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2022年8月のふりかえり|自慢したい友人や仲間の多い人生はいいよね

(結局、最初のスタイルに戻った気がする)今月はプール通いが習慣化した感じで、それが幸せです。

7月◯日

若頭のような友人を通じ、さらに若い(30代後半くらい?)の三人組から「会社のこれからをマジで話し合いたい」「自分たちだけだと難しい」「ファシリテーションをお願い出来ませんか」という相談をもらった。中心人物の才覚に惚れていた背景もあり、with pleasure で一肌ぬいだ。

オリセンの一室で2日間、朝から晩まで語らいを重ねた。私は重ねられるようにしただけで、実際に重ねたのはその三人だから、おつかれさまです。最後に「不可逆になった。この日以前にはみんな戻れない」と楽しげだったので、そりゃよかったねという気持ち。話し合いはその後もつづいている様子。

「ここからどうしよう」「ステージを変えたい」という若い友人の会社や組織から、語り合いの場づくりの相談を受けることがある。年に2〜3本。来月もあるな。みなさん稼いでいるのでフィーもちゃんとしている。経営の相談はない(みんなわかってる)。「ちゃんと話し合いたい」「けど難しい」ことは、そりゃあるでしょうね。

最初は「なんかやろう」「面白い面白い」と集まったバラバラの個人が、自分らと別に「会社」という人格の存在を感じ始め、その成長に関心を移してゆく姿を度々目にしている。
私はそういう人生にならなかった。法人格の会社にしているが、基本的には作家のような感じで、一人、あるいは妻と、そのときどきのつながりの中で働くのが性分に合っているように思う。

でも会社を育てている若い連中には、羨ましさもある。これはなんだろうな。


8月◯日

夏から秋に開催する三つの「インタビューのワークショップ」の一つが始まった。まずはオンライン編。週2全7回の約一ヶ月。参加者が全員男性というのは初めてで妙に緊張する。


8月◯日

10月にゲストで呼んでもらっている墨田区の小さなアートプロジェクトの現場で、スタッフを対象にしたワークをやり簡単なディスカションを交わした。試食会のような感じ。

押上界隈を訪れるのは本当に久しぶり。大学生の頃は、土曜の夜になると岸野雄一の部屋にみんなで集まり、持ち寄った新譜を聴いてすごした。私は杉並(東京の西側)の生まれ育ちだから、夜のコンビニにパジャマ姿で来る墨田の方々に驚いた。いまも同じかな。

東向島珈琲店に寄って店主の井奈波さんとお話を交わす。岸野の名前を出すと「お知り合いですか!」となんだか私の株が上がる印象があり、彼が地域で徳を積んでいる気配を感じる。
ちょうど「ニューQ・Issue 03」を取り寄せて、岸野の文章を読んでいたところ。ウェブでも公開されている。名付けようのない戦いの話。

道を歩いている人、自転車に乗っている人の姿がやたら多く、路上が人間の空間になっている雰囲気が愉快だった。パブリックスペースの日常感覚が西側と違う。ヨシカミのカウンターでオムライスを食べ、満たされて帰る。


8月◯日

牟田都子さんの本『文にあたる』の展示を見に荻窪・Titleへ。本も買って帰る。「です、ます」調の丁寧な書き口だが奥にあるマグマの熱量がすごい。昨年、世田谷区/生活工房「どう?就活」に来て聞かせてくれた、「この仕事(校正)がいつまでもつづくとは思っていない」というキッパリした言葉もさもありなんと思う。仮に校正の仕事を重ねても、かなり遠くまで行ってしまいそうなエネルギーを感じる。

自分が書きたいことをただ書くなら、日記帳でも裏紙でもなんにでも書けばいいわけで、人に見せる必要もない。でも書こうとしていることが自分だけのことと思えなかったり、より多くの人と分かち合える予感がしたら、まあ書かざるを得ない。

『文にあたる』は、校正という職能領域に限らず、無数の「みんな」を代表して書かれている感覚があった。読みながら、その中に自分が含まれていると思う。大きな空間がある。牟田さん持ち前の真摯さもバシバシ伝わってきて、こうなると本はそのまま人のようだ。人が棚に並んでいる。

『文にあたる』 honto.jpe-honAmazon


8月◯日

三ヶ月前に行ってよかったアーティゾン美術館に、次の展示を見に行く。感じたことを日記に書いた。>https://livingworld.net/nish/dialy/20681/

その流れで翌々日、武蔵野市立吉祥寺美術館へ江上茂雄さんの図録を買いに。感じたことを同じく日記に書いた。>https://livingworld.net/nish/dialy/20695/

そうした中、ふと「藝大の絵画科っていまどんなことを教えているのかな?」と思いサイトを見に行って、「中村政人/壁画」という記載に驚く。「外!」っていうこと?

