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「女神さまのお使い」詩―青ブラ文芸部「ぼくはくま」企画参加作品

ぼくはくま
冬の女神様のお使いだ
雪と同じくらい
白く輝く毛並みが自慢

女神様に 命じられて
悲しんでいる 人たちに
なぐさめプレゼントを とどけるのが役目

ぼくはくま

病院のベッドで
寝ている 女の子の元へ行った
くたびれた青いスニーカーが 
ベッドのサイドテーブルに 入れられてる

その靴を 新しい虹色の
くつに置き換えた
靴を 見つけた女の子は 
小さく歓声をあげ 屋上に出て
冬の風と 匂いに 微笑む
きっと 春のぬくもりが
病を治してくれだろう

ぼくはくま

よれよれに汚れた
クマのぬいぐるみが
おもちゃ箱で 泣いている
誰も昔のように 抱いてくれない

そのぬいぐるみに
雪の結晶で作った
魔法のキラキラ砂をかける

一晩あけると 汚れたクマは
まえよりフワフワして
春の土色に もどっていた

おもちゃ箱で 熊を見つけた
坊やは 大きなクマを抱いて
お母さんに 見せに行く
明るい驚きの声が 家中に溢れる
ぬいぐるみは ニッコリニッコリ

ぼくはくま

若い女性が
二度と戻らない恋を 嘆いてる
思い出の品として
羊毛フェルトのシマエナガを
幸せの木に 止まらせていた

その 人形をみるたびに
北海道の 雪と
彼の温かい抱擁を 思い出して
「さよならね」と 独り言をつぶやき
涙を 浮かべる

その人形が 朝起きると
木から落とされて
毛糸が 所々齧られている
そんなことが 毎日続く
彼女は 思い出の写真が ズタズタに
引き裂かれるような 痛みを
胸にかんじている

ぼくはくま

深夜 彼女の部屋に行く
「幸せの木」鉢植えの まわりに
数匹の 大きな灰色のネズミが
シマエナガの 人形で
ボール遊びを している

鋭い歯で 毛糸はほつれる
シマエナガは
「もう 止めておくれよ
体の毛糸がバラバラになってく!!」と訴える
ネズミたちは その声を ますます面白がる

くまは 女神様から貰った
杖を振りかざした
部屋には 青白い稲妻が 何本も 走り
ネズミたちの上に 落ちる
ネズミたちは 背中を焦がされて
森へと よろけながら 逃げて行った

くまは シマエナガを 元の場所にもどし
フゥ―と 息をふきかける
すると よれよれの毛糸がピンとして
昔の美しさと 可愛さが 戻る

翌朝 彼女が シマエナガを
胸に抱いて ベランダから
冬空を じっとみつめていた
新しい恋心が また 小さく燃え始めてた

ぼくはくま
冬の女神さまのおつかいで
きっと 皆さんのお家へも
行くと思うから 驚かないでね

山根あきら様の青ブラ文学部
「ぼくはくま」企画に参加させて
いただきました。 少し長く
なってしまいましたが、山根様どうぞ
宜しくお願いいたします

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立山 剣
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