【毎週ショートショートnote】長距離恋愛販売中

２５年も前の話だ。
当時、4か月付き合った彼女と別れた。
ケンカではない。
就活のため自分を追い込んだのだ。
彼女はきっと傷ついたと思う。

半年後、内定を貰い彼女に連絡した。
またやり直したい、
という訳ではなく友達に会うような軽い気持ちだった。
今思うと「何と身勝手な」と思う。
彼女の部屋に行き2時間ほど近況を話し、
それっきり会っていない。

風の噂で実家に帰った、と聞いた。
「向こうで幸せに暮らしていてほしい」
と勝手ながら時々思い出す。

＊

先日、本屋に立ち寄った。

「長距離恋愛販売中」

という本が大量に平積みされていた。
見開き完結の話が収録されていた。
あるページを開いた瞬間、
私は冷や汗をかいた。

彼女と私の名前。

「あの時、半年待ちました。
会いに来てくれたから、
「やり直そう」
って言ってくれると思うでしょう。
普通。
自分だけ幸せになってるみたいだね。」

そして、二次元バーコード。

私はその本を戻して、
本屋から出た。

何だか全てが上の空で気が気じゃなかった。

(415文字)

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