バイデン氏危うし。

 民主主義の国では、大統領制度と首相制度が存在し、それぞれの権限は異なる。しかし、その違いにもかかわらず、官僚が行政を動かしており、誰が大統領になろうと、誰が首相に変わろうとも、短期間では国の基本的な方針は変わらないのが一般的で、わが国はその典型である。
 といっても、国民は若々しく、賢明で人格のあるリーダーを求める。超大国であり、世界の警察を自認する米国ではこの傾向が強く、その影響力は常に国際問題に発展し、そのリーダーシップは世界中に影響を及ぼす。
 以前から米国大統領バイデン氏(81歳)の言い間違いや記憶力が懸念されてきた。次期大統領候補として前大統領のトランプ氏(78歳)とのテレビ討論会を行ったところ、バイデン氏の年齢による弱点が大きく露呈した。
 この結果、今年11月の大統領選挙で再選を目指すバイデン氏が勝つ見込みが薄いとの見方が全米に広がった。とくに民主党内では動揺が収まる気配はなく、場合によっては候補者の変更もある。
 そこへとんでもない事件が勃発した。7月13日ペンシルベニア州バトラーで、トランプ氏が野外で演説を始めた直後に右耳に銃撃を受けた。同氏は壇上で身を伏せ、警護担当に抱えられて降壇したが、険しい表情で右耳に手を当て、降壇の際に起き上がり、拳を突き上げ、何度も「ファイト」と声を挙げ、力強さを見せた。
 テレビの中継映像では警護担当が同氏を取り囲む様子や顔右側と右耳に血がついた様子が確認できた。シークレットサービスの報道官は、容疑者と集会に参加していた1人が死亡、ほかに2人が負傷したと発表した。
 この暗殺未遂事件を受けて、バイデン陣営は当面トランプ氏への攻撃の手を緩めざるを得ない状況に追い込まれた。バイデン氏は15日トランプ氏を「標的に」するべきだという表現を用いたのは間違いだったと認めた。そして、民主党に対して討論会の不振を受けて、自分の撤退を求めるよりも、同氏の振る舞いに的を絞るべきという意図だったと釈明した。
 その一週前にバイデン氏はNBCテレビ番組で、献金者との電話会談で「トランプ大統領を標的に据える時が来た」と発言した。しかし、収まらないのは共和党で、「標的」発言をやり玉に挙げて、バイデン氏こそが暗殺未遂につながる政治的な状況を生み出したと非難している。
 しかし、バイデン氏は21年1月6日の議会襲撃事件を前提において、トランプ氏を民主主義に対する脅威だと評した自身の発言を大筋で正当化した。事件直後は批判を弱めるが、いつまでも攻撃を控えるつもりはない考えを示唆した。
 トランプ氏は15日夜、ウィスコンシン州ミルウォーキーで開幕した共和党全国大会の会場に入った。2日前の暗殺未遂事件で負傷した同氏は耳にガーゼを当てた姿で登場した。
会場からは割れんばかりの拍手喝采が沸き上がった。
 参加者は同氏が負傷直後に見せた仕草をまねて、「ファイト、ファイト、ファイト」と連呼して拳を突き上げ、息子や副大統領候補のバンス上院議員とともに会場に立ったトランプ氏は参加者の反応に感動した様子だった。これに先立ち、全国大会では同氏は2024年大統領選の同党候補に正式に指名を受けた。
 現在のアメリカは深刻な分裂状態にあり、相互に憎悪を抱き、暴力を容認する傾向がみられる。このような状況では、銃撃事件がいつでも発生する可能性があり、トランプ氏はこの状況を理解し、選挙戦のスピーチで「団結」を呼びかけた。

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