![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/142449266/rectangle_large_type_2_9d285e5361bf5a0140a523788d6bbf74.jpeg?width=1200)
本によってつながれた私たち①
きっかけは図書館だった
高校一年生の夏休み、
私はそれまでの人生避けていた学校の図書館に行った。
小学校も中学校も図書館はあったけど、
授業で使用する以外に足を運んだことは全くと言っていいほどなかった。
本って聞くとムズカシイ感じがしたから避けてきた。
そんな私が、図書館に行ったのには理由があった。
そのころ私は恋をしていた。ポエムが読みたかった。
ポエムを読みながらあの人のことを考えて、この長い夏が終わってしまえばいいのにと思いたくてポエムを求めて図書館へ。
図書館には冷房が効いていて涼しかった。
砂漠の中のオアシスのようだった。
入るとすぐ近くに、受付のカウンターがあった。
彼女はたくさんの本を両手に抱えてカウンターの前にいた。
同じクラスのヒメカちゃん。
私より身長が高くて肌が白くて持ち物のセンスがいい子。
彼女について知っていることはそのくらいだった。
軽く挨拶をして、彼女は図書館を後にした。
私たちの物語のはじまりは、図書館から始まったのだ。
はじめて手にした本
そこからは、特に何かがあったわけでもなく私は相変わらず恋を募らせながら長い夏休みを過ごした。
夏休みが明けて、私は初めてちゃんと本を読んだ。
湊かなえの「告白」を読んで、読書の魅力に触れ始めた。
その期間、図書館で何度かヒメカちゃんを見かけた。
いつもたくさんの本を両手に抱えて、目を輝かせながら本棚を眺める彼女。
彼女の目には、この世界はどのように映っているのだろう。
そうだ今度、おすすめの本を聞いてみよう。
あの子が目にしている世界を私も見てみたくなったんだ。
麦の海に沈む果実
10月ごろ、私はヒメカちゃんにおすすめの本を聞いた。
恩田陸の「麦の海に沈む果実」をおすすめしてくれた。
さっそく読んでみて、私はこの作品の世界観に魅せられた。
それとともに、彼女のことを少し知れた気がした。
私たちはそれから一緒に図書館へ行ったり、本について語り合った。
クラスでも、私とヒメカちゃんそして共通の友達と毎日充実した日々を送っていた。
三年ほどたった今思うと、あの頃の私は幸せだった。
同じころに、予備校に通い始めてそんな日々の裏で私は将来というものに苦しめられていた。
けれど、その苦しみと楽しさの二つが入り混じった日々はもう経験することはないと思うと、寂しくもある。
続く