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水瓶座満月に旅立ったエルザ

えるちゃんと出会ったのは、古民家カフェでバイトしている時だった。

開け放たれた窓から見えたガリガリのシャム猫。

あんまりにも痩せこけていて、いまにも死にそうだった。
尻尾がほぼ直角に折れ曲がっていて。
(この角度、全然可愛くないけど…本当は可愛いのよ!)

私は家に帰ってからも、この子のことが気になって仕方なかった。
夫に話すと連れて来れば良かったのに、と言ったので、
翌日会ったら連れて帰ろう、と思った。

でも、それは間違いだった。
野良猫だから、治療も受けられず、いつもお腹をすかせていたけど、
野良猫のままだったら、
彼女はもっと自由だった…。

彼女のことが、頭から離れず。
翌日またカフェバイトに行くと、
彼女に会った。
カフェのオーナーには
「やめといたほうが、いいと思うよ」
と言われたけれど、
昨夜、もしまた会ったら連れて帰ると決めていたので、私は友人の協力を得て、この子を捕まえて家に連れて帰った。

先住猫のゴン太くんとマリーちゃんもいるので、病気持ちのこの子は隔離することに。

これから寒い冬がやってくる…せめて最後は暖かい場所で、優しくされて、ごはんも食べたいだけ、食べられて…私は自分の家をこの子のホスピスにしてあげたいと、思ったのだ。
でも。
そんなの、私のエゴでしかなかったのかな…と今は思う。
お金に余裕があるわけでもないし、1日中彼女にかまってあげられるわけでもなかった。

彼女を連れて帰ってきた日。
2015年11月1日。
1のゾロ目。
神様の数字。
名前、どうしようかな…と思いながら眠りについた。
その夢現で、「エルザ」という文字がサードアイのスクリーンに見えた。
「el」は「神の」という意味。
神様の日にやって来たこの子の名前はエルザになった。

口の中に腫瘍が出来ているのか? 
そこから、涎のような膿のようなものをいつも垂らしているけれど、綺麗に拭き取ってやると、なかなかの美人さんだった。
動物病院に連れて行くと、
「この子は長くないよ」
と言われた。

微かな声で鳴くえるちゃんの青い目は、マリーちゃんの水色よりももっと濃いブルー。

↑「スキ」を押すと飛び出す写真、「ちちんぷいぷい」は、えるちゃんだったの。

えるちゃんは頑張った。
直ぐに死んじゃうと思ったけど、
うちに来て10ヶ月、生きていた。

最後のほうは、夜、リードをつけてお散歩した。
よろよろしていたけど、楽しみだったみたい😿

もう死んじゃいそうだな、と思った日が水瓶座満月だった。
トイレまでの50センチの距離も歩けなくなっていた…。

私達は、えるちゃんを庭で看取ることにしたのだった。
満月の下、この音楽を聴きながら、えるちゃんと一緒にいた。

えるちゃんは、よろよろなのに、どこかへ行こうとしていた。
猫の本能なのだろう。
独り密かに逝こうとしていたのだ。

真夏の忙しい時で、夫も私も体力的にとてもしんどかったのだけれど、この子を見送りたかった。
でもなかなか逝かない。
真夜中を過ぎても。
私達は仕事があったから、
えるちゃんを部屋に戻して、柔らかな寝床に横たえ、
「ごめんね。おかあしゃんは少し寝ないといけないの。また、すぐに来るからね」
と言って、仮眠を取った。

だけど、私達の眠っている間に、えるちゃんは逝ってしまった。
朝起きて、彼女の部屋に行くと、既に体は固くなっていた…。

えるちゃんは、庭の金木犀の木の下に眠っている。猫たちが大好きなレモングラスと一緒に。

胸がえぐられたように痛かった…。
たったの10ヶ月一緒にいただけのエルザが死んでしまって、こんなに悲しいのか、と驚いた。
本当にね、心臓が痛かったよ。

きっとこの記事を読んだら、
私のことを批判する方もいらっしゃるだろうと思う。

私も何故、病気の猫なんて拾ってしまったのか、今もわからない。
「連れて帰らなければ」
と思ったのだ。

でも結局、部屋に閉じ込めることになってしまった。
最後まで、自由なほうが、良かったかも知れない。
どちらが良かったのかは、えるちゃんにしかわからない。

2016年、8/19。
えるちゃんが旅立ってから、今日で4年が経った。