
甦る燃やした音楽と。
イヤフォンは外さない。
ずっと流れている僕だけの音楽を
今は拒絶してるのだ。
こんな線から流れた音楽に共鳴して、
僕も疲れているのだね。
なんて、ね。
何を聴いたって
心を震わす音は
今は何もないのだけど。
僕の心を震わせてほしいよ。
風が冷たくなって
身体の体温を奪う。
季節が変わった。
わっ、と吹いた風に
冬の香りがする。
恐る恐る、
イヤフォンを外した。
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住宅街が喚いている。
あの時間に聴いた風の音も、
あの日に聴いた空の音も、
あの年月で毎日聴いた
優しい世界が聴こえてこなかった。
そうだ、
あのCDはもう
壊れたんだった。
もう戻ってこないんだった。
治すことのできないんだった。
僕だけの甘い大切な音楽はもう
ないのだ。
住宅街がまた喚く。
嗚呼、もう。
耳障りなんだ。
五月蝿い。
五月蝿いな。
五月蝿い。五月蝿い、煩い。
僕はイヤフォンをつけて耳を塞いだ。
その場に蹲って
僕を探そうとした。
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寒くて手が悴んで
動きが鈍くなっているけれど
僕は
文字にする。
こうしてなくちゃ僕を知ってもらえないのだから。
僕は独りでは生きられない。
ずっと独りでいるけれど。
「どうして僕には友達がいないんだ。」
そう泣いて布団を被っていたとき
母さんは言った。
「じゃあ、ママが友達になってあげるね。」
嘘で本当だったのを、
知っていた。
だから
五月蝿い。
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期待を込めて
またイヤフォンを外して歩き出す。
また新しいCDを
作らなくちゃいけないから。