会社の雰囲気を変えるために僕がこだわり続けている3つの事
「どうやって会社の雰囲気を変えているの?」
「どうしたらそんなにみんな前向きになってくれるの?」
最近Twitterを見て聞かれることが多くなったので、自分が1年間で何をしてきたのか書いてみたいと思います。先に誤解がないように言っておきますが、僕の実績も一部ありますが、大半は「変わろう」と努力してくれた社員のみんなのお陰です。
1年前の会社の雰囲気はあまり良くなかった
僕が事業承継で帰ってきたのはちょうど1年前の2020年の4月。帰ってきた当初は会社の雰囲気は決して良いとは言えないものでした。
・出勤する人の顔が暗い
・朝と帰りの挨拶が暗い
・「ありがとう」「お疲れさま」という言葉がない
・何かあっても謝らない(「ああ、はい」というリアクション)
・挨拶をしても返事をしない
・話しかけても顔すら見ない
「会社の雰囲気なんてそんなもんだ」
と言われればそれまでだと思いますが、個人的にはこの状況にものすごく違和感を覚えていました。まずそもそも、弊社は30人ほどの中小企業です。大企業と違って全員顔も名前もわかっているのにどこかみんな距離感があり、まるで個人事業主の集まりかのような印象がありました。そして、雰囲気の悪い会社からは良いモノは生まれないという強い想いもあり、この雰囲気是正するのが喫緊の課題と感じました。
”雰囲気”を変える特効薬はない
さて、雰囲気が悪いと書きましたが、これは決して社員のみんなに全面的に非があったことだとは思っていません。”雰囲気”というのは極めて多面的かつ複合的な要素で構成されるもので特効薬はないものです。M&A等で経営者が変わり、人材のテコ入れ等があればガラッと変わるのかもしれませんが、継続している通常の組織においては一朝一夕でそうそう変えられるものではないと思っています。
では、そんな変えるのが難しいと言われる雰囲気を自分はどうやってテコ入れをしたかというと、以下3点に集約されると思います。
①コミュニケーションの率先垂範
②”褒める”の言語化と見える化
③当事者意識の浸透
当初は、社員のみんなに「会社の雰囲気どう?」と聞いて回るとみんな口を揃えて「良くない」と言い、少人数で集まれば愚痴をこぼすことも多かったです。しかし、それは一定の期待値の裏返しだと僕は感じていました。本当に会社に何も期待していなかったら何の感情も湧いてこないはずです。みんな何かしら、「こうなったらいいのにな」というビジョンは持っているんじゃないかと思い、それなら後は、社員のみんなのことを信じてそれを実現する方法を示すだけじゃないか、と思ってこの3つを実践しました。
①コミュニケーションの率先垂範
いくら社長の息子でアトツギだとは言っても、口ばかりで何もしない人には誰もついていきたいなんて思えません。なのでまずは自分から率先して全員と丁寧にコミュニケーションをとることを心がけました。
・全員と笑顔で元気よく挨拶する
・すれ違ったら一言必ず話す
・帰りには必ず”お疲れ様”を言う
・週末には「1週間お疲れ様でした」
・出張に行く人には「気を付けてね!」
・残業してる人には「遅くまでありがとう」
こうして並べてみると大したことはないのですが、これを抜け漏れなく必ず実施する、というのは非常に効果が高かったように感じます。人は誰しも好意の返報性を持っています。よほど歪んだ人でない限りは、こうした好意に対して悪い気はしないですし、応えよう応じようと感じるものです。
また、逆に自分に対してそういう言葉がないときは、都度必ず「こういうときは一言あったら嬉しいな」と伝えるようにしてました。一度や二度で諦めず、十回でも二十回でも言い続けました。「言わなくてもわかるだろう」「言わなくても伝わるだろう」を0にするのが肝要と思っています。
②”褒める”の言語化と見える化
感情的に貶したり怒ったりするというのがもう時代遅れなマネジメントとは言えない代物であるのは周知の事実ですが、他方で小規模の中小企業というのは組織内の変動が小さく当然事が多いため、特に日々の感動が薄くなりがちです。弊社の場合はビジネスモデルがBtoBということもあり、お客様から怒られることは多くても褒められることは殆どありません。「どうせうちの技術なんて」「うちの製品なんて」と卑下しがちです。
そこで僕がやったのは、ポジティブな事を言語化・見える化することです。みんなが日々当然のようにやっている事が、いかにすごい事なのか、自分達の仕事でどんな人に喜んでもらえているのか。どれだけ些細な事であっても新たに挑戦したことがいかに素晴らしい事なのか。それを一つ一つ丁寧に汲みとり、本人に伝えたり掲示板に貼ったりということを繰り返しました。
ここで大切だったのは、見返りを求めていたこと、です。
僕に対してじゃなくていいので、自分が褒められたら他の人も褒めてあげよう、その循環を作って会社の雰囲気を良くしていこう、ということを語り続けました。
③当事者意識の浸透
最後のこれが最もハードルが高いかもしれませんが、全員が雰囲気の一端を担っていることを実感してもらうことに取り組みました。結局のところは一人一人が強いオーナーシップを持たなければ組織は変わりません。独力での働きかけはインスタントで継続性がないため限界があります。
弊社で実践した方法としては2つあって、まず1つは日々の語り掛けです。
「何かを変えたいと思うなら、まず自分が変わろう。」
「愚痴を言う前に自分のベストは尽くした?挑戦した?」
事あるごとにマインドセットにかかる語り掛けを繰り返しました。この辺は話長いとか耳タコとか言われるくらいでちょうどいいと思っています。
もう1つは全社会議を開催した事です。なぜ雰囲気が良くないのか、どうすれば雰囲気が良くなるのか、を自分達で考えてもらう時間(全社会議)を作りました。そして、少し過激ですが、会社を良くしたいという想いに共感できない人は会議に参加しなくていいという線引きをしました(結局は退席者0でした)。
会議の詳細は割愛しますが、最初はいつも通り白けた人に引っ張られている感じでしたが、会議を進める中で一人また一人と当事者意識が芽生え、会議後数カ月経った今はすっかり当事者意識を持った人が多数になってきました。これまでずっと良くしたいと想いはあったけれどそれを実行できなかった、そんなみんなの想いを信じ続けたからこそ実現できた環境だと思っています。
おわりに
色々書きましたが、結局のところは会社の雰囲気を変えるための最適解となる方程式は存在せず、個別具体的な事情や各企業のフェーズに合わせて実効性が高いところを積み上げていくしかないと思います。また、この辺は自分が”アトツギ”というユニークポジションだからこそ実施できたところ、というのは忘れてはいけないと思っています。
なお、こうして書式化してみると形式的でテクニカルな感じになりますが、そもそもの出発点としては”社員のみんなが日々頑張ってくれることに感謝し、みんなのことを好きになること”というのがあると思います。そのみんなが笑顔で幸せに働き豊かな人生を送るにはどうすればいいのか、常にその考えを追求し続けるのが経営者のミッションだと思っています。