春風が誘う哀しみ
哀しみに溺れる季節なのだろうか。
浮き足立って笑う
春風の陽気に苛立った。
「私はもう息ができないの」
優しい彼女は泣いたけれど、
「アナタは美しかった」
寂しい、を遺して居なくなるなんて残酷なことをする、と頭の隅でぼんやり嘆いた。
酸素カプセルを飲んで
僕は深い息をした。
嗚呼、
また僕を独りにするの。
どうしようもなく
他人に惹かれて
どうしようもなく
愛してしまう。
そして僕は
愛した人に突き落とされる。
「アナタが美しすぎた。」
僕の愛は
愛する人の暴力になって
「アナタは悪くないのよ」
愛する人を傷をつけて
傷口さえも掻きむしった。
「終わりに、
しないでよ。」
花びらみたいに消えた後姿に
吐いた息を
聴こえなかったかもしれないけれど。
哀しみが僕を縛って
僕は明日も息をするのだろうか。
酸素カプセルをひと粒
口に入れて、
「一緒に、息をしたい」
涙と血の混じった願いは春風が連れて行って
僕の吐息が
花びらみたいに散った。