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習慣化するには脳を騙せ!
「自分史を書く」という壮大な目標設定
「今年は自分史を書こう!」
そう決意した年初から2週間、
私の部屋の机の上には、真っ白なルーズリーフが積み重なったまま。
最初、毎日1時間を執筆に充てるつもりでしたが、
3日坊主どころか、ただの1日たりとも実行できず、
ルーズリーフの束を見つめてはストレスが溜まる日々。
「こんなはずじゃなかったのに...」
年末年始の高揚感の中で立てた目標は、
現実の前に早くも崩れ去ろうとしていました。
なぜ習慣化が難しいのか?
思い悩んだ末、
私は自分史を書くことを勧めてくれたメンターに相談しました。
「自分史を書くって目標を立てたんです。でも、全然進まなくて...」
メンターは、「それ、あるあるです」と驚く様子もなく続けました。
「習慣化できない原因は、最初の一歩が大きすぎることにあります」
例えば、「健康のために毎日体温、体重、血圧を記録する」という目標。
一見、理にかなった目標に思えますが、
これは人間の脳にとって大きすぎる変化なのだとのこと。
この場合は、「寝る前に体温計を枕元に置く」というところから始めるくらいでよいそうです。
測る必要すらありません。ただ置くだけでいいのです。
「人間の脳には、とても面白い特徴があるんです」
そこから聞かされた話は、
私の「目標達成」に対する考え方を根底から覆すものでした。
100万年の進化が教えてくれること
私たちの脳には「命を長く保つ」という重要な使命があります。
そのために、脳は「現状維持」を最優先するのだそう。
これには深い理由があります。
人類は100万年以上もの間、
新しいことへの挑戦が即、生命の危機に直結する環境で生きてきました。
その記憶は、現代を生きる私たちのDNAにも深く刻み込まれているのです。
「でも、それって現代の日本では当てはまらないですよね?」
私がそう問いかけると、メンターは続けました。
「その通り。でも、私たちの脳は未だにアップデートされていないんです」
脳を味方につける極小の一歩
では、どうすればいいのでしょうか?
答えは意外にシンプル。
脳が気づかないほど小さな一歩から始めることです。
メンターは、私の「自分史を書く」という目標について、
具体的なアドバイスをくれました。
「まずは、毎日決まった時間にノートを開くところから始めてみましょう」
「え?書かなくていいんですか?」
「はい、ただノートを開くだけでいいんです」
最初は半信半疑でした。
でも、その理由を聞いて納得せざるを得ませんでした。
私たちの脳は、大きな変化を感知すると警戒モードに入り、
様々な「できない理由」を作り出すのだそう。
でも、変化が小さすぎると、脳は警戒しないのです。
そして、この「気づかれないほどの小さな変化」を積み重ねることで、
新しい基準値が徐々に形成されていきます。
私の「極小の一歩」作戦
メンターのアドバイスに従い、
私は以下のような「スーパー・スモール・ステップ」を設定しました。
1日目:朝起きたら暖かいココアを淹れてテーブルに着く
2日目:テーブルの上に、ルーズリーフの束とペンを置く
3日目:ココアを飲みながら、ルーズリーフに向かい、ペンを握る
驚いたことに、このアプローチは効果てきめんでした。
「書く」行為とは全く関係ない、眠気覚ましにココアを飲むだけ、
という超低いハードルを設定したおかげで、
「とりあえず、朝、少し早めに起きてやってみよう」という気持ちになれたのです。
そして、今朝は、幼少の頃の出来事を数ページほど書き留めることができました。
「失敗」の定義を変える
このプロセスで、もう一つ大切なことを学びました。
例えば、一行も書くことができなかった日。
以前の私なら「また失敗した...」と落ち込んでいたはずです。
でも、今は違います。
「あ、ということは今のハードルが少し高かったんだな」
そう捉えられるようになりました。
その時は、さらにハードルを下げて再チャレンジすればいいのです。
人生を変えるのは、大きな決断ではなく小さな習慣
人生を変えるのは、劇的な決断や完璧な計画ではありません。
気づかないほど小さな、でも確実な一歩の積み重ねなのです。
今、私の自分史は最初の一歩を踏み出しました。
完成までの道のりはまだ長いかもしれません。
でも、焦る必要はないと知っています。
なぜなら、何の効果もなさそうな小さな一歩を積み重ねることこそが、
確実な変化への近道だと、身をもって学んだからです。