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グレー

 今にも雨が降りそうなシルバーグレーの雲が動いていくのを、見ている。
 この部屋を選んだのも、窓から大きく空が見えるからだ。
 窓から見える景色は最も大切。
 緑ももちろんいいけれど、私の場合は何かに遮られることなく、向こうの向こうまで空が見通せることが条件だ。

 グレーの雲が流れてくると、そのうちに緑の濃い匂いが立ち上り、アスファルトが濡れる音がしてくる。
 晴れた空も好きだけれど、雨の降り始めの方が、心がフラットになる。

 一つとして同じものがこの世にないValerie Casadoの器を見ていると、同じような落ち着きを感じる。
 南フランスのアトリエで作られる陶器。
 しかし、作品は白からグレーへのグラデーションの中にある。
 レエスの模様も、縁の処理も、抑揚のないグレーに繊細さを与えているようだ。


 気持ちがささくれそうになる時に、慈しみの雨が降ってくれるといい。
 自分の中にある繊細さを、しんとした雨で思い出せるような気がする。


 蚤の市で買った古い鏡も、似たようなテイストで、こういう色合いが私にはしっくりくるのだ。
 汕頭のハンカチーフも、刺繍が少しグレーがかっているのが好きである。


 温かいグレー。
 銀が燻んだような。

 静かに、白とグレーの空間にいると、気持ちが鎮まる。

 頭の中のおしゃべりをやめ、思い浮かぶことをそのままにしてみると、新しい発見がある。

 元気でいるために、静かな時間を持つ。
 そのためにグレーと、そこに付随する繊細さを必要としている。



色について。
読ませていただきました。
私は、シルバーなんだろうな・・・。
その通りである気がします。


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