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大切な人と線維筋痛症
私が線維筋痛症を知ったきっかけは、大切な人から線維筋痛症だと聞かされた時でした。
正直初めて聞く病名でした。
本人は「病気の発症原因がわからない事」「身体がすごく痛くなる事」「痛みはインフルエンザで節々が痛いような感じである事」「時にはチクチクと何かに刺されるような痛みがある事」と事実以外は多くを語りませんでした。
強い責任感を持って真摯に仕事に取り組む事。
仕事が忙しくても常に家庭を大切にする事。
常に明るく周囲を巻き込んで笑顔の輪を作れる事。
周りの人たちの様子を見て、困り事を抱えた人がいれば誰よりも早く気付きその人の心に寄り添える事。
趣味の事はいつも全力で楽しむ事。
魅力的な面を多く持つその人は周囲からの信頼も厚く人気者でした。
しかし線維筋痛症と常に戦っていた。
笑顔の裏で少しでも痛みがマシになるように薬を飲み、「頑張れ!私はまだまだできる!」と自分自身を追い込んでいた。
真面目だからこそ、一生懸命だからこそ、その人は手を抜かなかった。
そんな人に襲い掛かるのが線維筋痛症という病です。
その人の症状は仕事のストレスやプレッシャーが増すたびにどんどん悪化し、ついには「もう全てを終わらせたい」とネガティブな考えを持つようにまでなってしまいました。
朝起きると布団が触れる事すら痛い。
その苦しさ、痛みは同じ病を抱えた人にしか理解できないのではないかと思います。
その人は「全てを諦める」という気持ちを持ちました。
「どうせ諦めるなら怖いものなんてない」という思いから、私たちは最大のストレスである仕事のことを忘れ、日常生活とは全く異なる「自由で」「気ままで」「わがままな」普段では考えられない環境の中で時間を過ごしました。
すると驚くべき事に体調はビックリするほど回復しました。
痛みを紛らわせるための薬を減らすのではなく、飲まなくても眠れる日もあったのです。
医者でもない専門的な知識もない。全く根拠のない話ですが、「必ず病気は治る」そう確信しました。
その人はその後、最大のストレスであった仕事を休職しました。
もちろんストレスが無くなれば完治する訳ではない。その日の気象状況などで体調が大きく変わる事もある。寒さはこの病気にとって痛みと直結します。
しかし今、その人は仕事を休職している事以外は以前と同じ日常生活の中で前を向いて進んでいます。
「早く仕事がしたい!」「少しでも同じ病で苦しむ人に寄り添いたい」「社会に線維筋痛症をもっと知ってもらいたい」そんな気持ちをもって歩いています。
本当は痛みやツラさを抱えている。
でも明日を、未来への希望を持ってその人は進んでいます。
線維筋痛症の症状は人によって異なるので、「そんなに甘いもんじゃない」とお叱りを受けるかもしれません。しかし、その人が病から根治すれば多くの人にとって希望を持てる事になるのではないでしょうか?
その人と一緒に前を向いて歩く人が増えることを願っています。