ランディさんと始めるリコーダー 第3回
第2回に続き、第3回のレッスンは2020年8月15日に行いました。第0回からご覧になる方は、マガジンの方をご覧ください。
これまで、オンライン会議アプリのZoomを使って遠隔レッスンをやって来たのですが、第3回にして特別篇で、直接の対面レッスンとなりました。というのも、ランディさんと同じ神奈川県湯河原町にお住まいで、不定期に東京・高田馬場の僕の練習所までレッスンにいらっしゃる方々から、8月15日にレッスンのご予約をいただいたのです。この日は僕も夏休みで暇だし、どうせなら僕が遊びに行って、皆さんに湯河原でレッスンすれば良いなと思ったのです。というわけで夏休み特別企画です。Zoomではタイムラグが生じて一緒に演奏することはできないのですが、今回は直接のレッスンなので、2重奏を体験していただくことにしました。
0 最初の2重奏
さっそくですが、ランディさんにお渡しした2重奏の楽譜はこれです。2ページあります。
0.1 モンセラートの朱い本
上にリンクを貼ったファイルは、第1回に載せたファイル[1b. 最初の曲(アルト用)]に2番目の声部をつけたもの、それに〈モンセラートの朱い本〉よりStella splendens(輝ける星)のアルトリコーダー2重奏版を追加しました。〈モンセラートの朱い本〉については、第2回の記事の最後の方にも少し書いていますが、田口ランディさんご自身が下記リンク先に素敵な記事をお書きになっているので、是非これをお読みください。
ちなみにStella splendensの元の楽譜はこういうのです。
さて、お渡しした2重奏の楽譜を易しい方から順に「ほたるこい」、「きらきら星」と進んで行っても良かったのですが、ランディさんがStella splendensを吹きたいという強いお気持ちを持っていらっしゃるので、いきなりですが、まずはそれをやっていただくことにしました。結果的に、最初から結構難しいことをやる面が出て来てしまい、2小節分程度の短いフレーズを20分かけて練習していただくという場面も出てきました。動画をご覧になると、繰り返して練習するところで「大変そうだな」という印象を持たれるかもしれませんが、実際に練習しているとあっという間に時間が過ぎるように感じるのではないかと思います。なので、ぜひ皆さまも楽器を手に取って、ご自分でも吹いてみながらご覧ください。そして、練習するときに何を目掛ければ良いのか、どんな風に練習を進めれば良いのかを少しずつでも掴んで行ってください。
1 「単語」を吹く
今回一つ目のレッスン動画、15分以上あります。やったのは次の楽譜1の5小節、特にその中の赤の実線カッコで示したmonte(山)という単語を歌うフレーズです。
歌詞はラテン語なのでとっつきにくいですが、読み方はローマ字みたいなものなので、カタカナ発音でも気にせず発音していきましょう。ここまでの意味は「山の中の輝ける星、太陽が放つ光のように」というところです。最初に紹介したランディさんの記事にあるように、モンセラート(のこぎり山)修道院には黒いマリア像があり、この「輝ける星」はマリアのことです。そしてこの先には、老いも若きも持てる者も持たざる者も皆んな一緒にというような意味合いの言葉もあり、敬虔にマリアを讃えつつも喜びに溢れた賑やかな曲だと思われます。といっても、その時々の状況に応じて様々なテンポで演奏されていたことでしょう。最初は、ゆっくり目のテンポで一つ一つの言葉を味わいながら練習を進めることにしましょう。
1.1 b'の音でフレーズを収める
ランディさんにまずこの5小節のフレーズを吹いていただいたところ、全体的には曲想を感じ取って吹けていたのですが、3小節目のteという音節に当たる b'(シ)の音を間違ってしまいました。初心者の方が間違いやすい指です。b'(シ)は c''(ド)の半音下です。c''(ド)の運指0123に、右手は56の2つを足して半音下げることでb'(シ)になります。4(右手の人差し指)を閉じてしまうと半音以上下がってしまうので要注意ですね。
そこで、このシ(b')を含むフレーズとして、楽譜1で赤い実線のカッコで示した monte(山)に当たる部分から練習していただくことにしました。歌詞としては in monte(山の中の)で一繋がりではあるのですが、monteという1単語のみを取り出して練習する意味もあるでしょう。このようにシ(b')の指が難しいからといって、その1音符のみに集中するのではなく、フレーズの流れとして練習するのが良いのです。歌詞のない曲を練習するときであっても、こういう1単語に当たるような短いフレーズを取り出して、そこに現れる曲想を紡ぎだすように練習していくのがいいです。
