「曲は好き、ゲームはする、でも話は知らない。」なオタクを滅ぼす為のゲーム制作#01
はじめに
音楽を主軸とするソシャゲ、特に音ゲーは、楽曲が魅力的な導線として新規ユーザーを獲得するための重要な要素です。
しかし、これらのゲームは、楽曲の持つ価値を課金や作品への関心につなげる仕組みとして最大限の効率を発揮しているとは言えない気がします。本記事では、音ゲー型ソシャゲの収益モデルの現状を分析し、近年でてきた「ウマ娘」「メメントモリ」「シャニマス」「学マス」など、音ゲー以外の楽曲を売りにしたゲームが出てくるようになってきた理由とその効果や合理性を考えていきます。
音ゲーの課金モデルと課題
音ゲーにおける楽曲の扱い
音ゲーでは、楽曲がゲームの中核となる一方で、楽曲自体が課金対象となることはほとんどありません。新曲は通常、無料で追加され、イベントやランキングを通じてプレイされます。しかし、このモデルでは以下の課題が浮き彫りになります。(あくまで一例であり、あてはまらない作品/アプリも多いです)以下のポイントをどれだけ丁寧に埋められるかに作品の長寿化がかかっているのではないでしょうか。
楽曲の価値が直接課金に結びつかない ユーザーが楽曲にアクセスする際、直接的な金銭の支払いが求められないため、楽曲そのものの価値が課金行動に反映されにくい。
ランキング興味層への依存 ランキングイベントやスコアタックを楽しむ層にしか課金の動機が働きにくい(もしくは作品のファン)。楽曲目当てでダウンロードしたがランキングに興味がない層は課金行動を起こしづらい。
ゲーム内でシナリオ読まない 楽曲目当てでゲームを始めたユーザーがシナリオを理解して課金に至るまでの導線が他ゲームに比べてかなり弱い。音ゲー部分が楽しいので、死なない程度のLIFE編成が手に入った後は新ガチャもあんまり興味がわきませんといったユーザーも多い。どんどん他のゲームより更にシナリオやキャラに触れる機会が遠のいていきます。この部分をしっかり補っているコンテンツが長続きしているように感じます
知らないゲームの"音ゲー版"になりがち(ファン向けになりがち)
アプリリリース時に相当な数の楽曲が必要になる為、
既存作品の音ゲー版としてリリースされがちなので「自分アイマス知らないしな~」と選択肢から外されやすい形式になっていることが多い。(Deemoのようにフラットなデザインの作品は対象外)
「音ゲーの課金モデルと課題」まとめ
以上の点から音ゲーソシャゲの課金層は、
作品ファン>ランキング好き>>>>>音ゲーファンとなっており、
音ゲー中にシナリオは挟まらないので、音ゲーファンを作品ファンに引きずり込む機会が他のゲームより少くない点が課題になっている作品が多いです。この1~4をどれだけ丁寧に埋められるかに作品の長寿化がかかっているのではないでしょうか。
そこで生まれた対策の例
「シナリオ読まれない」対策
・早めにアニメ放送→プレイ前にシナリオをしってもらう(複数作品)
・イベント中起動&曲プレイで強制シナリオイン発動
・既存曲の大量カバーで大衆化(ガルパ・プロセカ)
「知らないゲームの"音ゲー版"」対策
・キャッチ―で一発で全てがわかるキャラの追加+CM放送(デレステ)
・大量のカバー曲で 音ゲー>>>キャラゲーイメージに(ガルパ)
・ボカロの音ゲーだよ!(プロセカ)←無敵
・無条件でシナリオはいつでも全部読める(2020年以降の作品はほぼすべて)
こうした状況を考えると、楽曲コンテンツを最大限ゲーム内の課金要素として利用していくには音ゲーでは不十分なのかもしれない。
ではどうすれば課金と楽曲、そして世界観を繋げられるのか。
そしてうまれたのが、学マスである。(キートン山田)
楽曲+課金+シナリオ
3つを直結させた成功例
例1:学マスガチャ
『学マス』は、ガチャSSRに新曲と新シナリオをセットで付属させる仕組みを採用しています。これにより以下の効果が得られています。
楽曲が課金アイテムに直結
楽曲を解放するにはSSRキャラを取得する必要があるため、
楽曲の付加価値を直接課金につなげています。
ここで初めて曲好き!→ガチャ引こう!の直通が生まれたのです!!!
