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【日本円崩壊】資産を守るため、私たちがとるべき対応

かつて「永遠にゼロ金利」とさえ思われた日本で、いま金利が猛スピードで上昇しています。2025年2月現在、日銀の政策金利(短期金利)は0.5%に引き上げられており、これは実に約17年ぶりの高水準です。肝心な長期金利も急騰し、10年国債利回りは1.4%台にも達しました。5年物国債も1.04%と2008年以来の水準です。つい1年ほど前まで長期金利は0%近辺で抑え込まれていたことを考えると、この上昇ぶりがどれほど異例かお分かりいただけるでしょう。

金利上昇の背景にはインフレ率の高まりがあります。2024年末の日本の消費者物価上昇率は前年比3.6%と、ここ数十年で見ても異例の高さに達しました 。日銀が目標とする2%を大きく上回り、もはや「一時的な物価上昇」という言い訳は通じない状況です。実際、東京都区部のコアCPI(生鮮食品を除く消費者物価)は2025年1月に前年比2.5%上昇となり、インフレ圧力が持続していることを示しています。これには、エネルギー価格や輸入コストの上昇だけでなく、深刻な人手不足による賃金上昇など国内要因も絡んでいます。

市場も敏感に反応しています。「金利なんて上がるわけがない」という長年の前提が揺らぎ、債券市場では投資家が一斉に身構え始めました。実際、日銀が利上げに転じるとの観測から、日本国債の利回りは数年来の高水準へとシフトしています。2025年1月の日銀会合で政策金利が0.5%に引き上げられると、マーケットは「次はいつ、どこまで上がるのか」と戦々恐々です。証券会社の予測では、今年7月にも0.75%へ追加利上げとの見方さえ出ています 。まさに「金利地獄」への扉が開き、その足音は想像以上に早く近づいているのです。

日銀の金融政策:異次元緩和のツケ

この金利急上昇の陰には、日銀のこれまでの政策運営のツケが見え隠れします。リーマンショック以降、日本銀行は長らく異例の金融緩和を続けてきました。2013年以降の「量的・質的緩和」や2016年からのマイナス金利政策、そして国債利回りを強引に押さえ込むYCC——まさに「あの手この手」で金利をゼロ近辺に固定し、日本経済に麻酔をかけ続けてきたのです。

しかし麻酔が切れると副作用が待っていました。日銀は市場から国債を買い占め、国債残高の約半分を抱え込む事態となりました。その結果、債券市場の機能は損なわれ、価格発見メカニズムはマヒ状態。市場歪曲と流動性低下という副作用が深刻化したのです。日銀が昨年度に約136兆円(1兆ドル超)もの国債を買い支えたことで、市場の一部は人為的に抑え込まれ、流動性が枯渇しました。これは、痛み止めを大量投与しすぎて身体(市場)の感覚が麻痺してしまったようなものです。

また、日銀は物価目標2%に執着するあまり、引き際を誤ったとの批判も避けられません。2021年頃から世界的にインフレの兆しが出ていたにもかかわらず、「日本だけは別」と高をくくり、金融緩和を続行。2022~2023年にかけてインフレ率が急上昇しても、当初は「一時的な要因」として政策転換を先送りしました。その結果、対応が後手に回り、インフレが定着しかねない状況で慌てて利上げに転じたわけです。ゼロ金利からの出口に失敗した過去に怯えすぎて対応が遅れたとも言えるでしょう。慎重を期したつもりが、実は問題を温存・拡大させてしまったという皮肉な結果です。

要するに、日銀の長年の金融政策は「低金利ジャンキー」状態を作り出し、日本経済を金利上昇に極端に弱い体質にしてしまいました。そのツケが今、一気に噴き出しています。実質マイナス金利が長く続くのは正常ではないのです。遅ればせながら日銀自身もそれに気づいたのか、1月の利上げ以降「必要なら更なる利上げも辞さない」とタカ派的なシグナルを発しています 。しかし、市場の信認を取り戻すには時すでに遅し。「出口戦略」を描かぬまま異次元緩和にのめり込んだツケは、簡単には清算できそうにありません。

政治家と有権者の選択:問題悪化の共犯者たち

もうしつこいくらいに言っていますが、金利地獄を招いた責任は、何も日銀だけではありません。日本の政治家と有権者もまた、この長年のツケを積み上げる共犯者でした。政治の世界では、「借金でバラマキ」が半ば常態化してきました。選挙前になると聞こえてくるのは耳触りのいい公約の数々——減税、給付金、公共事業の拡大…。まるで有権者への買収合戦です。その誘惑に有権者も負け、「将来世代の負担?それより今の景気対策を!」とばかりに飛びついてきた歴史があります。

