南極石
南極石。
書店で本をめくってると、出てきた。
おそらく、私の一生で南極に行く機会はないだろう。
それでも、南極船の話題を取り上げているとみてしまう。
以前、こんな記事を書いた。
未知の世界を見てみたいという憧れは、ずっと持っていたいと思うのだ。
そして私は、「南極石」の存在を今まで知らなかった。
初めてこの鉱物を発見したのは、日本の南極観測隊だといわれているそうだ。
1963年、南極大陸ドンファン池で、第一次から南極観測隊に参加している探検家の鳥居鉄也氏が発見したという。
別名:アンタークチサイト
ハロゲン鉱物。
塩素やカルシウムなどを主な成分としている。
針状結晶。
融点が25度であり、鉱物でありながら室温程度でも融解してしまうため、鉱物標本意外に直接的な用途はないと書かれている。
現在では、カリフォルニア州ブリストル湖、南アフリカ・リンボボ州、中国、ロシア、オーストラリアなどでも採取されるという。
なんと、火星にあるコロンビア丘陵という箇所でも採取されたのだそうである。
地球外でも産出されている。
益々、「南極石」に浪漫を感じてしまう。
友人の娘さんは昔から宇宙に関する研究を志し、宇宙のインフラについてなど、そもそも人間が宇宙に行く前提の話をずっとしているのだそうだ。
もう、海外ではないんだね、などと笑いながらも、いつの間にか進化の速度が増している今について考える。
無人◯◯、自動◯◯。AIに人間が追い越されていく。
AIと人間の男性が恋をする「HER/世界でひとつの彼女」という映画もあったっけ。
もう、領土をめぐっての地上戦など、地球上にはなくなると思っていた。
戦争になったら、ボタンひとつで地球がなくなると思っていた。
人のものに執着して欲しがったところで、それが何になるだろうと。
たくさんの命の意味は、いくつもの戦争を経て、悲しみと共に人間の記憶に刻まれてきたのではなかったのか・・・。
ウクライナの年配の女性が、ロシアの兵士の前に立ち、
「ポケットに、このひまわりの種を入れなさい。あなたたちが倒れた後に、ひまわりの花が咲くでしょうから。」
と泣きながら訴えていた。
ソフィア・ローレン主演「ひまわり」に出てきたひまわり畑が思い出された。
私の脳裏に、明るく黄色い花畑と、雪に覆われた白い世界という対照的な世界が浮かんだのだった。
雪が手のひらで溶けるように、南極石も25度でゆるりと溶けるのか。
実際に見たわけではないので、そして、鉱物に分類される以上、雪のひとひらのような儚いイメージではないのだが、南極石に惹かれてしまった。
人生だって、同じようにあるところでゆるりと溶けて、また冷たいところで結晶化して、また、ゆるりと溶けて・・・という繰り返しをしているようにも感じられる。
南極石を調べると、冷凍庫での作り方が書いてあった。
塩化カルシウムと精製水を45:55の比率で混ぜ、湯煎してサラサラの状態になったら、冷凍庫で冷やす。
結晶化しなければ、塩化カルシウムの結晶の粒を加える。
成分はほぼ同じで作れるものだとしても、私は生粋の「南極石」に出逢いたい。
なぜ、南極の氷や石に惹かれるのか・・・。
足を踏み入れられていないところの、白くて、半透明で、冷たいもの。
そこに純粋さを感じるからかも知れない。