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夢日記「月の女王と血の勇者」

その人は、また、私の前にやってきて、ひざまずいた。
彼の率いる小隊は、ボロボロになりながら、戦地から戻ったばかりだ。

「帰りました我が女王よ」

今回も多数の犠牲者を出しながらの帰還だ。

「こちらをお受け取りください」

貢物を受け取りながら、だが、私の心は寸分も動かなかった。
彼のことは何とも思っていない。
しかし、彼の方は違うようだった。

数年前、駆け出しの傭兵だった彼に大臣の家族が助けられ報奨を与えた折に、どのような人が王としてふさわしいかと尋ねられて、いたずら心がわいて、「私の横に座る王になる男は、この世を統べる皇帝だけだ」と答えた。

その後、彼は辺境で蛮族と戦いながら軍功をあげ、小隊の指揮官になり、辺境を脅かす蛮族と敵対する部族も仲間に引き入れて、敵の侵略を何度も食い止めた。

蛮族の将軍

正規軍の中には、元傭兵の彼のことをよく思わないものもいたから、彼の部隊は死線に送られ続け、ボロボロになりながらも、なんとか生き残り続けた。

正規軍には死線部隊と恐れられ、加わるものおらず、いつしか、彼の部隊には、死線を超えた強者たちと、事情を知らないルーキーたち、辺境の部族の寄せ集めが集まり、中隊規模になっていた。

今度の遠征では、蛮族の将を捕虜として連行してきた。

今日は、その彼をねぎらうための謁見式だ。

巨大な蛮族の将軍は厳重に縛られ、何人もの兵士に鎖を持たれ、巨大な檻に入れられていた。
彼は、何の躊躇もなく、巨大な檻に入り、蛮族の鎖を解き放ち、巨大なバトルアックスを渡して号令をかけた。

「つわものよ、名誉の死をもってオレの糧となれ!」

止める間もなく、巨大な蛮族の将軍の強烈な一撃が勇者を切り裂いた刹那、血しぶきとともに重い物が飛んだ。
将軍の首であった。

「この者の命を女王にささげます」

大量の血を浴びた彼を見て、わずかに心が揺らいだ。
この後、彼は「血の勇者」と呼ばれることになる。

そして、血の勇者の血の粛清が始まった。

蛮族を大きな川の向こうまで追いやり、蛮族の退路をたつことで誘導し、隣国と蛮族の紛争を起こすと、すぐさま隣国と同盟を組み、蛮族を無力化した。

敵国の王たち

蛮族の脅威がなくなると、国境を接する長年の敵国に対峙し、内部の反乱分子を扇動して、王家を捕虜として連行、またしても、私の前で、祖先の仇である敵国の王一家を処刑する。

こうして、政治軍事両面から周囲の国を攻め滅ぼし、5年も経たぬうちに、国境線は広がり、世界の王族の半分が減るほどの血が流され、傀儡の支配する属国や植民地を築いていった。

その冷徹な知略と苛烈な軍略は、尊敬ではなく恐怖を王国内外に与え、血の勇者は、やがて血の悪魔とも呼ばれ始めた。

月の女王と血の勇者

しかし、彼は、どんなに大きな成果を挙げても、どんな地位も報酬ものぞまなかった。

ただ、何度も何人も私の前で首をはね、私だけを見て、私の言葉を待った。
その頃には、自分の中に複雑な感情があると分かっていた。

恐怖と愛。

彼を止めなければいけない。
だが、彼のいくすえを隣で見てみたい。

彼の部隊は増えていき、ただ、ひたすら、血の勇者として、私の大帝国を作るために暗躍し戦地を駆け巡った。

私は本当に止めようとした。

「もういい、あなたが王に相応しい。望むものは全部くれてやる。だから、もう、よせ。もう、十分だ」

本当に叫びたかったのは、「私が欲しければくれてやる」、もしくは、「おまえを殺させるな愛している」だったのだが、言わなかったし、言えなかった。もし、言ったとしても、手遅れだっただろう。

そして、私は、何度目かの謁見の場で、彼の心臓をこの手で刺した。
彼が抵抗しないのは、分かっていた。彼も止めて欲しかったのだ。

「ありがとう」

私のかけた言葉が呪いとなり、彼の才能を、無垢な愛を、散らしてしまった責任を取らなければならない。

そうして、私は自害した。
大きく光る月光の下で。。。

かぐや姫

そうして、俺は目覚めた。
久しぶりの夢だったから、起きてすぐメモを取ったが、書きはじめるまでに大分かかった。書いたら記憶がよみがえり、AIに描かせる絵のイメージがキーを打つ手を速めた。

もうずいぶん、朝が冷え込むようになった。
かぐや姫もこんな気分だったんだろうか。月光は人を狂わせる。

月見バーガーでも食べようか。。。

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