口答えが優しさになる夜に。
ある夜の話。
僕は口がきけなくなる。
真っ暗闇の部屋に
目が慣れて逝くのを感じて
「寂しい」なんて感情が湧き出した。
まだ縋るしかないのだ。
この感情に。
心を撫でられるようなあたたかい君の言葉。
そんな言葉
最初から存在しないんだ。
僕が自分可愛さに捏造した言葉。
都合の良い言葉。
都合の良い武器だ。
君の言葉は僕が欲しくてたまらない言葉だ。
僕は自信のない僕を殺せなくて
君に言わせた。
善も悪も、君に言わせた。
君を言葉のあやつり人形に仕立て上げて
殺し屋になってもらいたかったの。
愛されたかった、な。
身体が揺れて視界がぐらつく。
もう少しだけね、
頑張りたかったな。
もう少し、
頑張りたかった。
ある日の夜の話。
僕は口がきけなくなったんだ。