とはいえ、このシ(b')に至る音の動きを練習するのにmonteの部分を全部というのも長いので、まずはb'の2音符前のc''から始めて、c''-d''-b'(ドレシー)という音の動きを練習していただくことから開始しています。つまり、下の楽譜2Aです。これがある程度スムーズにできるようになったら、リピートは2回と言わず何度も繰り返して練習しましょう。3音符程度のようなとても短い範囲に絞って練習するときには、頭空っぽでも勝手に指が動くというような気分になるまで繰り返し練習するのがいいのです。繰り返すときには拍を止めないで、延々と拍に乗り続けるつもりでやります。そして、それができるようになったらさらに少し前に戻ってf''-e''-c''-d''-b'(ファミドレシー)と練習するなど、フレーズ終わり(この場合はb')に向かっていく進行感を大事にしながら練習すると良いです(楽譜2B)。
解説はひとまずこのぐらいにして、レッスン動画の方をご覧ください。実際の音出し開始は2'40"あたりからです。どうでもいいことですが、僕が使っている楽器はランディさんの娘さんが学校で使っていたというアルトリコーダーで、自分の楽器も持参していたのですが、そのまま続けました。それに気づいて僕が動揺するのが6'50''あたりですが、その辺も含めてノーカットでお届けします(笑)。それやこれやで長いですが、皆さまも一緒に吹いてみながらご覧いただければあっという間ではないかと思います。
1.2 メリスマもタンギング
動画の中で説明しそびれたことも含め、もう少し補足します。ここで繰り返し練習している monte というフレーズですが、開始からしばらくmonという音節を「モー」と引き伸ばしながら歌います。このように、一つの音節の母音を伸ばしながら音の高さを変えていく歌い方をメリスマ melisma と言います。日本の民謡や演歌での「こぶし」みたいなもので、言葉の唱え方に抑揚がついているイメージです。メリスマは、現代の歌の楽譜では、次の楽譜3Aのようにスラー slur で示すのが習慣になっています(弧を描く曲線がスラーの記号)。
管楽器では、通常、スラーの途中はタンギングしないで指だけ動かします。ランディさんは僕が何も言わないのに、一繋がりで吹こうとすると自然にタンギングなしになってしまっていますね。それは自然なことではあるのですが、リコーダーでのスラーは、多用すると平板で曖昧な感じになりがちなので、原則としてメリスマもタンギングする方が良いです。つまり楽譜3Bのようにやります。そして、この場合だと「テーテデテデテー」のようなつもりでタンギングするのが良いです。「テーテテテテテー」のように全てを「テ」と発音するより、このように裏の音符は「デ」にする方がスムーズな感じになる気がしませんか? でも今の段階では、「テ」と「デ」で発音自体を変えようとする必要はないです。発音を変えようと思うと「デ」の方が曖昧になりがちなので、全て明瞭なタンギングで、でもスムーズに繋がる感じを目指してください。こんなことは言葉での説明では訳が分からなくて当然ですが、動画を参照して掴んでいただけると良いです。また、今わからなくても、こういう大事なことはこれからも繰り返し言って行くことになると思いますので、なんとなくでも追い追いわかっていただければ良いかと思います。
1.3 「ハモる」こと
次に音程のことです。レッスン動画 (1/5) では8'00"あたりからのところです。
楽譜4をご覧ください。このフレーズでは、開始のg'とd''(ソとレ)の音程、終わりのb'とd''(シとレ)の音程は「ハモって」いないといけません。「ハモる」とは、音が溶け合って一つのきれいな響きになることですが、その溶け合う感じは、ソとレの場合(ソラシドレと数えて5度といいます)、シとレの場合(シドレと数えて3度といいます)でもだいぶ違うし、最初はとてもわかりにくいことかと思います。ただ、実際に2重奏をしてみれば、溶け合ってるかどうかなんとなくわかってきて、経験を積むごとに、どんな響きなら良いか、だんだんわかってくると思います。リコーダーの音の高さは、同じ指でも、息の量を増やすと高くなり、息の量を減らすと低くなるので、息の量を加減して、ちょうど良く「ハモる」ような息の量で吹くことになります。ランディさんは、その響きの感覚をすぐに掴んでくださったようなので驚きました。また、息も安定しているので、こういう息づかいが自然にできるようだと、アンサンブルを通して音程の感覚も掴みやすいかと思います。お読みの皆さまもお仲間を誘って2重奏して、それを掴んで行ってください。
