パレスチナ問題について。
2023年10月7日、パレスチナのイスラム組織ハマスはイスラエルに強烈な奇襲攻撃を仕掛け、1200人を殺戮し、240人を人質として拘束した。ただちにイスラエル軍は圧倒的な軍事力で反撃し、ハマスの壊滅を目標として、ジェノサイド(大量虐殺)とも言える無差別な攻撃を繰り返し、11月6日地上部隊がパレスチナ自治区ガザの市街地に入ったと宣言した。
昼夜を問わず空爆が続くガザでは、学校や病院周辺への攻撃が相次ぎ、民間人の犠牲が増えている。ガザ地区の保健当局によれば、確認されただけでも約9500人が殺され、その65%は女性と子どもである。さらに数千人の行方不明者ががれきの下敷きになっているとみられ、殺害された子どもは少なくとも3900人を数える。
天井のない牢獄と呼ばれるガザは、約200万人の人口を有するが、イスラエルによる封鎖によって、水や食料むろん、医療物資も入ってこない。住民たちは極限状態に追い込まれており、人道危機の真っただ中にある。
国際世論は停戦、人質の解放に向けて動いているが、アラブ諸国と米国との溝は深まる一方である。事態は猛スピードで動いており、中東では緊張感が極度に高まり、この戦争が拡大するかもしれないという懸念は、依然として現実味がある。
ロンドン、パリ、ベルリンなど世界各地、東京でもガザでの停戦を訴えるデモや平和運動が行われている。米国はイスラエルの建国には多大な貢献し、イスラエルは米国の長女とも揶揄される同盟国である。
その米国でもいつもながらのイスラエルの過激な軍事活動を非難する勢いが増している。ワシントンでも停戦を訴えるデモが行われ、イスラエルに肩入れするバイデン大統領を批判する声も上がった。
国際連合、中国、ロシア、スペイン、アラブ諸国などは「停戦」を要求しているが、米国や英国をはじめとする西側諸国は「休戦」を提案している。肝心要のイスラエルのネタニヤフ首相は、「停戦を求めることは、イスラエルにハマスに降伏しろと言うのと同じだ」として、どちらの提案も受け入れていない。
いずれ、解決の時が来る。国連やバイデン大統領をはじめ多くの国が言うように、平和を求める以上は二つの国家が共存し、イスラエルの隣にパレスチナ国家を樹立することが基本となる。
しかし、イスラエルとパレスチナの双方には自分は神の意志に従っているのだと信じる人がいる。これらの過激主義者たちに常識的な妥協案を受け入れるよう説得するのはほとんど不可能と言える。
それでも、今回の悲惨な衝突は根深い偏見を打破する契機となるだろうか。