キャラクター愛と楽曲愛の相乗効果
楽曲の付加価値を高めるだけでなく、
シナリオも衣裳もついてくる超リッチ仕様。
キャラクターの魅力を引き立て、ゲーム世界観への愛着形成を促進します。
例2:メメントモリ
『メメントモリ』は、AFKアリーナ型のカジュアルゲームながら、SRキャラには歌詞付きの楽曲が付いており、ホームで歌詞を見ながらフルを視聴可能なしくみになっています
シナリオ読まずともで世界観を伝える
楽曲の間奏部分にキャラクターの背景や目標をセリフとして挿入されており、戦闘以外で重た~いシナリオを読まなくてもキャラクターや世界観に感情移入しやすい仕組みとして「楽曲+間奏にセリフ」のコンテンツをいつでもホームから気軽に摂取できるようになっています(歌詞タップでその箇所に一瞬で飛べる機能でスピード感も担保)
楽曲を通じた長期的な課金導線
楽曲を起点にして短い時間でキャラ愛を持てるようになる。
+ゲーム内BGMも獲得!でニーズも広くとっている。
放置ゲーながら他コンテンツへの派生をしっかり狙う姿勢を構えています。
今後の音楽系ソシャゲは、
楽曲・世界観・課金導線の一本化がトレンド?
音ゲーも音楽コンテンツの効率的な活用と世界観の浸透の両立を目指すためにはどうすればいいのか。今から新規で音ゲーを作るなら以下のような方向性が考えられます。
楽曲と課金の直接的な結びつき
楽曲を課金対象とする新しいモデルを導入。
既存曲のRemix楽曲が付いてくるキャラを導入する(安直)
新曲付きのキャラを実装する
ウルトラ裏ハードを解禁するのに段位戦のクリアと課金が必要楽曲を起点としたシナリオ愛着形成 楽曲を解放することでキャラクターの背景や物語をより深く知る仕組みを構築。『学マス』や『メメントモリ』のような例が参考になる。
課金誘導を明確にした設計 ランキングやスコアアタック依存を減らし、楽曲そのものや、それに付随するコンテンツ(キャラクター、スキン、ストーリー)を購入したくなる動線を整備。
それでもつきまとう、楽曲販売とゲーム実装のジレンマ
音ゲーや楽曲を主軸に展開するソシャゲにおいて、「楽曲サブスク解禁」と「ゲーム内実装」をタイミングよく行うことは、運営側にとって大きな課題となっています。その背景には、収益モデルと制作体制の複雑性が絡んでいます。楽曲サブスク解禁とゲーム実装をスムーズに進めるには、楽曲制作からリリースまでを一本化した体制が求められます。
複数企業間での連携の難しさ
2社以上が関与する場合、各社の利益や方針が異なるため、サブスク解禁やリリースのタイミングを調整するのが難しくなります。このため、迅速な対応や市場ニーズへの柔軟な適応が遅れるリスクがあります。制作チームの一貫性
楽曲制作からゲーム実装、さらにはマーケティング戦略までを一貫して担う体制が整っていれば、これらの問題を回避しやすくなります。たとえば、楽曲を制作したチームが直接ゲーム実装にも関与することで、リリースまでのスピード感が向上します。インハウス制作の推進
外部企業に頼らず、社内で楽曲制作からゲーム実装まで完結できる体制を整える。収益モデルの再構築
サブスク解禁による音楽単体の収益減を考慮せず、
作品全体に与える影響や収益を広く図れるような売上計算を模索する。
(じゃないと上層部が楽曲チームがないがしろにして内部崩壊を起こす可能性がある)関係者間の調整の効率化
複数企業が関与する場合でも、スムーズな意思決定が可能な体制を築くことが重要です。契約や利益分配を簡素化し、迅速な対応を可能にする仕組みが求められます。
これらをクリアできたチームは、楽曲コンテンツを活かしたソシャゲ運営のスピード感を高め、市場競争力を維持・向上させることができる気がする。
おわりに
音ゲー型ソシャゲは、楽曲という強力な資産を持ちながら、それを最大限活用した収益化モデルにはまだ改善の余地があります。楽曲が単なる付加価値ではなく、世界観やキャラクター愛を深める起点となり、それが課金行動に直結する形を目指すべきです。『学マス』や『メメントモリ』に見られるような新しい試みが今後のスタンダードとなり、楽曲を活用した収益化の新たな可能性を切り開いていく未来の作品たちを楽しみにしています。