とはいえ、曲の中にはハモる音の関係(協和音程)もあれば、ハモらない(ぶつかる)音の関係(不協和音程)もあるので、隅から隅までハモらせると考えるのもよくありません。フレーズの最初と最後のように重要なところがハモっていれば十分です、特に、最後の音は安定しないと収まらないので、ピタッとハモることを目指したいところです。途中は旋律の流れを重視して、音程が少しぐらい犠牲になっても気にしないでいいです。楽譜4でいうと破線矢印で示したc''とc''は同じ音なので、あまりズレない方が良いのですが、それでもフレーズ途中なら少しぐらいのズレは気にならなかったりもします。アンサンブルを楽しみながら経験を積んでいただければと思います。
1.4 拍に乗り続けること
それから、最後に、拍に乗るということについてです。「1.1 b'の音でフレーズを収める」の楽譜2のところでも書きましたが、ある程度できるようになったら、考えなくてもできる感覚になるまで繰り返し練習する必要があります。この monte に当たるフレーズでは、具体的には次の楽譜5のようにしばらく延々と繰り返します。
楽譜2のところでも書きましたが、重要なのは、繰り返すときに拍を止めないことです。この場合は2分音符を1拍にするのが良いですが、休符も含めて、ずっと一定の拍に乗り続けてながら繰り返しましょう。その練習の様子は、レッスン動画 (1/5)の12'10"あたりからです。monte(モ〜〜〜〜〜ンテ)と言葉を歌うつもりになれば自動的に旋律が奏でられるという感覚になるのが理想です。
2 最初の部分
このように、まずは monte に当たるフレーズを練習した後、次のレッスン動画 (2/5) では、まず、一番最初に戻って、Stella(星)と splendens(輝やける)に当たるフレーズを練習しました。
Stella(星)という言葉に節回しをつけて唱えるように、上の楽譜6左の方だけを練習していただいても良かったのですが、ここでは一気にStella splendens(輝ける星)の部分を吹いていただきました。でも、音符を読んで吹き進めていると、splendensで止まらず、どうしても次の in に当たる音符まで吹いてしまいがちですね。Stella splendensで止めるというようなこともできると良いのですが、ここでは、Stella splendensでフレーズが切れるわけではなく、次の in monte(山の中に)まで一繋がりのフレーズなので、そこにはこだわらず、すぐ続けて、in monte の部分を練習していただきました。さっきは monte(山)だけ練習したわけですが、意味としては in monteで一まとまりなので、改めてその範囲を練習していただいたわけです。楽譜1の赤い破線カッコですが、楽譜7として、下にも載せておきます。
ここまでとても順調で、続いて、ut solis radium(太陽が放つ光のように)に進みました。
これもとてもスムーズで、楽譜1にある最初のの5小節分のフレーズを続けて吹けるようになりました。b'(シ)の運指についてはまだ慣れない様子もあったのですが、ランディさんはこの曲がお好きだというだけあって、曲の流れはよく掴んでいらっしゃいます。そして、次のフレーズ Miraculis serrato exaudi populum(奇跡が煌めく、聞け人々よ)に進みます。
Miraculis serrato(奇跡が煌めく)までは、最初のStella splendens in monte(山の中で輝く星)と全く同じ旋律で、次のexaudi populum(聞け、人々よ)も、さっきの楽譜8にある ut solis radium(太陽が放つ光のように)の旋律と最後の -pu-lum 以外同じです。楽譜を見比べておわかりでしょうか?なので、最後を除けば、もう吹けるはずなのですが、最後が難関です。この楽譜で16分音符になっているあたり、ちょっとした飾りのような動きですが、リコーダーを始めたばかりの人にとっては大変過ぎるので、飾りなく単純な形に置き換えれば良いと思います。でも、そのまま練習したいというランディさんのご意向に従って、やっていただくことにしました。そのあたり難しいですが、ランディさんと一緒に始められた皆さんは、そこは単純化した形で吹くということで構いません。それでは、そろそろ続きのレッスン動画 (2/5) をご覧いただきましょう。最後の難しいあたりの単純化については、動画の後に続けます。