そして有権者である国民もまた罪深い存在です。耳触りの良い約束を振りまくポピュリスト政治家を選び続けてきたのは他でもない有権者でした。「増税はイヤだ、歳出カットもイヤだ。でも景気は良くして」という願望をかなえると言う(現実的にはそんな美味しい話はない)政治家が支持を集め、地道に痛みを分かち合う提案をする政治家は票を失う。民主主義国家では結局のところ「民意」が政策を方向付けるのですから、有権者の選択にも相応の結果責任が伴います。

日本の有権者は長らく、債務残高の増大や日銀頼みの財政という不都合な真実から目を背けてきました。「借金?問題ないよ、だって日銀がなんとかしてくれるんでしょ?」と無責任体質に陥ってはいなかったでしょうか。選挙の度に「景気対策」と称した歳出拡大競争が繰り返される中、将来への請求書が積み上がっていくのを見て見ぬふりをしてきました。その結果が、今襲っている金利上昇というブーメランです。結局、一番苦しい思いをするのは、他でもない一般国民なのです。

言い換えれば、「有権者は自分たちの選んだ政策の結果を刈り取っている」に過ぎません。もちろん、高齢化や世界経済の波など日本だけの責任ではない要因もあります。しかし、それを言い訳にして必要な改革を先送りし、現状維持バイアスに浸ってきたツケから逃れることはできません。ポピュリズム政治とそれを許容してきた国民との馴れ合いの構図、この金利上昇という現実を招いたのです。今さら「こんなはずじゃなかった」と嘆いても、残念ながら時間を巻き戻すことはできません。

要するに、日本の財政・金融政策は政治と世論の合作で問題を先送りし続けてきました。「借金は日銀が引き受けてくれるから大丈夫」「金利はどうせ上がらない」という暗黙の前提で、政治家も国民もぬるま湯に浸かっていたのです。その結果、政府債務はGDP比260%超という先進国最悪レベルに膨張し(2023年時点)、家計も企業も超低金利に慣れきってしまった。今さら金利が数%上がっただけで大騒ぎするのは、本来であれば相当にマズい状況なのですが、これまでが異常だったとも言えます。

手遅れか?——残念ながら、その答えはかなり厳しいものになりつつあるでしょう。

金利上昇が突きつける国民のリスク

では、この「金利地獄」で国民生活にどんなリスクが迫っているのでしょうか?まず真っ先に懸念されるのが、政府の巨額債務の利払い負担増による財政危機リスクです。政府試算によれば、金利が1%上昇すると国債の利払い費は数兆円単位で増加するといいます。実際、日本政府の年次の債務利払い費は今後数年で50%以上増加する可能性が指摘されています。

もうすでに遅しかもしれません。財政の信認が失われ、国債の信頼性にヒビが入れば、さらなる金利急騰と通貨安(ハイパーインフレ的なリスク)という悪夢が待っているのです。

次に家計への直撃です。長らくゼロ金利に慣れた日本では、住宅ローンや企業の借入金利は極めて低水準でした。しかし金利上昇により、変動金利型の住宅ローン金利や中小企業の貸出金利がじわじわ上がり始めています。これまで月々返済に余裕があった家庭も、金利上昇で返済負担が増え、家計を圧迫する可能性があります。特に若い世代の住宅ローンや、業績ギリギリで運転資金を借りている中小企業にとって、金利上昇は見過ごせないコスト増です。

さらに見逃せないのが、インフレによる実質所得の目減りです。物価上昇率が3%台でも、銀行預金金利はまだ0.00何%という有様で、預金に眠らせているお金の購買力は毎年確実に減っています。賃金が物価以上に上がればよいのですが、日本の賃金上昇はまだ鈍く、2024年はボーナス等で名目賃金が上向いたとはいえ実質賃金はマイナス圏でした。このままでは庶民の預貯金や年金生活者の資産がインフレに侵食される一方です。「預金しておけば安心」という昭和的常識は、もはや通用しなくなりつつあります。長年デフレに慣れた感覚でいると、気づけば貯金の価値がどんどん減っていた…という笑えない現象が進行中です。

金融システム上のリスクも無視できません。日本の金融機関は大量の国債を保有していますが、金利上昇で国債の評価額が下落すれば含み損が生じます。日銀自身、保有国債の評価損が過去最大規模に膨らんでいるという報道もあります。メガバンクは体力がありますが、地方銀行など資本力の弱い金融機関は金利リスクで脆弱性を露呈します。海外では金利急騰に伴う債券評価損で銀行が破綻した例(2023年の米銀破綻など)も記憶に新しいでしょう。

