多国籍な職場の仲間たち
多国籍な職場に身を置いて働く醍醐味の一つは、様々な国籍・バックグラウンドの人々と出会い、期間の長短はあれど一緒に仕事できることだろう。
私の職場でも、取引先でも、これまでの人生で出会ってきた以上に多様なルーツを持った人々がいる。
生まれ育った国・地域や人種によって十把一絡げにすることはできないが、それぞれの地域の人々が持つ特徴のようなものが見えてきたので、記録方々、書いておこう。
なお、これらは私の行動範囲において部分的に観測した実体験からの主観で、ステレオタイプに影響されているものもあれば、サンプル数が少なくかつ個人の性格や特性によるものもあることは注記しておきたい。
アジア圏
東アジア(韓国・中華圏)・東南アジア
欧米出身者が多いチームで働いていると、東アジア系の人々というだけで親近感が湧く。
なかでも、韓国の人々は、ハイコンテクスト文化や言語、ちょっとした所作が似ている上に、年長者を敬う姿勢にも共通点があり、私としては「我らアジアの仲間」という意識を抱いている。あと、海外で会う韓国系の人々は、驚くほど優秀で秀才系が多い。そしてやたら英語がうまい。
中国・中華系の人々は、とにかく逞しい、の一言ではないだろうか。声が大きいし、中華系の強いアクセントであってもパブリックの場での発言を臆さない(褒めてる)。中国本土はもとより、台湾・香港・マレーシア・シンガポールあたりのネットワーク構築の広さも強みだ。向上心が高く、決断と行動が素早くて、変化を厭わない。
南西アジア
なんといってもインド系の人々の逞しさは、中華系と並んで目を見張る。インドのルーツながら海外で生まれ育った人と、インド出身で海外に出てきた人と同等くらいいるが、どちらも往々にして、良い意味での野心に溢れている。
インド系英語は最初は聞き取りに苦戦するが、不思議と慣れてくるもので、ある日突然理解できるようになる。インド系2人で会話しているのを聞くと、両方とも常に喋り続けていて、キャッチボールになっていないのに会話が成立している。どうなってるんだろう。
パキスタン出身の同僚もいる。これまた恐ろしいほど優秀で、たまげるほど喋る。息継ぎしてるのかわからないほど高速で喋り続ける。私なら1言って、あとの4は阿吽の呼吸でよろしく、と済ませそうなところを、1から100まで言語化する上に、1を伝えるにも5通りくらいの表現方法で言うものだから、感嘆してしまう。ただし、一度話し出すと長い。
中東
私の職場では、日本と同じくらいマイノリティに近いかもしれないが、イスラム系・ユダヤ系それぞれがいる。
私が特に仲良くなった、ヨルダン出身の同僚。渡英が決まる前から業務上で関わりがあり、お互いの感性やリズムが合った大切な友人だ。祖国での女性がキャリアを築くことの難しさ、イスラム教の食習慣や生活なども教えてくれた。戦争が始まったとき、パレスチナにルーツを持つ彼女と抱きしめ合って涙した。
ほどなくして、組織改革なのか個人の決断なのか深くは聞けぬまま、彼女は会社を去りイギリスからも離れてしまった。どこかでまた、私達の人生が交差する日があると信じている。
ヨーロッパ
東・中央ヨーロッパ
ポーランド、ハンガリー、ブルガリアの人々は、個人的な印象では概して真面目で勤勉。が、仲良くなると、中身はぶっ飛んでる系(褒めてる)のタイプが結構な割合でいる。趣味が高じて一芸に秀でた人も。彼らが英語を話すときの独特のアクセントが私は好き。
北・西ヨーロッパ
北欧系の人々もおしなべて真面目で、しっかり仕事をこなす人が多い印象。ただし、休暇をがっつり2〜3週間連続で取る(特に夏)ので、予定を把握しておかないと仕事での連携に影響が出る。そして経験的に、心根が優しい人が多い。余談だが、彼らは平均身長が高いので、対面で会話するのは物理的に難しい(私の首が折れる)。オンライン会議でやり取りするのがちょうどよい。
ドイツの人々は、前評判通り(?)しっかり仕事をするタイプが多いし、メールも素早く取りこぼさずに用件を返してくれる。一方、厳格かと思いきや、割と柔軟でユーモアに溢れている。オランダの人々と並んで、抜群に英語がうまい。
フランスの人々は、個人的な印象では、理論重視で偏屈な人が多い(褒めてる)。納得するまで対話を求められ続ける。話し出したら止まらないが、それも愛嬌。母国愛が強い。私の同僚の一人は、出張時にいつもフランス国旗がワンポイントで入ったおしゃれな格好で現れる。
イタリアの人々のイタリア愛もすごい。挨拶はいつも「Ciao!」を徹底していて、崩さない。普段からおしゃれな装いをしている人が多いのは決して気のせいではないと思うが、出張やイベントの際は輪をかけて派手になる。ある機会に、イタリア人の女性同僚3人が3人とも、日本では芸能人か政治家しか着ないようなカラフルな上下スーツ(しかも高級ブランド)を着て現れたときは、我が目を疑った。なお、英語のアクセントはヨーロッパの中でも群を抜いて強く、イギリス人同僚の中でもそれがネタにされている。
スペインの人々は、とにかく陽気で愛らしい。イタリアの次にアクセントが強くて独特だが、日本人としては親近感が湧く。7〜9月のホリデーシーズンには、順繰りで数週間の休暇を取るので、業務で連携するときはかなり前もって合意しておく必要がある。
その他ヨーロッパ
トルコやギリシャの人々は、意外と言ったら失礼と認識しつつ、仕事人が多いように思う。タスクを完遂するために、労力を惜しまない。のんびりしていて、おいおい大丈夫かいと心配していたら、最後には合わせてくる。人情深く、それぞれ見どころ盛りだくさんの国土なので、旅行相談をすると本気でアドバイスをしてくれる。
英語圏(英国・北米・豪州・南アフリカ)
イギリスとアメリカは別の機会に取っておきたい。なぜなら、職場でのマジョリティを占める彼らを、大雑把にでもくくるのは難しいからだ。それぞれの国の中でも地域特性があるし、イギリス対アメリカで張り合っている見えないバリアも影響している。
カナダ・オーストラリアはサンプル数が少ないが、私の周りの人々は豪快な性格で、迫力のある体格をしている。彼らに限ったことではないが、わざわざ国を出てイギリスに来てまでキャリアを構築しているので、並々ならぬ開拓心だ。カナダ英語は感動するほどわかりやすい。オーストラリア英語は母音がなまったるくて慣れるまで苦戦する。
南アフリカの同僚は、鷹揚なタイプだ。最初に出会ったとき、その独特な英語のアクセントから出身地がわからずにいたが、南アフリカと聞いてなるほど、と思った。いつか訪れてみたいが、物理距離的にも、心理距離的にもどっこいしょと気合を入れないと行けない地の一つである。
その他地域(アフリカ・中南米)
中米のメンバーとはゆるく連携することがあるが、南米やアフリカの国々の人々とはなかなか関わる機会がないので少し残念である。上記に連ねたエリアの人々とは、これまた異なる特性や仕事の進め方があるだろう。いつか機会が訪れたら、観察しつつ違いを楽しみたい。
それぞれのエピソードにまつわる写真も挿し込もうと思っていたけど、力尽きた。
まだまだ表面的な印象なので、より深堀りができて歴史や文化背景と紐づけて理解が進んだら、新たに書こうと思う。たぶん。