2.1 装飾的な速い動きのところ
いかがでしたか。最後のあたりをどうやれば良いかについても、書いておきましょう。もし、音符を省かずに全部吹く場合でも、タンギングは、populum(人々)の1音節ずつ、po-pu-lumに合わせて、テーテーテーとやるのをお勧めします。楽譜に書くとこんな感じです。
1.3のところで「メリスマもタンギング」と書いたように、歌ではメリスマ(1音節を引き伸ばしながら音が変わること)であっても、タンギングする方が、変化に乏しい不明瞭さを避けられるのですが、リコーダーの場合は、こういう短い範囲のスラー(タンギングしないで音を変える)で上手く行くことは多いです。特に、ここの16音符のところで全部タンギングしようとするとギクシャクとなりがちなので、スラーにしましょう。[こういう細かい音符でも全てタンギングするのが良いという場合もあるのですが、それはとても高度な話なので、今は気にせず結構です。]
このように、16分音符が出てくる上に、ここはスラー、ここはタンギングという話にまでなると、初心者の方には大変なのは当然です。なので、このpopulumに当たるところは、次の楽譜11のように単純化して構いません。
AかBかはどちらでもお好みの方でどうぞ。また、こうすると速い動きは出てこないので、全部の8分音符をタンギングということでもいいです。こんな風に、ちょっとした飾りのような動きが難しくて、そこに足を引っ張られてしまうというのは、楽器の練習ではしょっちゅう起こります。細部にこだわって音楽の流れが止まるより、多少ごまかしても全体の流れが淀みなく雄弁な方が良いということもあります。ランディさんは、楽譜11のBの方をやりかけるうちに、楽譜10のようにできそうと思われた様子で、そのため、かえってタイミング通りにフレーズの最後に入れないという状態が続いてしまいました。単純化してやると開き直る方が良かったかもしれないですね。途中で僕が「楽譜通りやろうが、単純化してやろうが、大差ないですよ、」とやや暴言気味のことを言ってますが(笑)、難しいところも流暢にというのは長期目標としておいて、初心者の段階では大らかに進めて行くのが良さそうです。
3 中間部分の初め
ここまで来たら、あとは、これに続く楽譜12の部分を練習すれば、旋律の要素は全部で揃うことになります。最初に載せたPDFファイルで、全体の楽譜を見ていただければおわかりかと思いますが、楽譜1の部分をA, それとほぼ同じの楽譜9の部分をA', 下の楽譜12の部分をBとすれば、曲全体の旋律は、A-A'-B-B-A-A'という構成になっていますね。(B-Bの部分を「中間部分」と呼びました。)
この部分がとても難航してしまい、下のレッスン動画 (3/5) では、楽譜12に赤いカッコで示した初めの部分のみで、23分に及んでしまいました。アルトリコーダーのファのシャープ(f'' sharp)の運指は、左手の人差し指と中指のみを閉じるのですが(-12-----)、ランディさんはこの運指にまだなかなか慣れないという様子でした。動画が長いのですが、実況中継的な文章も書いておきます。
大事なことは、音符を次々に吹くのではなく、範囲を絞って練習することです。この場合は、まず、Concurrunt universi(全員が一緒になって)のところに絞ります(楽譜13)。
最初は一音符ごとに指を確認してという風になるのは仕方ありませんが、Concurrunt universi の部分全体を言葉を唱えるようなイメージで吹くのを目指しましょう。旋律を演奏するときには、拍に乗った流れを止めないのを優先させるのが大事です。5'00''あたりは、そんな風に、フレーズの始まりと終わりはしっかり捉えて、リズムも崩さず、でも音は間違ったままでも良いという方針でやっていただいています。
この後、音も間違えずにやるために、一音符ごとに止まりながら指を確認してという風にやり始めたのですが、かえって混乱して来てしまいました。
