ドイツで未経験からUXデザイナーとして就職するまで
はじめに
2017年末に留学でドイツに来て、現在はフルタイムのUX/UIデザイナーとしてベルリンのIT企業でWebやアプリのデザインをして働いています。
2年前までデザインの仕事をしたことは全くなく、UX/UIデザインはこちらに来てからブートキャンプ(約1年のオンラインコース)で勉強しました。未経験からデザイナーとして海外で就職するというのは少し稀かもしれません。
実際にUX/UIデザイナーとしてドイツで働いてみた感想は以下の通りです。
ベルリンに来るまでは東京でそれなりに激務な環境で働いており心が折れそうになっていたので、特にこちらの労働環境の良さにはとても感謝しています。毎日9時間眠れるのは嬉しいです。
ただ全てがパーフェクトかというとやはりそんなことはなく、特にフルタイムの仕事を得るまでは本当に大変でした。また、クビになるリスクも高く、特に半年ある試用期間中の解雇はよくあります。(以前働いていたスタートアップでは多くの同僚がこの期間中に解雇されていくのを見ました…)
この記事では、全くの未経験からフルタイムのUXデザイナー職をベルリンで得るまでを書いていこうと思います。
前職と留学について
東京で文系の大学院を卒業したのち、新卒で官庁に入って数年は国会の対応等の仕事をし、外資系のコンサルティング会社に転職してからはSI系プロジェクトのPMOの仕事をしたりしていました。
色々と面白いこともありましたが結局自分が何がしたいのかをよくわかっておらず、とりあえずそれまでで稼いだお金を使って夢だった留学をすることにしました。(追記:この辺大分展開が急なのですが、コンサルの仕事があまりに合わず鬱々としていたので、とりあえず気分転換&現実逃避にヨーロッパに来てしまった感じです)
ヨーロッパで英語で学べて学費が安い大学院にいくつか出願していたのですが、ベルリンの大学院から合格通知が届いたのを幸いに、卒業後何をする見込みもないまま、完全に見切り発車で渡独しました。(ちなみに、当時ドイツの国立大学は半年の授業料が5万円くらい、家賃もシェアアパートの場合月5万円程度だったので比較的安価に留学できていました)
ベルリンでの生活はとても楽しく、できればこちらで就職したいと思うようになりました。ただ、政治学専攻であることと、かつ私のドイツ語力(中級程度)ではこちらで就職先を見つけるのは難しいだろうことは予想はできていました。文系の仕事であればやはりドイツ語は上級(C1-2)レベルくらい必要だと思います。
ちなみに英語力は日本を出る前の時点でTOEICは945点、IELTSは7.0くらいでした。スピーキングとリスニングについてはこちらで働くようになってから改善できたと思います。
幸いにも、在学中にベルリン市内のITのスタートアップでビジネス・デベロップメントの仕事(使用言語は英語と日本語)をアルバイトとして得ることができたのですが、卒業後にフルタイムの仕事を探すには他に何かハードスキルが必要だと感じました。
UXデザインとの出会い
そんな折、アルバイトで働いていた会社でUXデザインチームと連携をする機会があり初めてUXデザインの存在を知ることになりました。
それまでデザインといえばグラフィックデザインやWebデザインについてしか知らず、大学や専門学校で教育を受けたデザイナーがビジュアルのみを作るものだと思っていました。ただ、UXデザインの場合はUIを作る過程でユーザーへのリサーチや物事をロジカルに考える力が必要だと知り、自分の経験が活かせるのではないかと感じたことがきっかけになりました。
実際これは本当で、UXデザイナーとしての仕事の中でユーザーやビジネスの問題を見つけそれをどう解決していくかを考える際には官僚やコンサルタントだったときの経験が生かされているように思います。同じようにステークホルダーへのプレゼンも多いです。
UXデザインブートキャンプ
UXデザイナーになることを決めた後は、ゼロから学べるオンラインでのブートキャンプを受講することにしました。
英語でのUXブートキャンプは、General Assembly、Spring Board、IronHackなどいくつかありますが、オンラインで学費が比較的安く、ベルリンが本拠地のためドイツでの就職実績が多いCareerFoundryのコースを選びました。費用は当時で5,000ユーロ未満くらいだったと思います。
(興味のある方は受講料が5%割引になるリファラルのリンクを貼っておくので、良かったらどうぞ。日本からでもオンラインで受講できます↓)
https://careerfoundry.com/en/referral_registrations/new?referral=KrDeYz0D
CareerFoundryのUXデザインコースの良い点としては、以下の点があげられます。
悪い点はそれほどなかったと思いますが、付属のUIコース(2-3ヶ月くらいの分量)ではUIデザインのツールの使い方などの説明が不十分だったので、大部分は自分で勉強せざるをえなかったです。ただ、FigmaやSketch、AdobeXDといったUX/UIデザインのツールはPhotoshopやIllustratorといったツールより習得が容易かと思います。
