中国で高鉄が運休したらどうするか
突然の運休
北海道から上海の浦東空港に到着した私は、バスで虹橋空港に移動。第二ターミナルに直結したホテルに一泊した。
空港と高鉄駅も直結しているので、ホテルを出て徒歩20分ぐらいで到着するので、けっこう余裕なはずだった。
が、少し早めに起きたにも関わらず、私はあるメッセージに驚愕する。
運休?
つまり、私が乗るはずの高鉄は動かない。
こんなことは初めてでどうしていいかわからない。
とりあえず乗車予定の高鉄はキャンセル。
私の都合ではないのになぜか300円取られる……。
で、予約取りなおそうとしたら……ない!!!!!!
同じ時間帯はもちろん夜まで同じ路線の高鉄が売り切れている!
安い席から高い席までが!!!!
私は焦った。
上海にもう一泊なんて悠長なことは言ってられない。
金銭的なことはもちろんだが、一番の理由は、入国24時間以内に到着予定の町の警察まで行って、居留許可申請をしなければならないってこと。
もう、一人でどうしていいかわからない。
こんな時こそ万能朋友圈(中国版LINEのモーメンツ)!
私は学生たちに事情を説明。どうしたらいいのか!と訴える。
すると、卒業生も含めて何人かが連絡をくれて方法を考えてくれた。
乗り換え提案多かったが、それだと夜になってしまう。
そこで、私がとった方法は补票(乗り越し券?)だ。
目的地の前の駅までの切符を買って、そのまま降りずに乗りっぱなしで目的地まで行くという強行手段。
これはわりとよくある方法らしく、誰も来なければそのまま座ったままでもいいという、いわば公認のキセルだ。
まあ、そもそも高鉄の指定席って日本じゃ考えられないけど、自分の席に知らない人が座っていてもめずらしくない。
私も以前知らない人が座っていて驚いたが、
私「そこ私の席です」
座ってた人「俺も自分の席に誰かいてさ」
隣の人「ここに座りなよ」(退ける)
座ってた人「よかったね」
なんて謎の出来事があった。
まあ、みんなどこかの席に座れるからってことで、誰かいたら空いてる席に移動、みんな指定席だから、どこかの席には必ず座れるって考えなんだなぁと思ってた。
でもこの乗り越しシステムがあるならば、結局席なんて余らないんじゃないかと思ってしまうが、それでも別に「気にしなーい」なんだろうな。
何はともあれ、私はこの乗り越しシステムでチケットを取ろうとした。
その前に一応予約した夜の乗り換えはキャンセルした。
しかし、乗り越しするための途中駅までのチケットがみつからない。
これは一人の学生が提案した案だったが、私のアプリでは同じ路線が見つからず、しかたなく学生に予約してチケットを取ってもらった。
このように、現地の中国人に自分の情報を伝えて代わりに取ってもらうこともできる。お金はその人払いになるが。この際仕方なく借金。
※ちなみにすべてがキャッシュレスで携帯で簡単にお金のやりとりをする中国では日本よりも借金のハードルが低い。
何とか無事にチケットは予約できた。
時間帯ももともと予約していた時間とほとんど変わらない。
少し安堵した……が、ここからがたいへんな道のりだった。
中国の高鉄駅のトイレで転倒
空港に直結しているホテルの出口から出るとすぐ荷物検査。
とにかくどこかに入るたびに荷物検査。
日本でも空港でよくやるやつ。荷物も携帯も預けて機械を通し、自分も全身チェックされる。
さらに高鉄に着いたところで、また荷物検査。
高鉄の駅に着いたらまずどこから入るかってわからなければ、荷物検査やってるところに行けばいい。
私はけっこうな大荷物。
虹橋の高鉄駅はこんな感じの電子掲示板がずらっと並んでいる。
乗り場の待合まで来たが、どうやらまだ早いようで、電子掲示板には表示されない。
この時、私は一応トイレに行っておこうかと思い立つ。
(行かなければよかった……)
空港到着した時は、飛行機で隣に座った上海女子と着陸後一緒にいたので、お互いの荷物を見ながら交代でトイレに行ったから問題なかった。
だが、私はこの時は一人。
中国人はその辺に荷物平気で放置するけど、私はなんとなく心配なのでトイレの中まで大荷物で入っていった。
すると、トイレにはなぞのマットが敷いてある。
その段差で私は前方にすっころび、上着、パソコンが床に散らばる。
最悪だ!!!!!
