タッパーウェア社の歴史。
同社は米国の家庭用品業界において非常に重要な位置を占めた時期があった。2024年9月19日、ロイター通信は78年の歴史を持つプラスチック製保存容器の米国のタッパーウェアブランズ社と複数の子会社が、17日に連邦破産法第11条の適用を申請したと報じた。
経営悪化の背景には4、5年前からの原材料・人件費の高騰があったが、24年6月には国内唯一の工場を閉鎖することを発表し、需要が減少し、赤字が膨らんでいた。同社は22年11月以降ら今年8月までに4回事業継続の前提に疑義があると表明した。
同社は環境に配慮した製品開発にも取り組んでおり、再利用可能な素材を使用した製品を提供していた。またコミュニティ活動にも積極的に参加し、地域社会への貢献を続けていた。
これらの取り組みは同社のブランド価値を高める一因となっていた。オンライン販売にも力を入れ、デジタルマーケティングを活用して新しい顧客層を開拓しようとしたが、競争の激化と市場の変化に対応しきれなかったことが経営悪化の一因となった。デラウェア州連邦破産裁判所に提出された破産申請書類によると、推定資産は5億~10億ドル、推定負債は10億~100億ドルとされる。
アール・タッパー(1907〜1983年)氏は1938年にプラスチック密閉容器を開発し、特許を取得した。46年にタッパーウェア社を創業し、1950年代から60年代にかけて、自宅で「タッパーウェア・パーティー」を開き、友人や隣人に製品を販売する「ホームパーティー商法」で有名になった。同社の製品は長年にわたり市場を独占した。
タッパーやタッパーウェアの名称は同社が製造するプラスチック製の容器の商品名として商標登録されているが、この登録名は一般化し、食品保存容器全体を示す名称として使われるようになっている。
同社は1963年からわが国での販売を開始し、タッパーに入れて冷蔵しておけば食品の保存ができる台所革命をもたらした。その際には米国で行っていたのと同様のホームパーティー商法がそのまま導入され、米国風の生活への憧れを演出しながら普及するという手法を取った。
同社の製品は密閉性が高く、使いやすく、二代にわたって使っている家庭もあるほど品質は確かであるが、高価な値段が欠点だった。大学卒の初任給が15000円程度の当時、直径17cmのボウル6個セットは1360円で、価格の面からも高級感を醸していた。
その後多くの類似商品が出現し、近年は100円ショップの台頭で保存容器の価格破壊が進み、需要が大きく低迷した。老舗がなくなるのは寂しいが、これも時代の流れと言える。
タッパーウェアの名は長く記憶に留まるだろう。