そこで、10'30''あたりからは、フレーズの最後から先にやっていただきました。universiのうちの-ver-siに当たる部分、下の楽譜14の部分です。
これを勝手に指が動いてくれるぐらいの感覚になるまで繰り返し練習したら、楽譜13の最初から始めて、最後はしっかりこの楽譜14のようにフレーズを閉じるという風に練習を進めると良いのです。でも、このレッスン動画ではそれもなかなか上手くいかなかったので、13'30''あたりからは、universiのうち最初のu-ni-veに当たる次の楽譜15の練習をしていただいています。
楽譜15も楽譜14もスムーズにできるようになれば、universi(全員が)全体に当たるフレーズもできるはずです(楽譜16)。
ランディさんも16:50あたりでは、できるようになって来ています。次の段階は、concurrunt(一緒になって)に始まる最初から迷いなく出来ることを目指しますが、その前にconcurruntからuniversiのu-に至る部分を練習するのが良さそうです。次の楽譜17の部分です。その練習は、17'50''あたりから開始しています。
これができれば、つなげて、楽譜13の Concurrunt universi(全員が一緒になって)全体が吹けるはずではありますが、それもなかなか上手くいかないようなら、楽譜14,15,16,17に示したような部分練習を頭空っぽでも出来るまで繰り返すうちに出来るようになるでしょう。根気がいることではあるのですが、お気に入りの曲が見つかれば、その過程自体も楽しめるようになって来るかも知れません。気長に取り組みましょう。ランディさんも22:30あたりからは、出来てき始めました。
以上は、ランディさんの様子を見ながら、僕の方も試行錯誤的に助言を加えていったことなので、ちょっと冗長だったかも知れません。動画の後に、もう一度要点をまとめます。
3.1 部分に分けて、それをつなげる
もう一度、要点をまとめておきます。一つのフレーズを演奏するには、そのフレーズがどこから始まってどこで閉じるかがまず重要です。そしてその間、淀みない拍に乗って進まないといけません。この場合だったら、Concurrunt universi(コンクールント・ウニウェルシ/全員が一緒になって)という言葉を次のリズムで唱えるようなつもりで練習します。
リコーダーにある程度慣れていれば、これだけで上手くフレーズ感をつかめると思いますが、運指やタンギングが覚束なければ、下記のように部分に分けて練習します。
部分だけ取り出して、繰り返し練習して、楽譜18のような流れに乗ることができれば、続けても吹けるとようになるはずです。根気はいるかも知れません。いきなり3つの部分を続けるのが難しければ、楽譜16に示したように、2つの部分だけ続けるということもやるといいです。
4 中間部分の続き
3でやったConcurrunt universiの部分をさらに繰り返しやっておきたいところでしたが、そこは個人練習にお任せすることにして、先に進みました。Gaudentes populi(人々の歓喜)に当たるところです。
フレーズの終わりに向かって進んで行くという感覚が大事なので、部分練習は最後のpopuli(人々の)からやっていただきました。(下の動画 (4/5)で1'30"ぐらいから)
そして、その前のGaudentes(歓喜する)の部分も少し練習していただいたら、すんなり、Gaudentes populi の全体が出来るようになりました(2'35"あたり)。
4.1 緊張弛緩の流れ
そこで、初心者の方には高度かなと思いつつ、今度は、下の声部との関係で作り出す響きの話をし始めました。3'15"あたりからです(是非ご覧ください)。
Gaudentes populiに当たる部分の上下の声部の音の関係を見てみましょう。赤矢印で示したところは、協和音程(すっきりとハモる関係)、青矢印で示したところは不協和音程です。不協和音程については、日常語としてはぶつかるという言い方をします。青矢印のところでは、片方がc''(ド)、片方がd''(レ)で、音階で隣接する音が同時に鳴って、ぶつかっています。そして、そのすぐ後の8分音符では、協和音程になっています。( )で囲んだ小さい音符は、前の4分音符がまだ続いていることを念のために示したものです。このように、不協和音程が協和音程に移ることを不協和音程の解決と呼びます。この8分音符のあたり、ぶつかる→ハモる→ぶつかる→ハモる、と表現しても良いのですが、一般には、緊張→弛緩という言葉を使います。ぶつかっている方が緊張です。このような緊張弛緩の交代で美しい効果が出るのです。8分音符交代の短い時間で起こることなので、感じ取るのは難しいだろうと思っていたのですが、ランディさんがすぐに感じ取れた様子だったのは素晴らしことでした。ことさらに強調するのではなく、さりげなくそういう音のつながりがあるというぐらいが良いですね。