というか、なんで無駄に段差作るの?意味あるの?
色んなところが旅行者に優しくない作り。車椅子とかもまず無理だろう。
バリアフリーなんて観念皆無か!
荷物は自分が入る個室のドアの前に置いておいても何ともない。
以前空港でも中国人わりと自分の荷物から目を放しがちとは思った。普通にその辺に放置してどっか行ったりする。そして誰も気にしない。
こんなことならいっそのことトイレの入り口に荷物置いてくりゃよかった。
そもそもこんな暑いのになんで私はダウンジャケット? てか着てる人までいる謎。北海道で10月とか11月にダウンジャケット着てるのは大抵中国の観光客だけど、何なの?寒がりなの?
北海道生まれの私は、目的地は寒いからたくさん着こんできてと言われたことに「何言ってんだ!」と思い始めていた。
そして、そろそろ時間になり、私は掲示板の前のところに並んだ。
外国人は必ず人がいる改札へ。
そこでパスポートを見せて、携帯のチケットの認証画面を読み取らせる。
が、なぜかまだだからよけろと横に追いやられる。
どうやらここでも遅延が発生。
掲示板を見ながら、いつ改札通されるのかをひたすら待つ。一応19分遅延と表示されていたけど、なんかこの時間も微妙に変動した。
今私は本当に自分の乗る高鉄を待ってるんだろうか?
もしかして行っちゃった?
表示すら信頼できん思いで、近くの人に「今何待ってるの?」と確認。
これ私よくやる。とりあえず周りの人に何待ってるのか聞く。同じだったらとりあえずまだ待っててもいいと判断する。
で、ついに改札を通った。
そして高鉄に乗った。
なぜか一番乗り?でほかの人がほとんどいない。
乗っていいのか不安になり、清掃の人に聞いたら、「あたしに聞かないでよ!」みたいにキレられる。
従業員がこの態度って日本だとあり得ないけど、トイレで転んだ時もトイレにいた従業員は「ギャー!」と転ぶ私にあ然としてたし、日本の清掃バイトのおばさんとかの民度の高さは世界基準で稀有なものなんじゃないかとほんと思う。
ちなみにこのキレてる従業員、ほかの中国人にも「ちょっとじゃま!」とか偉そうだったし、外人差別ってわけでもなく、単にこういう人なんだろう。
で、乗客の女の人に聞いたら、この人は親切に教えてくれた。
高鉄に乗れるような人は基本ちゃんとした人が多い。
とりあえず、無事席にも座れた。
そして出発。
トイレで転ぶアクシデントはあったものの、高鉄に乗れたのだから、あとは降りるだけだ。
だが、さらにここからも苦難の道だった。
後部車両はもうカオス
乗り越しチケットは、乗務員がチケット確認に来たときに買えばいいと言われていたが、一向に来る気配がない。
そこで私は乗務員を探しに行った。後部車両あたりにいるという。
そして信じられないものを目にする。
なんと長蛇の列なのだ!
私のように乗り越しチケットを求める人が多すぎる!
