うつほ物語『俊蔭』あらすじ1
清原俊蔭は、幼い時から学問の才を認められ、16歳で遣唐使に選ばれました。唐に渡る途中、船が難破し、波斯国(はしこく・ペルシャ(今のイラン辺り))に漂流します。ここで、3人の琴(きん)を弾く人に出会い、琴の奏法を習い取ります。
※琴(きん)は、中国古代の弦楽器で、琴柱がなく7本の弦を張ったものです。日本には奈良時代ごろ伝わったとされますが、平安時代中期に廃れてしまいました。
3年後、俊蔭は琴を作ろうと、材料となる木を求めてさらに西へ向かいます。阿修羅が守る山に着くと、音楽を司る天人や天女達が降りてきて、桐の木から30の琴を作り、俊蔭に与えました。
30の琴のうち、28は同じ音色でしたが、残りの2つは特に音色が優れており、天女は、この2つの琴を「南風(なんふ)」と「波斯風(はしふ)」と名付けました。そして、次のように言いました。
俊蔭はさらに西へ向かい、7つの山で、天女を母とする7人の兄弟に出会います。7人と一緒に琴を弾くと、仏が現れて、俊蔭の子孫は琴を継いでいくことになる、と予言をしました。
俊蔭は日本に帰ろうと思い立ち、出会った人達に琴を渡して別れを惜しみます。天人に名付けられた「南風」と「波斯風」の他、10の琴とともに、俊蔭は日本に帰りました。