短い小説見てって😊 創作都市伝説
第9幕 顎引きババア
とある国のとある時代そこには王の后(きさき)を決める熾烈な争いがあった。
王は幼少の頃より貴族の娘たちからのおべっか、媚びへつらい。そしてすぐに他者を欺き騙すこの者たちが我慢ならなかった。この貴族の女たちの中から后にしたいと思えるものがただの1人もいなかったのだ。しかし子を、王子を成さねばこの国の先行きも暗くなる。臣下の者と話し合い、全国民のうち15歳〜21歳までの女に王への謁見をする様におふれを出しその中から后を選ぶことを宣言したのだった。すでに籍を入れているものも関係なく対象年齢の範囲の女ならば謁見しなければいけなかった。
おふれを見た対象年齢の女たちは歓喜に沸いた。もしかしたら自分がこの国の后になれるかもしれない。こうしてはいられない。自分を1番美しくする為に行動しなければ。それは夫を持つ女たちも同様だった。しょぼくれた生活から抜け出せる唯一の望みだったのだ。
先述した通り熾烈な争いとなった。対象年齢の女たちは他の候補者を見ると互いに罵り合いその場で髪を掴み合い喧嘩するほどで、時には金で雇った野盗に村一番の美女を殺害させる者も現れるほどだった。いかに自分を1番にいかに自分が気に入られるか、もうそのことしか考えられなくなっていたという。
そしてついに王への謁見が始まった。皆一様に煌びやかに自分を飾り自分が1番美しいと思いながら王へと謁見していく。あまりにも人数が多い為50人ほどを並べ王は一人一人をじっくり観察し気になるものには少しの会話を求めたそうだ。最初の謁見から2ヶ月ほどの時が経ちその者は現れた。ボロボロの土のついた服を身にまとい、髪もとかない小汚い格好に異常なまでに引き上がった顎。そしてその顔は老婆の様な女だったという。どんなに金がない家の娘でもここまで小汚く醜悪な女は初めてだと王は驚いた。なんと醜い女なのかしら。まるでお婆さんの様ね。それにあの顎。笑ってしまうわ。顎引きババアね。流石にあれで王へ謁見するのは失礼に値するわ。とそんな声が王の御前にも関わらずほかの候補者から漏れ出るほどだった。
王もあまりにも不自然なこの状況に冷静ではいられなかった。もしかしたらこの国の、この王の后になれる望みが今、この場所にかかっているのになぜこの女は何一つ努力をしなかったのだろうか。いや、むしろ后という地位に興味が無いのかもしれない。そう考える様になった。
むしろそうでなければおかしいとさえ思った。
そんな女に逆に興味を惹かれ、気に入ってしまった。そしてその日この国に后が誕生したという。
その晩その女はひとしきりに泣き、あることを心に決める。
王には準備があるからと、再度の謁見は数日後に決まった。そしてその日そこに現れたのはあの顎が引き上がった老婆の様な女ではなく、今まで見たこともないほど美麗な女性だったという。その美しさに王は息を呑むほどだった。
それから程なくして王は不慮の事故で死ぬこととなる。王室の窓から酒を飲みすぎて落ちてしまったそうだ。その後、王との間に生まれた子供が成長していくにつれ不思議な噂が流れたという。
かつて滅ぼした隣国の王に似ていると
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