列に並んでみたものの、一向に進む気配がない。
私は置いてきた荷物(パソコン)が気になり取りに行った。
そして並び直すもさっきとほとんど変わらない状態。
後部車両にはお弁当を売っている場所があり、通路は狭いし、乗り込んでくる人、お弁当を買う人、乗り越しチケットの清算の人で大混乱。
私はパソコンと手荷物を抱えながら、すれちがう人と押し合いへし合いでじっと耐えていた。
それでも列は進まない。
すると、救世主のように私のすぐ近くに乗務員が現れる。
どうやらその辺一帯の人の清算を携帯でやってくれるらしい。
しかし私は携帯決済ができない。現金しかない。
私は中国語で叫んだ。
「私、外国人! 現金しかないよ! どうしたらいいんだぁ!!!!」
するとそれまで殺到していた人たちが一瞬おとなしくなり、私に譲ってくれた。乗務員も私の話を聞いてくれた。そして現金でも受け付けてくれた。
それにしても、私も含めて、ずっと並んでいた乗客もたいへんだったが、乗務員さんんも大変だったんだろう。清算を迫る一人の女性に対して
「俺だって暇してるわけじゃない! こっちだって対応たいへんなんだよ!」
と逆ギレしてて、女の人も思わず苦笑いで「わかった、わかった」と言っていた。
この日の運休は北部の大雪のために起きたというし、乗務員さんもたいへんだったんだろうなと初めて思った。
こういうのいいと思う。日本はあくまでお客様は神さまで、従業員のたいへんさを労わない。
人間だもの。「俺だってたいへんなんだよ!」と叫びたい。そしてそれができる。そこはストレスたまらなくていいなと思った。
やっと清算を終えたが、私が買ったチケットの途中地点の駅はとっくにすぎていて、席にはもう別の人が座っていた。
上海から目的地までは三時間。もうすでに一時間以上立ちっぱなし。
清算終えた後は自分の大きな荷物の入り口付近(※高鉄では入り口横にトランクを置くスペースがあり、そこに荷物は置いておく)に立ち、パソコンや手荷物をその上に乗せて立っていた。
すると、すぐ前に座っていた男の人が「ここ座っていいよ」と言って席を譲ってくれた。ほんと中国男子は基本優しい。私はありがたく座らせてもらった。
目的地まではあと二駅ぐらいのところ。※一駅の区間は長い。
そしていよいよ到着した!!!!!
派出所の死体
やっと到着した目的地は寒かった!!!!
上海とは大違い。
そして北海道より寒い! 雪がないのになぜか痛いぐらいの寒さ。
寒いから着こんできてくださいとみんなが言っていたのを初めて納得。
駅まで迎えに来るはずの大学の黒塗りの車にドタキャンされた私だったが、私が呼びつけた通訳男子とクラスメイト男子が迎えに来てくれたので助かった。この通訳男子こそ私に乗り越しチケットのやり方を教えてくれた上に代わりにチケットを予約して清算までしてくれた神である。
対面の感動に浸る間もなく、ケンタッキーが食べたいとごねる私は時間がないとタクシーに乗せられ派出所へ。
はっきりいって山賊の町だったと言われるこの町の流しのタクシーは最悪だ。基本車内はタバコ臭い。入れ墨してるのも珍しくない。運転は荒いしがらも悪い。
だからみんな違法ではあるものの白タクを使うのだ。普通の人がバイト感覚でやってたりもするので、車は綺麗だし運転も丁寧だし、人もいい人が多いってのが私の印象。
大学のドタキャンのせいで流しのタクシー乗らなきゃないし、おなかはすいてるし、立ちっぱなしで疲れ切ってたけど、あと少しで入国24時間って時間だったので、とにかく派出所に急ぐ。
派出所に行ったらすぐ手続きかと思いきや、大学から連絡がいっていたにも関わらず待たされる。
そもそも行ったらまず警官が寝ている。おい!
もう疲れ切って椅子で寝る。
やっと手続き進むのかと思ったら、なぜか写真を撮られる。外国人にも対応してますよというPR写真らしい。
そんなのいいから早く手続きしろ!!!!!!
この時、助かったのは、こちらに住んでいる日本人の方の紹介の地元の中国人の人が迎えに来てくれたことだ。
車は綺麗だし、タバコ臭くないし、運転は丁寧だし、ありがたかった。
そして住居へ。
その夜は、迎えに来てくれた学生と附近(徒歩20分)の店でごはんを食べた。通訳男子の友だちが、わざわざ店まで案内してくれるためだけに登場。ほんと基本中国男子は優しいのである。
私の布団も通訳男子が買ってくれた。布団とマットと枕とシーツで14000円ぐらい。思ったより高いが、その日寝る布団がなかったのを管理人さんがすぐ用意してくれたのはありがたい。
まあ、そんなわけで散々な高鉄移動だったが、私は四年ぶりに戻ってきた。
空が白くて汚くて、思い出深いこの町に