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月冴ゆ


冬月をわれのためにと撮るひとよ額を月に照らされながら

もぎたての柚子を黒革鞄よりとりいだしわが掌に置きくれぬ

   三輪山の背後より不可思議の月立てりはじめに月と呼びしひとはや 
   /山中智恵子
掌のなかに生れたる月の香をかげば月と名宣りしこゑに呼ばるる


あめつちの呼びあふやうに名を呼ばむきみの奥処の静寂を恋ひて


地続きのわれらのあはひさめざめと水はながれて身にしみとほる


大地より生まれしわれら香る実となりて今宵の月いつくしき


手をあはせきみのことのみ祈りたり冴え冴えと月天心にあり



(初出「短歌研究」2016年2月号特集「相聞・如月によせて」)


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3首目:生れたる=あれたる 名宣りし=なのりし
5首目:あはひ=間(あわい)
   





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