【ショートショート】複雑な当選
大金持ちになったら、
一切働かず、晴耕雨読の生活をしたいと昔から思っていた。
そんなある日、能登半島地震の被災地支援に全額寄付するというネット宝くじがあることを知った。
寄付と割り切れば期待値が低くても気分が良いと思い、100万円分買うことにした。
当選発表までの間は気分よく過ごすことができた。
何せ100万円寄付したのだから。
当選結果を確認すると、どう見ても「一等」である。
まさか、人生が変わったと思い、喜びに膝が震えた。
当選金額を確認すると「1000万円」だった。
10倍になったのだから僥倖である。
だが、1000万円では数年間は豊かな生活はできるだろうが一生という訳にはいかない。
何より、一度人生が変わったと本気で思ってしまった気持ちを回収することは難しかった。
寄付した上に得したのだから最高の結果なのだが、気分的には損したような複雑な感情を覚えた。
先に当選金額くらいは調べるべきだったのだ。
明日からも仕事にいくことだろう。