産業は紛争や戦争が続くことで利益を得ていることは良く知られているが、クリントン、オバマ、バイデン・ハリスの民主党政権ではその影響が強く、この点が中東での軍事行動を後押ししている。
 イスラエルはパレスチナ問題での自身の立場の擁護だけではない。米国の莫大な軍事援助の継続を維持する目的で、米国内の一部のユダヤ系団体はメディアを通じて言論を煽り、活発な対議会工作(ロビー活動)を行い、二大政党には巨額な献金を行っている。
 米国とイスラエルの関係は密接で対外軍事融資を提供しており、これによって同国の軍事費の約4分の1が賄われている。当然、軍需産業はイスラエルの軍需産業と密接に連携し、アイアンドームのような防衛システムには米国のレイセオン社の部品が使用されている。また中東海域を遊弋する米艦は同国を守るためにフーシーやイランからのミサイルを打ち落とし、直接戦闘に参加している。
 ユダヤ社会と軍産複合体の関係もあり、大統領は戦闘の中止を口にするが、米国としては戦争を停止するには複雑な事情がある。地域の歴史、宗教的対立、経済的利害、国際政治の力学などが複雑に絡み合う中東の和平は容易ではない。

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