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【エッセイ】#46 あなたは、HとB、どっちが好き?

 拙書「小説、物語、ストーリーテリングの書き方」でも言及をしたのだが、あなたはどちらの方が好きなのだろうか?

 正直、まったく好みの問題であるし、これまでの読書歴やエンターテイメント受信歴、更にはあなたの性格にもよるのだろうと思う。

 私も作品ごとにこれらを使い分けてはいるが、正直、どちらが「好き」かと問われれば、悩んでしまう。
 書いている作品の流れや雰囲気、キャラクターの動きに合わせて、決めているのでなんとも言えない。

 作家としては「どちらの属性の方が得意か」を、しっかり意識表明をしていくことが本当は必要なのだろうなぁとも思うが。

 あ、拙書はこちらからどうぞ。

 今回の問いはいったい何かというと、
「小説はハッピーエンド(Happy)、バッドエンド(Bad)、どっちが好き?」
 と、いうもの。

 これは昔から定期的に統計調査もされていて、一定の答えのようなものは出ている。

「ハッピーエンド好き:バットエンド好き=6:4」

 以上の割合らしい。
 調査会社をちょっと変えると、7:3なんていうものもある。

 以外にもバッドエンド好きの少ないことに、性格のひん曲がった私は疑問を感じる。

「やっぱ、みんなハッピーエンドが好きなの?
 バッドエンドや、モヤっとする終わり方、嫌いなの?」
 と。

 私はどちらかといえば、バッドエンドの方が若干好きだ。
 結論まで描かず、「読者に考えさせる終わり方」の作品の方が、読後の余韻をしっかりと味わい、作品に対して思索を巡らせることができるからだ。

 なんとも拗らせた性格であることは承知しているが、自らの作品に同じテイストを用い続けるのは、自らの成長を止めてしまう恐れもある。
 そのため、ハッピーエンドを意識した作品も多く作っている。

 ああ。もちろん無理に作っているわけではないですよ。
 私もハッピーエンド、スキですよ。

 この質問を妻に投げてみた。
 何で聞いたかって?
 
 私が勧めたドラマを見て、私に向かい、
「なんて作品を勧めてくれたんだ!
 時間を返せ! 私のこのモヤモヤをどうしてくれる!」
 と、怒鳴られたからだ。

 妻におススメしたのは、この作品。

 アマゾンプライムでドラマ版が見れるので、それをおススメした。

 湊かなえさんの名作で、一人の人間の生き方や過去が多くの人の生き方を変えてしまうというもの。
(ネタバレをしないためにもオブラートに包んでいます)

 私としては「被害者が、無自覚の加害者になる」という現代を象徴するテーマを取り上げているため、大好きなのだが。
 どうやらお気に召さなかったらしい。

 だからこそ、
「やっぱ、ハッピーエンドが好きなの?
 バッドエンドや、モヤっとする終わり方、嫌いなの?」
 と、聞いてみたのだ。

 一番近くにいる消費者、視聴者、読者に率直な意見を聞くというのは、最も大切なマーケティングである。
 うちのじいちゃんも口を酸っぱく、いつも言っていた。

 妻は典型的で、平均的な日本人だ。

 向上心というものはあまりなく、休日はゆっくりと寝ている。
 仕事の愚痴が多く、だからといって、改善に向けた行動はしない。
 休みの日も起きたかと思えば、スマホゲームに時間を溶かし、オリンピックや日本代表の試合があれば、ミーハー的に熱狂し、夜遅くまで起きている。
 サッカーも、バレーも、バスケも、ラグビーも、野球でも。
 ルールなんて何一つわかっていないのに、「流行だから」というだけでそれらに没頭するのだ。

 さらにはTVのワイドショーで取り上げられるゴシップに興奮し、私に向かって持論を展開する。
 私が聞いてもいないことすら、どうやら目に入っていないらしい。

 そんな妻は、私にとって「日本人の多くはこのような反応をする」という、サンプルの一つになっている。これは彼女にはバレてはいけない極秘事項だが。

 そんな妻の今回の質問に対する回答はこうだ。
 
「せっかく時間を使って視ているのに、バッドエンドって無いよね?
 途中のモヤモヤも、最後にキモチよくさっぱりさせてくれると思って視ているのに、バッドエンドってあり得なくない?
 時間返せって感じ!!」

 ……。

 これはなんとも、平均的な日本人の貴重な意見だ。
 多くの視聴者や読者が「ハッピーエンド」を求めるのはここにあるのだろう。

 言ってみれば、バッドエンドや含蓄が多い終わり方をする作品に舌鼓を打つのは、読書中毒かエンタメマニアである可能性が高いだろう。
 多くの読者、視聴者にとっては、やはり「ハッピーエンド」が好みであるということが、私の家族内という最小単位での結論に至った。

 この一つの回答は、一般大衆、特に日本人ににとっては、ハッピーエンドが作品の上で重要な要素になるということを表している。
 それは「勧善懲悪」「終わりよければすべてよし」などの言葉が染みついている国民性からも、肚落ちできる。

 どうやら、
「ハッピーエンド好き:バットエンド好き=6(7):4(3)」というのは、あながち間違いではないのかもしれない。

 次回作は、ハッピーエンドで終えてみようかなぁ……。

 再度、問います。
 あなたは、HとB、どちらが好きですか?

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