この曲、ランディさんがお好きだということなので、早速3回目のレッスンでやっていただいたのですが、始めて1ヶ月にもならない段階で練習していただくには高度過ぎたかもしれません。今の段階では、部分的にでも出来るところがあるなら、それだけで十分です。長く愛奏するうちに少しずつ上手くなっていくはずです。ランディさんは、最後のあたりの緊張弛緩の交代を感じ取ったり、響きや音のつながりについては、すでに良い感覚をお持ちのようです。楽譜から拍を読み取ったり、運指を判断したりというのにはまだ慣れない様子ではありますが、得意なところと苦手なところがあるのは当然です。これをお読みの方々の得意なところ苦手なところは、ランディさんとまた異なっていたりするでしょうが、焦らず続けていただければ、だんだんと楽しめるようになって来るでしょう。
5 ほたるこい・きらきら星
Stella splendensだけで時間が経ってしまったのですが、せっかくいろいろな曲の2重奏の楽譜をお渡ししたので、他の曲も2重奏でやってみることにしました。「ほたるこい」と「きらきら星」の2曲です。少しは迷いながらでしたが、このぐらいなら、もうすぐに2重奏を楽しめる様子でした。ここは気楽に動画の方をご覧ください。
このぐらいの易しい曲であれば、他の多くの方々も少し練習すれば出来るようになるのではないでしょうか。皆様も、ぜひ、お友だちを誘って2重奏ををやってみてください。
第4回予告(次回用PDF):
第4回のレッスンももう完了しているのですが、ハ長調のドレミファソ(c'', d'', e'', f'', g'')の5音だけを使って、楽譜の読み方と基本的な音の動きをやっていただきました。今回のStella splendensよりずっと易しいはずではあるのですが、全く知らない曲を楽譜から読み取るというのはなかなか難しいかもしれませんね。使った楽譜は、下のリンクの通りです。1ページのみです。
では、どうぞお楽しみに。
(おまけ)水滴の吹き飛ばし方
今回の動画をご覧になった方は、僕がときどき笛に手を当てて強く息を吹き込んでいるのが気になったのではないでしょうか?あれは、水滴を吹き飛ばしているのです。
リコーダーの音は、息を狭い通り道に流して刃状の部分に当てることで作られるということはおわかりでしょう。狭い通り道のことをウィンドウェイ、刃状の部分をラビウムと呼びます。楽器の中には、息の水分が結露して水滴がつきます。ウィンドウェイの中の水分は、普通に演奏する息でも押し出されて流れていくのですが、流れが悪いと詰まってきて音がかすれてきます。ちょっとかすれてるぐらいなら、普通に吹いているうちに取れてきたりもするんですが、なかなか取れないときには、強く息を吹き込んで吹き飛ばします。
その場合、下の写真左(○)のように、ウィンドウェイの出口あたりに指を置くと音がしなくなるので、思い切り強い息で吹けます。うまく当てれば風音以外全く音がしなくなります。うまく当てないと物凄く高い音が出てしまうので、思い切り強くは吹けません。うまい当て方を見つけてください。動画中の僕の様子もどうぞご参考に。
要注意なのは、右の写真(×)のように当てないようにすることです。プラスチック製なら気にしなくても良いのですが、木製の場合、ラビウムの薄いところを指で押すと変形してしまうことがあるそうです。またウィンドウェイの出口あたりの構造も大変精妙なので、ここに爪が当たって小さい傷でもつくと音に影響します。写真左(○)のような当て方でどうぞ。
(それと、ウィンドウェイ内の水滴は息の水分が結露したもので、息にはウィルスは含まれないとのことなので、このように吹き飛ばしても安全だとは思うのですが、今の時期では至近距離に人がいない、人の方向に向けないという配慮はあると良さそうですね。)
では、改めて、第4回をお楽しみに!
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