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ハヤチネンダ|終わる人生、終わらない時間 [遠野]
2024年2月19日(月)〜22日(木)
>お申込み|Googleフォーム … 受付終了(1/21)
>告知ツイート(12/20〜)
*申込みフォームは閉じますが、もし「参加したい!」人がいたら、なんらかの形で西村佳哲にご連絡ください(1/22)
私は「死ぬ前に、死について考えすぎない方がいい」と思うタイプで、「生きた証を残したい」といった気持ちもありません。が、生きているあいだは日々が充実しているといいし、一個人の生涯を越えてつづく試みの継続にも想いがあります。
ランドスケープデザイナーの田瀬理夫さんや友人たちが、遠野のクイーンズメドウ・カントリーハウスで温めてきた「ハヤチネンダ」という墓苑事業が、来年から本格化します。
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いわゆる「一区画◯◯万円・ペット可」といったお墓商品とすこし違う。理事の一人の宮田生美さんは、「大きな命の物語をみんなで紡ぎ直せる場をつくりたい」と言います。
言葉としてはわかる。けど私にはややわかりにくいところがあります。彼らの試行錯誤を傍で見てきて、「うまく伝わるといいな」と思っている。
わかりにくいものを、わかりやすく伝えようとすると、平易な表現や通りのいい言葉が並びがちです。すると抽象的になる。コンセプチュアルになるというか。
もし〝わかりにくい〟のなら(「自分には」ですが)、言葉よりむしろ体験を通じて、わかりにくいまま掴んだり納得できるといいんじゃないか。私はよりわかりたい。
そこで、現地に滞在しながら、集まっためいめいが「ハヤチネンダ」を通じて自分の、自分たちの〝死〟の前後左右を考え合える4日間をつくってみようと思います。心に!が浮かんだ人、どうぞお越しください。
ハヤチネンダ|終わる人生、終わらない時間
2024年2月19日(月)〜22日(木)
会場:クイーンズメドウ・カントリーハウス(遠野)
定員:6名
ゲスト:宮田生美、今井航大朗
ビデオゲスト:土居 浩(ものつくり大学)、向谷地生良(べてるの家)
参加費:83,000円
宿泊費:60,000円
>お申込み|Googleフォーム
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もう少し書きます。
「お墓はいらない」と考える人が増えていると思います。私自身は永代供養もまったくピンとこないし、前方後円墳型共同墓地のニュースにも脱力している。樹木葬も土に還るわけじゃないし、散骨も残った人の負担になるかもしれないし、なにより葬送ビジネスに扱われたくない。
「そのまま塵になって消えたい」と私は思うけど、こう書きながら、なんかもう本当に自分のことしか考えていないな。煩わしくないだけで、力が湧いてくるわけでもないし、喜びもやすらぎもないなって思う。
数日前に届いた読み物に、鷲田清一さんの「折々のことば」が紹介されていました。
英語の自動詞に受動態はないが、日本語には「死ぬ」と言う自動詞にも「死なれる」と言う受動態がある。死ぬ人でなく、死なれる人に思いを重ねるのだ。
自分の命が自分だけのものではないように、死も自分だけのものじゃない。そう思っているのに、勝手に「塵になって消えたい」とか考えてしまうのはどういうことなんでしょう。
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社会的なつながりは大切。関係の線の数が、私たちをこの世界に引き留めてくれていると思う。
けど、人には自然とのつながりもある。近所の庭先のキンモクセイを毎年楽しんでいたり。空に浮かぶ雲の色に見入ってしまうときがあったり。たとえば川遊びをしてきた人は「あそこに鰻がいる」とか、いま別の場所を流れている時間を想像することができて、それはなんというか不思議な安心感を与えてくれる。
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人と人以外のこうしたつながりにも、私たちの〝生〟を支える力があると思う。
以前友人がイギリスの公園のベンチの話を聞かせてくれました。木製の背板に、たとえば「The view from this seat was enjoyed by ◯◯◯…」と印字されたプレートが付いている。「この眺めを愛した◯◯◯さんの思い出に」みたいな。自治体が管理する公園や緑地に、市民がベンチを寄贈できる制度です。
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きわめて個人的なものをパブリックな居所に転換する仕組みで、なんて素晴らしいんだと思う。こういう偲び方や、価値のわかち方もあるんだな。
死ぬとなぜ「お墓」という形にばかりとらわれてしまうんだろう。そもそもいま一般的な四角い墓石は、昭和のヒット商品の一つにすぎない気がします。
「お墓はいらない」と思うくちですが、それが自分だけのためのものでないことはわかっている。
祖母の墓が多磨霊園にあり、隣は日本推理作家協会のどなたかのお墓で、その一角に江戸川乱歩のお墓が同居していた。石づくりの名刺入れがあり、誰かの来訪に備えていました。お墓には、故人といま生きている人をつなぐ役割があるんだ…と後から理解するようにもなった。
でもやはりなによりも大切なのは、いま生きている時間や関係の充実と、そしてやすらぎじゃないかな。
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北海道の浦河で、精神障害を持つ方々との暮しと仕事の現場「べてるの家」を営んできた向谷地生良さんが、以前こんな話を聞かせてくれました。(以下うろ覚え)
「べてるの家」の日々を通じて、自分たちのまわりにはコミュニティが育っています。その中で生きて、いずれ死んでゆくことに、いまなんの不安もない。
記録には残っていないのだけど、この言葉が忘れられない。当日会場後方には、東京の「べてるの家」関係者や彼の家族が聞きに来ていました。プログラムを終えた向谷地さんがその人たちの中へ戻っていったときの空気感や、誰かの赤ちゃんに話しかけていた後ろ姿をときどき思い出す。
この社会について、よく貧富の二極化が語られます。私が感じている二極化はお金の多寡とすこし違っていて、「働いて得たお金で人生を豊かにする」人たちと「働く時間や関係の中で直接人生を豊かにしてゆく」人たちの二極化です。
この構造は〝死〟の周辺にもそのまま転写されていて、向谷地さんの姿は、後者を照らしてくる感じがするのです。
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長くなりました。今回の滞在にむけて、まず1月に、土居さんや向谷地さんとインタビューを交わします。
ものつくり大学の土居浩さんは、お墓や埋葬の近現代史を研究されてきた人。あらためて〝お墓の昨日・今日・明日〟の話を聞いてみたい。他の国々のことも。当たり前のように大手を振っている今の常識は、別に当たり前でもなんでもないことがよくあるなと思う。
土居さんや向谷地さんのインタビューは現地で共有して、あと「ハヤチネンダ」の4人の理事からも2名。
田瀬さんと長く働いてきた、5×緑・代表でもある宮田生美さんと、クイーンズメドウを運営する農業法人ノースの若い代表・今井航大朗さんにも一緒に滞在していただいて、はじまる「ハヤチネンダ」のこと。そしてクイーンズメドウ、荒川高原牧場や遠野のことも、十分に紹介してほしい。一緒に神楽も見たい。
体験と語らいを通じ、私を含むそれぞれが、自分の、自分たちの、死の前後左右を考え合える4日間をつくってみる。考えすぎたくはないが、考えられるようになりたいと思っています。関心のある方、ご一緒しましょう。
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参考:
ハヤチネンダ https://hayachinenda.org
*墓苑事業申請前に公開を始めたサイトなので、事業内容は意図的にフワッとしています。来年以降、より明確な情報発信が始まる模様