まとめると、金利上昇は国の財政から家計の懐事情、そして金融システムに至るまで幅広く影響を及ぼします。破滅の足音は、確実に国民一人ひとりの足元にも迫りつつあるのです。

国民が今取るべき具体的な対策

では、必死に抑えていたパンドラの箱が開いてしまいつつある今、私たち国民にできることは何でしょうか。皮肉なことに、その選択肢の多くは「日本円から距離を置く」方向に傾かざるを得ません。

1つ目の策は安全資産へのシフトです。日本円の通貨価値が揺らぐ中、古典的な安全資産である金(ゴールド)が脚光を浴びています。「有事の金」と言われるように、金は世界共通の価値保存手段です。紙幣や国債と違い人間の信用を必要としないため、通貨価値が不安定な局面で保険の役割を果たします。日本人にとっても、金地金や金ETFを少しポートフォリオに組み入れることで、万一円が大きく価値を下げる局面に備えることができます。金利が付かない資産ではありますが、「信用リスクフリーの究極の現物資産」としての安心感は替え難いものがあります。

2つ目は資産通貨の分散です。つまり、預貯金や資産をすべて円でもつのではなく、一部を外貨建て資産や海外投資に振り向けることです。ここ数年、歴史的な円安が進行し、円は2022年以降ドルに対して20%以上も価値を失い一時1ドル=160円近い38年ぶりの安値を記録しました​。円の信用が揺らげば生活必需品の輸入価格も上がり、生活は苦しくなる一方です。幸い日本は個人が海外の株式・債券や外貨預金に投資するハードルはそれほど高くありません。既に多くの個人投資家が米国株や海外ETFに資産を振り向け、円に集中しないポートフォリオを作り始めています。リスク分散の観点からも、「通貨の卵を一つの籠に盛らない」ことは基本中の基本でしょう。

3つ目は国内資産でも実物やインフレ連動性のあるものを選ぶことです。インフレ下では現金や固定金利債券は価値が目減りします。逆に、不動産やインフレ連動国債、コモディティ関連投資などはインフレに強い傾向があります。もっとも、不動産も金利上昇で先行き不透明、国債も信用不安しかありません。それでも、少なくとも円建ての預金だけにしがみついていれば安全という時代ではなくなったことだけは確かです。むしろ危険なんです。

選択肢として考えうる政策のほぼすべてが「日本円から逃げる」ことです。つまり、日本円そのものの信頼低下が確実となりつつある今、自国通貨建て資産の比率を可能な限り引き下げるべきです。極端に聞こえるかもしれませんが、既に日本の富裕層や一部の投資家は海外移住や資産の海外シフトを加速させているとも言われます。

もっとも、こうした対策は本来なら必要のなかったはずの苦労です。適切な政策運営と国民の現実直視がもう少し早ければ、ここまで極端な資産防衛を考えずに済んだのです。しかし過去は変えられませんから、少しでも被害を最小限に抑える策を講じるしかないのでしょう。

日本円価値下落リスクへの警鐘

最後に、日本円の価値下落リスクについて強く警鐘を鳴らしておきます。現在進行中のインフレと金利上昇、そして巨額の政府債務という三重苦は、将来的に日本円の信認低下につながります。これまで日本円は「安全通貨」「信用貨幣」の代表のように思われてきましたが、その前提が揺らぎつつあります。

日本円から他の安全資産への資産逃避(フライト)は今後ますます現実味を帯びてくるでしょう。私たち国民は、自分の預貯金や資産がいつの間にか目減りしてしまう事態を防ぐためにも、「円一極集中」から脱却する勇気と行動力が求められています。幸い、今は個人でも海外投資や金購入が容易に行える時代です。リスク分散の手段は揃っているのですから、あとはそれを実行に移すか否かにかかっています

金利急騰という現実は、日本経済の足元に潜む危機を露わにしました。「日本だけは大丈夫」「円さえ持っていれば安心」という神話は崩れつつあります。むしろ今や、日本円建て資産に固執し続けること自体がリスクになっています。国・日銀の政策次第では、日本円の価値が今後大きく毀損することでしょう。だからこそ、本記事で述べたような対策を参考に、自らの資産を守る手立てを講じてください。迫り来る経済の荒波に備え、行動を起こすのは今しかないのです。

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