同じ流れの中、吉祥寺のギャラリーに中野民夫さんの絵と歌の展示を見に行った。本人から「歌よりも評判がいい(笑)」と聞いていたが、本当にいい。

東工大で中野さんと時間をすごしている学生たちは、屈託なく素直に生きている大人の姿をかぶりつきで見ることが出来て、人生に対する安心感が多少高くなっているんじゃないか。「こんなふうでいいんだ」って。

にしても、アマチュアの世界は豊かだなあ。野原のよう。


8月◯日

某社(大手)の合宿の仕事で淡路島へ。洲本の「ワーケーションハブ紺屋町」を訪ねたが、行ってよかった本当によかったとその後もくり返し思うのは、富田祐介さんに再会してその現在に触れたことだ。

私は2011から14年頃、「淡路島はたらくカタチ研究島」という地域事業に講師の一人として参画し、二泊三日の滞在プログラムで年に何度か淡路に通っていた。「研究島」の全容は本にまとめられている。

富田さんはそのスタッフの一人で、当時は「研究島の事業が終わったら、そのあとどうしよう」という感じだった。困っているというより考えている感じで、「企業研修の受け入れ事業をやってみたい」と話していた日もあり、その後どうしているかな?と思ってはいたものの、神山町にいた8年間はそう遠くないのに足を運ぶタイミングがなく、今回は久しぶりの再会だった。
某社の担当者さんが「ここでしましょう!」と見つけてくれた合宿の拠点候補が、いま富田さんが切り盛りしている「ワーケーションハブ紺屋町」だった。

富田さんは結果的に研修事業でなく、企画やディレクションの仕事を育てていた。その延長上で、島と外部の協働拠点であり、コワーキングスペースでもあり、週末はカフェとして繁盛している(らしい)場所を、パートナーの藤田さんや、次第に集まってきた仲間数名と営んでいて、とても充実している様子だった。こういうの本当に嬉しい!

約10年前の滞在プログラムでは、参加者だけでなく地元のスタッフにも一緒に混ざってもらい、これからの仕事や暮らしについてフラットに語り合った。富田さんもその中にいた。私はファシリテーションを担いながら、美味しいご飯を食べ、畳の上でゴロゴロしていたのだけど、彼にはその時間を通じて温まったものもあったようで現在にどうつながっているか少し聞かせてくれた。

それを書くと自慢話になってしまいそうなので書かないが、私は富田さんや藤田さんを自慢したい。ミカン農家になった藤澤さんや、建築家として活躍する平松さん、いつもみんなのために動き回ってきたやまぐちさんのことも。
お弁当や食事を出してくれるとき富田さんは、淡路の生産者や農家さんなど島の仲間を自慢したいと語っていたが、自慢したい友人や仲間の多い人生はいいよね。最高だと思う。

ワーケーションハブ紺屋町 https://workation.life/hub/


8月◯日

突如「中西レモン」と「すずめのティアーズ」というすごい音楽家が人生のタイムラインに現れ、うろたえている。日本の民謡や音頭を、まったくいま現在のものとして唄い上げていて驚いた。どうしよう。


8月◯日

上旬に始まった「インタビューのワークショップ」が全7回を終えた。もうすっかり仲良し(男6人)。

中に、11年前の「インタビューのワークショップ」(女神山)にも来ていた人がいた。以前の参加者があらためて申し込んで来ることはままあるので驚きはしないけれど、彼については「どんな変化があったかな」と思いながらこの一ヶ月間を過ごした。とくに正面からは訊かなかったが。

とりあえず互いに10年間生き長らえたわけだ。これは当たり前のようで、決して当たり前でないと思う。私はこの間に大切な友人を何人か亡くしている。年齢が年齢とかそういう話でなく。いい人の方が早く死んでしまう気がするのはなんだろう。

「インタビューのワークショップ」を経て、年に一度PCA(person-centered approach)の学校のような、出入り自由な1〜2週間の滞在プログラムを、心理学の領域の外でやってみたい気持ちが浮かんだ。自分がもっと学びたい。イベントを主催する、ないし本を書くのはその効果的な方法だと思う。


8月◯日

上野/東京都美術館の「とびらプロジェクト」へ、担当外の講座を聴講しにゆく。11年かかわって初体験。
多摩美の上野毛校に教えに行っていたときも他の先生方の授業の聴講、あのときは中村寛さん(文化人類学者)の講義がよかった。社会の構造的な理不尽さに学生たちの前で本気で怒っていて、でも学生たちには温かくて。複数の子が「上野毛の授業でいちばん面白い」と教えてくれたんだ。

この日に都美で聴講したのは「対話型鑑賞(VTS)」の実践講座で、講師は三ツ木紀英さん。対話型鑑賞の概念や意味合いはわかっているつもりだが、ファシリテーションの現場に直接居合わせたことがなく、ちょっと具合悪いなと思っていた。彼女のデモンストレーションを拝見。ディティールが豊かで、短時間ながら勉強になった。なるほどあんなふうに動くのか。

同日午後、某社/淡路合宿のふりかえりをオンラインで2時間ほど。かみ合わせの悪い部分があるが、相手のせいにせず自分を変えてゆきたい。


ふりかえると8月は「インタビューのワークショップ」が世界の約半分で、その合間にサウンドバムの写真を整理したり、たまっていた経理の仕事、家の片付けやDIY、来月の箱根山学校や、12月の「どう?就活」、1月の「BOOK, TRAIL」の企画調整をしているうちに過ぎていった。夏も過ぎたようで、外はもう虫の音。どの季節も好きだ。