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【読了】佐藤究「サージウスの死神」

佐藤究「サージウスの死神」
たしか米澤穂信さんの「米澤屋書店」で触れられていて後で読むリストに入れた本…だった気がする。
掲載されている本が多すぎて途中からメモを取らなくなったのが私らしいガッカリポイント😅

改めまして。
手に取って「テスカポリトカ」の人だ!という発見?がありました。時系列は逆なのだけど、どうしても過去に読んだことのある作品から印象を持ってきちゃいますね😅


多忙で昼も夜もない生活をしている主人公はふと見上げた先にいた人物と目が合い、次の瞬間、自分の真横に落下してくるという出来事に見舞われます。そして同じ日、たまたま行き合った友人に行きつけの地下カジノに連れて行ってくれと頼み、彼はルーレットを構成する色や配置やシステム、そして音といった全てに心地良さを見出した…。


展開が早いからなのか、かっちりとした文体で胡乱ななにかを切り出しているからなのか、目まぐるしく行きすぎる雑踏のなかに見失ったかもしれない何かを探そうとするかのように読み進んでしまう作品でした。

私はもともとあまり先読みしながら読むタイプではないのだけれど、それにしたってもう本当に、先が見えないことみえないこと!

地下カジノという場所に注ぎ込まれる欲望と身の内に燻る欲求と。
世界とは薄紙一枚隔てた場所で日常を送るということは果たしてそれは本当に生きていると言えるのだろうか。
灰色の世界で浮遊する意識。身体感覚としてのリアルとはどこにあるのか。
脳内に形作られた檻を破る力とは。

後書きで作者が別名義で純文学の賞を受賞した作品かつデビュー作だと知って、ボディブローのように後を引く読後感に納得しました。

(Twitter20230126投稿文の再掲)
・第47回 群像新人文学賞


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