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文学フリマ 姫と祭りの抜粋
「ねぇ、ねぇ。おゆみ。金魚すくいしない?」
おちかがはりたま姫を誘った。おちかは見るからに活発そうで、身のこなしも軽かった。
「おちかは運動が得意のようね」
「ええ。きっとおゆみよりも上手よ。凧あげも相撲も男の子より強かった。かけっこも速いし、木登りもよくやった。手先だって器用なんだから。金魚すくいで、だれが一番たくさん金魚をすくえるか、勝負しましょ」
おちかは顎をしゃくってみせた。
「負けないわよ。私だって〈ゴンタ駒〉と呼ばれた女よ。市中の人、いや、この国の中でも、指折りの女猛者よ。絶対に三人には負けないからね」
はりたま姫も黙っていられない。四人は連れ立って、斜め向こうにある露店に移動した。
その露店には、金色の大きなたらい桶が置いてあった。桶を囲むようにして、子どもたちがしゃがんでいる。上から覗くと、桶の中で赤や黒を帯びた金魚がたくさん泳いでいた。
「パスポートを見せてください」
警官がパスポートの提示を要求する。私以外の全員がパスポートを提示した。
「あれ? パスポートもないわ」
「どうしました? パスポート、ないんですか」
「ええ、ちょっと。昨日まではあったんです」
「名前は?」
「有村美月です」
「ちょっと警察署まで来てください」
私だけがパトカーに乗せられ、異国の警察署まで連行された。旅行中に予期せぬトラブルに巻き込まれ、結果として、私は警察に連れて行かれた。
パスポートも身分証も持たない私は、警察署でみっちりとしぼられた。
いかがでしたか?
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