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恋愛は美しいのか、枯れるのか。映画「花束みたいな恋をした」
今さら感は否めないけれど、一時期話題になっていた映画「花束みたいな恋をした」をようやく鑑賞した。
菅田将暉、有村架純、坂元裕二、恋愛ストーリーとくれば、外すわけにはいかない強靭なコマが並んでいるが、期待を裏切らない展開で最後まで楽しめた。きっと、本作を見ながらさまざまな思いに駆られた人が多かったのだろう。その盛り上がりが納得の観賞後感だった。
2015年。キラキラとはやや無縁の地味な大学生活を送っている山音麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)。終電を逃した事がきっかけで、互いの趣味がばっちり合うことを知り意気投合。デートを重ねた末にお互いの好意を確認しあった2人は急速に近づき、同棲へと突入する。好きなことを全て共有し、悩みや辛いことも告白し合う2人の先に待ち受けるものは何なのか。ともに過ごした5年間を綴る。
端的に言えば、あまり人と趣味や好みが被らない2人が運命の人に出会ってしまった!と、夢中で好きな漫画、映画、小説、アーティストについて共有し、急速に愛しあい、そしてすれ違うまでを描いた5年間、ということになる。
ここまで恋愛がキラキラして、ここまで結婚という2文字が空虚に聞こえる恋愛ものもなかなかないのではないのか。プロポーズしてハピエンというセオリーに則らない、独自のリアル路線が目新しい。
そう思うと、恋愛があまりにも美しく幸せであったのならばどんどん結婚から離れていってしまうのかもしれない。
実際2人は、観ているこちら側が嫉妬するほど絵に描いたように「これ以上ないほど恋愛を楽しんで」いる。ただし、そんな時間は長くは続かず、お決まりのように立ちはだかる壁は「ちゃんとしないと」という親や周囲からの圧力。
それに順応した1人は、必死の毎日に疲弊していき、一方の変わらないスタンスに焦りと苛立ちを覚えてしまう。すれ違いと一言で書いて仕舞えばそうなのだけれど、訳知り顔で人生を語りたい大人からすれば「それ見たことか」という展開だ。
思うように夢が叶わず、本意ではない仕事に疲弊する麦。地道に現実を受け入れながらもスタンスを変えずにプライベートを楽しむ絹。2人の溝は次第に広がっていき、かつての思い出だけで繋がっていくようになる。
こういう恋愛ストーリーは大人が甘酸っぱく思い出すにはおあつらえ向きで、結末がありがちだからこそ安心して浸れるというものだ。それに対比するのは、ラストに登場し2人の今後に大きく影響を及ぼす、何もかもが「これから」という若いカップル。
生花のように美しく咲き誇った時期があるかと思えば、やがて萎れて枯れていく。きらきらした眩しい日々は束の間で、それが表題の花束という言葉に込められているように思う。
若い頃にあるはずだった恋愛をフィクションにせよ体験できる心地良さはある。その先にある甘くはない人生も現実だと思えるからリアルに胸に迫る。この辺りの匙加減がとてもうまい映画だった。
イラストレーターを夢見る麦が劇中で描いているイラストがとても魅力的なのだけれど、担当されたのは朝野ペコさんという方。こちらは麦とは逆にイラストで身を立てている方。
\ お仕事 /
— 朝野ペコ (@asanopeko) July 29, 2021
伊藤弘了さん著
『仕事と人生に効く教養としての映画』
発行 PHP研究所
編集 大隅元さん
ブックデザイン 新井大輔さん
イラストレーション 朝野ペコ
伊藤弘了さん@hitoh21 の新刊が発売されました!本文でもイラストがたくさん使われて楽しんでいただけると思います🎬 pic.twitter.com/JGbOlDOJkQ
線がとても個性的で印象に残る。
それにしても菅田将暉、有村架純コンビは最強。演技が上手いなぁとつくづく感じる若手実力派のお二人。キャスティングでほぼ成功を確信しただろうなと思う。
多摩川沿いの2人の部屋も趣味が良かったな。もう少し若かったら今すぐにでも模様替えしたくなっただろう。絶妙な中古物件加減が良くて、駅から徒歩30分というのがその広さを納得させる材料になっていた。
今回の出演はほんの少しだったけれど、要注目の若手俳優清原果耶さん。演技がとても上手で雰囲気もある。大人の顔も子供の顔もできる役者さんだなと感じる(朝ドラは何となく見られていないけれど)。
サブカル好きが合致して盛り上がる、という恋愛もので思い出したのは映画「モテキ」。アマプラだとすぐに見られそう。
この長澤まさみは本当に可愛いし色気ある。個人的には麻生久美子ファンだけれど、彼女の役は逆に痛々しくて良い。
満島ひかりが可愛いドラマ版も捨てがたい。すごい好き。
しみじみ感じるのは、自分は映画の中のように趣味ががっちり合う人とはご縁がなかったなぁということ。考えると、趣味が合わないからこそそれぞれの時間を過ごすことに躊躇がないのかもしれない。ばっちり合う、という感覚が徐々にズレていくのは非常に悲しい。友達であれ恋人であれ。と同時に、もしかして変わったのは自分のほうなのか、と認識することも、少しだけ怖くて悲しい。
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