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「願い紙」―秋ピリカグランプリ2024応募作品

彩ちゃんのこと


彩ちゃんは 小学校一年生の可愛い女の子。
今のおかあさんは、2年前に家にきたが
とても気難しい人で、あまり 子供が好きではない。
彩ちゃんは 家事を沢山手伝わされて、
それに満足しないと「おやつ」も貰えない

庭でカエルを追い払う


初秋の午後 彩ちゃんは 庭でシャボン玉遊び。
一人遊びが 彩ちゃんの 常になっていた。
「シャボン玉のように お空とびたいなぁ..」
シャボンは キラキラと虹色に光り
風とダンスしてる

 ふと 梅の木の根元に大きなガマガエルが
居るのをみつけた。太ってお腹がグミみたいに
ゆらゆら揺れている。 カエルのすぐ鼻先では
一匹の 「こうろぎ」がカエルに睨まれて
おびえて動けなくなっていた。
彩ちゃんは コオロギを助けたくて
シャボン液の瓶を カエルめがけて投げつけた。
 カエルは びっくり。シャボン液まみれの
大きな目をぎょろりとさせて ノッコと逃げていった。
彩ちゃんは「ヤッタァ~」と小さく歓声をあげる。

夜の出来事


夜 彩ちゃんの枕元でコウロギがリーリーと
呼んでいる声で 目が覚める。
 すると枕の上に、今日助けたコオロギが
月の光りの中で タキシードを着て 立っていた
彩ちゃんは ビックリ。
「彩ちゃん 今日は あのガマガエルのギャングから
助けてくれて ありがとう」コオロギは
丁寧なお辞儀をした
「お礼に コオロギの宝物の“願いの種”を
さしあげます」
「願いの種?? それ食べれるの??」と彩ちゃん
「いいえ 食べ物じゃあない。この種を庭に
植えて 7日間水を与えると8日目に 7色の紙の花が咲きます。
好きな色を一つ選び 願い事を一つ 紙に書いてね。
必ず 彩ちゃんの願いが叶うからね じゃあね」
そういって コオロギはパッと消えた
彩ちゃんはすぐまた 寝り込んでしまう

願い事の花の紙


翌朝 枕の上に 小さな種とバラのペンがあった。
{あれは 夢じゃあなかった}彩ちゃんは叫ぶ
言われた通り種を育てると8日目の朝 
地面から緑色の茎が伸び
7色の 芙蓉にも似た 紙の花が咲いた。
彩ちゃんは うすい水色の紙を選び
小さなバラのペンで願い事を 書き
紙飛行機にして 飛ばした

てんごくの おかあさんに もういちど
あいたいの}

願い事を 書いた日の真夜中に 
部屋全体が まぶしい金色に
包まれた。そこには 水色のワンピースを着た
おかあさんが 真珠貝の舟に乗って
微笑んで 両手を広げて 佇んでいた。
彩ちゃんは 「おかあさぁ~ん」と叫んで、
迷わずその腕の中に飛び込んだ。 貝の舟は彩ちゃんを乗せて
秋の空をゆっくりと 昇っていった

翌日 家の人たちは彩ちゃんが
死んでいるのを見つけて 大騒ぎになった
警察の検視官は「食べ物を嘔吐し、
気管に詰まった 窒息死です」と機械的に話す

でも部屋の隅に隠れていた コウロギだけは 
彩ちゃんの願いが叶えられたことを知っていた (1176文字)

秋プリカグランプリ2024企画の応募作品です
初めての ピリカグランプリ応募ですが、どうぞ審査員の皆様、運営の皆様
大変お手数をおかけいたします。このような機会をありがとうございます!

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#こおろぎ #紙 #おかあさん

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