【体験レポ】2024.11.22 イベント『酒SAKEと盆栽BONSAI』福島の魅力を発信
11月22日(金)、華金の訪れに街を行き交う人々はどこか浮足立っている。
東京は世田谷区、池尻大橋にて開催されたイベントに参加してきた。19:30ごろに会場に到着したときには、すでに多くの入場者で賑わい、楽しげな空気感に高揚を覚えながら受付を済ませた。
〜吾妻山の自然と活きる「蔵元」と「盆栽作家」〜を副題に掲げた本イベントは、福島市あづま山麓で自然を活かし生かされている人々にスポットライトを当てたニュージャンルの体験イベントであった。
あづま山麓の5人の蔵元
イベントでは、5人の蔵元のトークセッションと美味しいお酒の杯売りや物販が催されていた。
まずは、カラカラに乾いた喉と身体を潤わせるため1杯目のビール探し。
〇みちのく福島路ビール/吉田博子さん(登壇者)
「福島はモモが有名でとっても美味しいんです!」と受付で教えていただいたばっかりに、桃のラガーが目に留まる。フルーティで食前酒にピッタリとのことで、ますます飲みたくなってきたのだが、人気につき惜しくも、sold outであった。まさにクラフトビールらしいレトロなデザインの小瓶が特徴的である。
すべて福島の果物だけを使用して醸造されたフルーツビールを多く取り扱う。
〇Yellow Beer Works/加藤晃司さん(登壇者)
イエローをテーマにしたPOPでカラフルなクラフトビールの缶が並ぶ。
想定よりも薄く透きとおったイエローで、グレープフルーツのジューシーさとほのかな苦みの後味が心地よい。ホップのビターな味わいもガツンと感じられ、見た目に反して力強い。
季節によって変わるフレーバーというのは、まさに自然に寄り添ったスタイルである。
福島と聞くと、ついつい飲みたくなるのが日本酒だろう。
〇金水晶 四季の蔵/斎藤湧生さん(登壇者)
福島で採れる米と水だけを使用して造られた日本酒が並ぶ。良い米と良い水がないと美味しい日本酒は生まれない。
会場では、福島の郷土料理『いかにんじん』とのペアリングがおすすめされていた。
甘じょっぱい味付けと、透きとおった日本酒の相性は抜群である。
人生初のどぶろくも味わった。
◯おららの酒BAR・醇醸蔵/太田泰さん(登壇者)
おららのどぶろく。低中高3種類のアルコール度数から好みのものを選べるところも配慮が嬉しい。
度数が低めのものは、芳醇な米の奥深い甘味に優しく包み込まれるこっくりした雰囲気だ。そして、度数が上がると更にアルコールと絡み合って夢心地になる。どぶろくならではのザラザラした舌ざわりとモコモコとした泡が、最後まで飽きずに楽しませてくれる。
ほろ酔いで火照る頬をつねりながら、タイミング良く始まったクロストークに耳を傾ける。
〇吾妻山麓醸造所/牧野修治さん(登壇者)
「葡萄はどのように栽培している?どうやってワインはできる?知らないことを知りたいと思うからワインを造っている。いろんな要素が重なり合ってワインとなる。」
牧野さんは我々に向かって笑顔で話した。
“福島の豊富な果物の良いところをそのままお届けしたい”と言う。
実際に飲んでみたシャルドネとシードルは、みずみずしい果実味が口いっぱいに広がる。加えて、わずかな野性味も感じられて、福島の果物たちの逞しさを連想した。
3世代・100年の歴史を紡ぐ盆栽作家
吾妻五葉松の自然の姿を表現する、盆栽作家がいる。
〇ぼんさいやあべ/阿部大樹さん
木によって1本1本異なる幹や枝葉・樹形を観察し、苗木を曲げたりひねったり仕立てる。思っている以上に思い切りよく、ひねる。そうすることで、何年も何十年もかけて、吾妻五葉松そのもののような美しいうねりが育つという。
イベント内でのデモンストレーションやワークショップでは、その技術には時折「おーーっ!」と歓声が上がった。
会場には至る所に盆栽が飾られており、曲づけを行うような小さなものでも6年がかりで育った苗木とのことだ。松の木を育てるには、かなりの手間暇がかかることが分かる。 会場内の一番大きいものは60年以上の代物と聞いて、生命の大先輩のパワーに思わず圧倒された。
計算されつくされた曲線と余白が完璧で、強く美しい。背景に飾られている、吾妻五葉松の実物写真と比較すると、あらゆる角度まで一致しており驚いた。自然の景色のミニチュアを見ているようだ。
正直なところ、これまで盆栽のイメージとしては、ハサミでカットして手入れして飾って楽しむもの、という程度であった。しかし、その認識は大きく覆された。
人間は自然を作ることはできないが、自然で表現することはできるのだと知った。そして、そこには自然に対する絶大なリスペクトがあるから成立するのだろう。
楽しいの先にある、開催の想いとは
当日の司会進行を務める西谷雷佐(にしやらいすけ)さんにお話を伺った。
ーどうしてお酒と盆栽を掛け合わせようと思われたのでしょうか?
西谷「あづま山麓で、綺麗なお水で美味しいお酒を造る蔵元たちがいて。そしてそこには、自生する吾妻五葉松を育て守り、表現する盆栽家もいて。どちらも吾妻山の綺麗なお水がないと成立しなくて、そんな福島・吾妻の自然の美しさや素晴らしさを人々に知ってほしいという想いです。」
ートークセッションや盆栽のデモンストレーション、ワークショップに加えて、現地のお酒やおつまみも味わえてとても盛りだくさんな内容でですね。
西谷「そうですね。実際に体験してもらう、ということを重視しています。訪れた方々の感性を刺激しながら、作り手の想いをダイレクトに感じてほしいと考えています。」
ー来場された方に届けたい想いは何でしょうか?
西谷「とにかく福島を訪れてほしい!ということです。ただ食べて飲んで騒いで楽しかったね~で終わってほしくはない。本日体験した楽しい気持ちそのままに、是非魅力がいっぱい詰まった福島に足を運んでもらい、好きになってもらうことがゴールです。このイベントがきっかけとなれば嬉しい。」
福島が待っている!
会場では、皆が口をそろえて言う。
「福島は、人がいいんです。あったかいんです。」
良い人が良い場所を作り、良い場所が良い人を迎える。人がいるからこそ、福島の魅力は増大していく。
人と自然が紡いでいく物語をとおして、福島を見てほしい。お酒も盆栽も果物も温泉も、すべて自然の魅力の延長線上にある。
自然に感謝しながら、自然を活かし生かされている人々がいる。
あづま山麓には、雄大な自然と美味しいお酒と、温かい人々がいる。