一般にUXデザイナーとして募集されている仕事でも、ミドルサイズまでの会社ではUXとUIデザインの両方のスキルが求められていることが多いので、UXだけでなくUIデザインも学んだ方が絶対に良いです。
私はそれまでデザインの仕事を全くしたことがなかったためこのような一貫して学べるブートキャンプを受講しましたが、すでにグラフィックデザインやWebデザイン等の仕事をされていてUXデザインへのシフトを考えている方は、より安価なオンラインのコースをとって独学することも可能だと思います。
特にCouseraでGoogleが監修しているUXデザインコースはおすすめです。
https://www.coursera.org/professional-certificates/google-ux-design
ポートフォリオ作成と就職活動
上記のコースを修了し、ポートフォリオ用のウェブサイトを作った後で就職活動を始めました。
ポートフォリオはAdobe Portfolioを使って、1ヶ月くらいかけて作りました。一般的にプロジェクトは3-4つくらい載せた方が良いようです。
結果から言うと、就職活動を始めて1.5ヶ月後にオンラインでの日本のフリーランスの仕事、その2ヶ月後にベルリン市内のスタートアップでのインターン、その3ヶ月後にフルタイムの仕事を得ました。現在は別のミドルサイズのベルリンのIT企業でProduct Designer(≒UX/UIデザイナー)のタイトルで働いています。
特にブートキャンプ修了からの2-3ヶ月の就職活動は、ちょうどコロナの影響が出始めた頃でもあり、非常に大変でした。
実績を作るため、まずは日本から短期のフリーランスの仕事を得ることにしました。東京のUXデザイン事務所に直接メールで応募し、運よく短期のプロジェクトに入れてもらえることになりました。
その仕事と並行しながらベルリン市内のUXデザイナーの求人(インターン、ジュニアレベル、ミドルレベルも一応)に応募しました。記録をつけていなかったので正確には覚えていませんが、40-50社くらいは応募したと思います。一応東京の会社にも応募し、何度かオンラインで面接もしました。
この時使っていたプラットフォームは、主にIndeedとLinkedInです。その他にスタートアップの求人が中心のAngelList等も使用しました。特にLinkedInは重要で、リクルーターからメッセージが来ることもあるため、毎日チェックしていました。
実際にインターンの仕事は、LinkedIn上でスタートアップのCEOに直接メッセージをしたことで面接に漕ぎ着けることができました。なお、今の仕事もLinkedInでリクルーターから声をかけてもらったことがきっかけです。そのため、LinkedInには常に最新の職歴を載せ、ポートフォリオのリンクを貼ることをお勧めします。
一般的なUXデザイナーの求人プロセスとしては、以下の通りです。
もちろん会社によって変わってきますが、これが一般的なプロセスだと思います。ただ、GoogleやAmazonのような大きな会社は10回以上面接があると聞いたことがあります。
就職活動をしていた2-3ヶ月のうち、少ない時は週に1-2回、多い時は毎日面接がありました。しかし、やはり実務経験がほぼないことことが大きなネックになり、ポートフォリオのスクリーニングやデザインチャレンジを突破したとしてもお祈りを受けることが多かったです。
2ヶ月経ってもインターンすら決まらずもう日本に帰ろうかと思っていたところ、先述のスタートアップのCEOからLinkedInで返信があり、面接やデザインチャレンジを経てインターンとして受け入れてもらえることになりました。しかも、3ヶ月のインターン後はパフォーマンス次第でフルタイムとして働くことができるということだったので、喜んで契約を結びました。
この会社はアーリーステージのスタートアップだったため、インターン及びフルタイムの給与はかなりひどいものでしたが、この時は給料よりもフルタイムの契約とそれに付随する労働ビザを得ることが最重要課題だったので目をつぶりました。
ちなみに、ベルリンで労働ビザを得るのは容易で、年収約30Kユーロ以上の仕事の契約書があれば許可が降りるはずです。(追記:今は要件が変わっているかもしれません。家賃の高騰もあり約30Kユーロ程度の年収だとビザが降りない可能性もあるのでご注意ください)
その後ブルーカードという定住許可を2年半で取れる別のビザを取得しましたが、この種類のビザを得るにはITやデザイン系の仕事であれば約43Kユーロ以上の年収が必要だったと思います。
おわりに
以上がドイツで未経験からフルタイムのUX/UIデザイナーの職を得るまでの体験談です。
他業種からの転職が比較的容易かつ給与が高水準というのもあり、ジュニアレベルのUXデザイナーの就職難易度は非常に高いです。私がインターンとして採用されたUX/UIデザイナーのポジションには、約250通の応募があったと後に聞きました。ただ、一度インターンなりで経験を得ることができればその後のキャリアパスは悪くないのではないかと思っています。
少なくとも私は今のところとても楽しく仕事ができているので、今後もUX/UIデザイナーとしてのキャリアを積んでいきたいです。