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吉原を救った男、蔦屋重三郎に学ぶビジネスの真髄
2025年NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」。
先日、第1話から第3話までを一気見しました。
横浜流星君、かっこいいですね~(^^♪
それはともかく、横浜流星演じる蔦屋重三郎、
彼の経営手法には現代のビジネスにも通じる深い知恵が詰まっているなぁと、感動させられました。
「なぜ」から始まるビジネス戦略
現代のビジネス理論の一つに「ゴールデンサークル理論」がありますよね。この理論は、「なぜ(WHY)」「どのように(HOW)」「何を(WHAT)」という3つの要素のうち、「なぜ」を最も重視します。
蔦屋重三郎の行動原理も、まさにこの「なぜ」から始まっていました。
吉原の町で育った重三郎は、女郎たちの厳しい現実を目の当たりにします。
客足が遠のいた吉原では、多くの女郎たちが仕事にあぶれ、食事にも事欠く状況でした。
この惨状を見過ごせなかった重三郎は、
「吉原の賑わいを取り戻し、そこに暮らす人々の生活を守りたい」
という強い使命感を抱きます。
当初、重三郎は「岡場所」や「宿場」での不法営業が原因だと考え、
奉行所に取り締まりを訴えました。
しかし、幕府の重鎮・田沼意次から
「吉原に客が来ないのは、人を呼ぶ工夫が足りないからではないか」
と諭されます。
この言葉は重三郎に大きな気づきをもたらしました。
他力本願だった自分を反省し、自らができることを必死で考え始めたのです。
顧客ニーズを捉えた革新的な商品開発
「吉原細見」の挑戦
重三郎が最初に手がけたのが「吉原細見」でした。
これは吉原の遊郭の情報や女郎の紹介をするガイドブック。
単なるガイドブックでは「岡場所」や「宿場」との差別化ができないと考えたのでしょう。
当時の名コピーライター平賀源内に目を着け、
「顧客レビュー」を書いてもらって、ガイドブック冒頭に掲載したのです。
現代の「インフルエンサーマーケティング」に通じますよね(^_-)-☆
さらに、潰れた店や現存しない女郎を載せたままだった内容を更新し、
最新の情報を提供しました。
しかし、この「吉原細見」だけでは、期待したほどの効果は得られませんでした。
それでも重三郎は諦めることなく、次の一手を考え続けます。
「一目千本」の革新性
そして生まれたのが「一目千本」という画期的な企画でした。
この作品には、3つの革新的な要素が含まれていました。
1つ目は、見込客への伝え方です。
単に女郎たちの似顔絵を描くだけでは面白みに欠けると考えた重三郎は、
120人の女郎たちを花に見立てて描くという斬新なアイデアを実行します。
ツンツンしている亀菊は「ワサビ」、
馴染み客が次々と鬼籍に入るという常磐木は「トリカブト」、
無口な勝山は「クチナシ」など、
それぞれの花の特徴を通じて女郎たちの個性や魅力を表現することで、
見る人の想像力を掻き立て、興味を引くことに成功したのです。
2つ目は、見込客の誘導方法です。
重三郎は「一目千本」を、吉原の常連客だけが入手できる特別な作品として位置づけました。
つまり、この魅力的な作品を手に入れたい人は、
実際に吉原に足を運び、常連になる必要があったのです。
これにより、新規顧客の開拓だけでなく、リピーターの確保にも成功しました。
3つ目は、資金調達方法です。
重三郎は「入銀本」という、現代のクラウドファンディングに通じる革新的な出版方式を採用しました。
本に名前を載せたい女郎たちから資金を募り、その資金で本を制作するという仕組みです。
この方式には以下のような利点がありました:
制作費用を事前に確保することでリスクを軽減
女郎たち自身がプロモーターとなり、宣伝効果を高める
女郎たちの参加意識を高め、プロジェクトの一体感を創出
これら3つの革新的な要素が相乗効果を生み、「一目千本」は大きな成功を収めます。
そして、ついに吉原に賑わいを取り戻すことに成功したのです。
ビジョンを共有し、仲間を巻き込む力
重三郎の成功の最大の要因は、
私利私欲ではなく、吉原の町全体の発展を考えた経営理念を持っていたことでした。
自分の商売の成功だけでなく、
女郎たちの生活向上や吉原の文化的価値の向上を真摯に考える姿勢が、
多くの人々の共感を呼びました。
その結果、女郎たちは積極的に「一目千本」のプロジェクトに参加し、
絵師たちも最高の作品を描こうと努力。
周囲の人々の協力を得ながら、大きなプロジェクトを成功に導いたのです。
このように、蔦屋重三郎の経営手法には、現代のビジネスにも通じる深い知恵が詰まっています。
明確な理念、商品の革新性、そして資金調達の工夫。
これらの要素は、250年の時を超えて、現代のビジネスパーソンにも大きな示唆を与えてくれるのではないでしょうか。