オシャレは我慢

　冬が憎い。マジで憎い。真冬の屋外はヤバい。空気が冷たい。風が冷たい。寒さのあまり、どうにかなりそうだ。露出した手指に激痛が走る。おててちぎれちゃウ゛！ 防寒のために手袋を装着すると、スマホも財布も鍵も、あらゆる小物の扱いがたちまち困難になる。コンビニでの買い物だってままならない。レジでヨイショ、ヨイショ……ぬぎぬぎ……「カードで」。やってられるか！ 後ろには「早くしろよー」と不満げな顔が並ぶ。耐え難い屈辱。冬は自由と時間と誇りを奪う。

　冬のアウターと言えばダウンジャケットだが、ダウンジャケットも憎い。小綺麗に着飾っても、ダウンジャケットのフォルムが全てを台無しにする。ツルツル、モコモコ、防水加工された芋虫かよ。エレガントの対極に位置している。だから私はダウンジャケットを着ない。代わりに、裏地にファー素材を取り入れたMA-1風のブルゾンを着る。見た目がカッコイイからだ。カッコイイは正義。それでも、ボリュームが上半身に偏るせいで、スマートさに欠ける。ラブリーさにも欠ける。可愛い服でおめかししているのに、ちょっと強そうになる。かと言って、表面がファー素材のアウターは着たくない。汚れや埃の付着が気になるからね。ちくしょう、冬が憎い。

　冬は心まで凍てつかせる。寒さが士気を下げる。外、歩きたくなァ〜い。トイレ、行きたくなァ〜い。お風呂、入りたくなァ〜い。人としての尊厳が失われてゆく。体が働かない。頭も働かない。寒い、眠い、疲れた、何もしたくない。虚ろな目で弱音を吐く。弱音なんてレベルじゃない。断末魔の叫びだ。槇原敬之が「冬がはじまるよ」なんて浮かれている。もう、充分です。結構です。お帰りください。私は春が好きなんです。希望を胸に「もうすぐ春ですね」と踊るキャンディーズ。悲しいかな、現実は「初雪にざわめく街で」のEXILE。ホントに勘弁してくれ。

　その点、西川貴教は凄い。吹雪の中でも裸にジャケット姿で歌っている。滋賀の星は、覚悟が違う。レベルが違う。応援しています。握手してください。立派な筋肉ですね。知事選には出馬するんですか。ダイスケ的にもオールオッケー！ えっ、「吹雪の映像はCG合成しただけ」？ ……そんなんどーだっていいから、冬のせいにして暖め合おう。

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