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「最悪な未来」が欲しくて泣いた〜夢は叶わなくても大丈夫な理由〜

投稿コンテスト「#想像していなかった未来」に挑戦しています。いつもの政治ネタではありません。

地元が嫌い、夢は世界での活躍

小学生の頃から、地元が大嫌いだった。

そんな場所にいる自分が嫌いだった。

とにかく今いる場所から逃れたくて、中学は勉強に明け暮れ、高校では勉強と輝かしい外の世界の妄想に明け暮れた。

「複雑な家庭環境」が生まれながらの妄想癖に拍車をかけた。

努力と妄想の甲斐あり、第一志望の大学に合格し、一番近い都市部である大阪で一人暮らしを始めた。

18歳、無敵状態だった私は、異世界を求め、目につくあらゆるアルバイトをし、欲しいものを買い、やりたい事をやった。

この時、4年間ニューハーフのママのもとでアルバイトをした。楽しかったし、刺激的だった。
とにかく、人生は好きに生きるものだと学んだ。
そのママは、今では漫画の主人公にもなっているような有名インフルエンサーだ。

初めて学校以外の交友関係を持った。
進学校から国立大学に行くような友達は沢山いたが、アパレルの専門学校に行きながら、毎週のように夜遊びに誘ってくれる友達は初めてだった。
人生は自分でデザインするものだと学んだ。

ちなみに、時は2000年代。

浜崎あゆみとパリス ヒルトンが流行っていた。

初めて行った渋谷の街は、どこからともなく、人が多くて、TSUTAYAから見下ろすスクランブル交差点は、根無草の集まりに埋もれて、自我のない世界が心地よかった。

その時、ふと思った。

世界のどこでも公用語が英語になればいいのに‥。

その後、就職活動を迎えた私は、

かなり苦戦し、メンタル的にもギリギリの戦いの末、

外資系航空会社に就職した。

社内公用語は英語だった。

夢の舞台、軽やかな根無草になりたかった

パリス ヒルトン世代。

庶民だけど、五つ星ホテルに泊まって、マッサージやネイルをしたり、夜はワインバーでシャンパンを飲む。笑

公用語は英語で、多国籍の集まりに出かける。

憧れていた生活だった。

こうやって生きようと思っていたんだ。

幼い頃から「恥ずかしいから地元の方言を出すな」と親に言われた。

もう、そんな事気にしなくていい。

数年そんな生活をした。全てが均質でシンプルで、全自動のようだった。

ここにいるのは、私じゃなくても、どこかの20代女性でもいいのだろう。

サービスアパートメントで、家事もせず快適に暮らす私は「宇宙を漂う量子」のように、代替可能な根無草だった。

そう感じた時、怖くて、空虚で、涙が出た。

「最悪な未来」にたどり着いた

一年後、帰国するために転職した。

地元に程近い神戸の会社で、色んな方言を話す人たちといた。

英語を公用語として、世界で活躍したいという夢を叶えた。それは嬉しかったが、その生活は幸せではなかった。

もう自分の夢や憧れではなく、地道に生きてみようと思った。自分が頑張れる事を謙虚にやってみよう。

お洒落なバーにも行かない、ブランドのプレゼントもくれない人と出会って結婚した。

彼は根無草のようにどこか遠くに行ったり、急にいなくなったりしない。

絶対に一生乗らないと決めていたはずのママチャリに息子を乗せて保育園に行く。

昔のように運転手もリムジンもない。

家事を手伝ってくれるお手伝いさんもいない。

関西弁が公用語の会社では、大切な同僚たちに囲まれながら、新規プロジェクトを成功させる事ができた。

今、私は根無草ではない。

帰らないといけない場所があって、私でないとできない泥仕事が山積みだ。

今、私は幸せだ。

一番最悪だと思っていた未来にいる。

夢は叶わなくても、幸せにはなれる

30代になった私は学んだ。

自分が頭で考えて良いと思う事と、本当に自分が幸せになれるという事は全くの別物だ。

ただ、執念深い性格ゆえ、一度は夢を叶えなければ執着していただろう。

だから、夢を叶えてみてよかった。

だけど、夢を叶えるかどうかなんて大した問題ではない。

どんな状況でも、自分の幸せについて素直に、前向きになれる人は、絶対に幸せになれる。

意地やプライドで頑固になっていては、目先の望みは叶えられても、むしろ幸せに逆行する場合がある。

ちっぽけな自分の、頭でっかちな意志なんて、大いなる宇宙の意志には敵わない。

私は、今いる場所が大好きだし、日本語や関西弁が愛おしい。子どもたちにはローカル文化を沢山経験して欲しい。

人間は代替可能なんかではなく、どこにいようとも文化や歴史という大地に根を張った存在だ。

その大地に根差している限り、夢は叶わなかったとしても、季節が巡るように緩やかに、あるべき未来へと導かれる。心配無用、迷子になんかならない。

だから、夢は叶ってもいいし、叶わなくてもいいのだ。

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