広告主ごとに基準が異なるブランドセーフティに柔軟に対応する ひとつの解決策
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
統合アカウントプロデュース局 デジタル戦略推進部
博報堂DYメディアパートナーズにおけるテレビとデジタル広告領域の戦略推進を担う組織。外部のソリューションを含めた得意先課題の解決を得意とし、アドテクノロジー全般のコンサルテーション及びその後の実装やPDCAまでを担う。その中の一つの領域としてデジタル広告におけるアドベリフィケーション領域を担う。
‐‐アドベリフィケーションに本格的に取り組まれるようになった経緯とは
「Hakuhodo DY MQM_™」の一手としてモメンタムのHYTRA DASHBOARDを活用
清水さま: 元々デジタル広告と広告の透明性は切り離せない問題でした。リストの生成や社内のルール策定はこれまでも取り組んでいましたが、2017年頃から世界的に問題が注目されるようになり、さらに強化をする方針をとりました。その流れで、同年8月に、「Hakuhodo DY MQM_™」をリリース。アドベリフィケーションのフレームワークやチーム体制を固めました。MQMとは、メディア・クオリティ・マネジメントのこと。ビューアビリティ/アドフラウド/ブランドセーフティを中心としたアドベリフィケーション領域のあらゆる課題を対応し、メディアの質を担保していく取り組みです。現在、モメンタムから提供いただいているHYTRA DASHBOARDも、ブランドセーフティの1つの対応策としてこの体系に組み込まれています。
‐‐なぜモメンタムのブラックリストなのか
増え続ける広告掲載先に対応するブラックリスト作成の難しさ
星野さま:「Hakuhodo DY MQM_™」では、各広告主の求めるブランドセーフティの基準に対応できるように、段階に分けたブランドセーフティ対応手法を用意しています。デジタル広告の買い付け方法としては、配信面の絞り込みレベルの高い順に、純広告/PMP/ホワイトリスト/ブラックリストが手法としては考えられます。しかし、ブラックリストにおいては、日々増え続ける広告掲載先に対して、検知し掲載先から除外し続けるのはどうしても難しい側面もありました。
そんな中、モメンタムからHYTRA DASHBOARDのご案内をいただきました。国内の多数のDSP/SSP/メディアと繋がっていて、大量のトラフィックを元に判定した結果として生成されているリストなので、まず、規模が大きいことに魅力を感じました。また日本企業のアドベリフィケーションベンダーとして普及しており、判定の精度においても言語対応の心配をする必要がなかったことなどが後押しとなり、導入へと至りました。
‐‐HYTRA DASHBOARDを導入してみて
規模や効果を維持しながら、ブランドセーフティを確保する
清水さま:デジタル広告は、質の高いといわれる掲載面に限定すると、単価は上がり、掲載量は限定されます。当然、様々な広告効果は単価と掲載量だけで決まるものではありませんが、デジタル広告はターゲティングをすることが一般的で、どうしても掲載先を限定しすぎると配信量が確保できないという問題もありました。一方で、ブラックリスト配信は規模を確保できるものの、ブランドセーフティの問題が残る為、どちらかを選択すれば解決するという状態でもありませんでした。
こういった課題を、モメンタムから大規模なブラックリストを提供頂けたことで、配信構造を大きく変えることなく、リスト適用という簡単な方法で解決できたことは大きいと感じています。
‐‐HYTRA DASHBOARDの使い勝手は
37,000を超える大規模リストとカテゴリ区分、プラットフォーマー毎の対応
星野さま:まず、規模としては現時点で約37,000ドメイン存在し、ブラックリストのボリュームとしては非常に多いと思っています。また日々見ている中でリスト数の増減もダッシュボードで確認できていますので、更新性のあるリストが提供されていることが実感できます。
ドメインそのもの以外に提供される情報として、そのドメインがどのカテゴリで問題と判定されているかがわかります。そのカテゴリとしては「アダルト」「著作権侵害」「悪質CGM」「ヘイトスピーチ」「アドフラウド」「ポイントサイト」の6つが現在提供されているのですが、博報堂DYグループでは、いずれも除外すべき対象としています。
一方で、各プラットフォームに設定する際の苦労もあります。例えば、プラットフォーム毎に設定できるドメイン数に上限が存在する問題。上限に収める為にどのドメインやカテゴリを優先して除外するかを考え、定期的なリスト更新のためのワークフローを構築することで、HYTRA DASHBOARDを有効利用しました。
‐‐今後の展望について
ブランドセーフティの確保とブランドスータビリティの対応
星野さま:昨今のデジタル広告業界では、ブランドセーフティのフェーズから更にひとつ先の「ブランドスータビリティ」というものが注目され始めています。ブランド毀損が起こり得る掲載面を全て除外してしまうという考え方から、ブランド適合性の高い掲載面に配信していくという考え方に、ある一部の広告主の間で変化してきているということです。これによって広告主の掲載面に対する要望もより多層化していくことが想定されます。こういった多様な課題にも対応できるように、「Hakuhodo DY MQM_™」ではグラデーションのある対応をできるように日々進めています。
また、ブランドセーフティにおける不適切な掲載面の排除は、本来競争領域ではなく業界全体で取り組むべき内容だと考えています。モメンタムのような第三者への期待は、専門ベンダーとしての知見を業界の標準レベルとして浸透させていくことだと考えます。業界全体の標準レベルが上がっていくことで、デジタル広告への信頼も高まっていくと思っています。
(左からモメンタム株式会社 恩田、株式会社博報堂DYメディアパートナーズ 星野さま、清水さま)