時計回りと反時計回り
時計回りについて、つらつらと考えています。
これは毎年お盆の時期に四天王寺でおこなわれる万灯供養です。先祖の名前を書いたロウソクに火を灯し、般若心経にあわせてお坊さんが伽藍内を練り歩きます。
神秘的な美しさを感じさせるお盆の行事です。
このとき、お坊さんは時計回りに伽藍を回ります。
次は、梅田にあるお初天神にて毎年2月の節分祭でおこなわれる護摩焚きです。
護摩壇に薪を組んでヒノキの葉で覆ったものを燃やし、そこに願いごとと名前を書いた護摩木をくべます。護摩焚き自体は、天台宗や真言宗の密教系寺院でもおこなわれるし、修験道でも神道でもおこないます。このお初天神の護摩焚きは、神社だけれども、京都の醍醐寺派の山伏さんたちが来て、神仏習合のもとでおこなわれます。神主がお祓いをし、修験道の山伏さんたちが経を読み、護摩を焚きます。
供物と一緒に護摩木を焚き上げ、厄災を祓い、ご本尊のご加護を願います。供物を火中に投じ、煙にして天上の神に捧げて、祈願する祭式です。最後、参列者は、火の周りを回らせてもらうんです。
ご覧の通り、時計回りに回ります。
今年の冬の護摩焚きに参加して回ったのですが、時計回りに回りました。
このとき、日本の宗教行事は時計回りが多いことに気がつきました。
たとえば、東大寺の大仏殿は、どういうわけか、参拝者が皆、大仏の周りを時計回りに回っています。大仏さんの正面に立って、左へ回り、最後は御朱印やお守りなどのグッズが売られている売店に出ます。
自然と、そういうふうに回るようにできています。
四国のお遍路も、一番札所から時計回りに巡礼し、八十八番札所にたどり着くようになっています。
まだあります。愛知県の豊川稲荷神社ではお百度参りができるようになっているのですが、時計回りに回るよう、わざわざ指示が出されています。なぜ時計回りと決められているのかは分からないのですが、そう指示が出ています。
さて興味深いのは、イスラム教です。僕はメッカにもカアバ神殿にも行ったことはないけれども、写真を見ると、人々は反時計回りに回っています。そういえば、キリスト教も、祭壇を左に見ながら反時計回りに進みます。
フィレンツェのサンタ・クローチェ聖堂もそうだし、カソリックだけでなくオーソドックス教会でも、反時計回りに祭壇のぐるりを回っています。
これはどうしたことか? 時計の針が回る向きは、日時計の針の影が回る向きを元に決められています。時計の原型は、日時計です。
だから、時計回りの背後には、農耕文化や太陽信仰があるのだろうということは容易に想像できます。
その伝でいくと、反時計回りの元になっているものは、夜の星のではないでしょうか?
夜空の星は北極星を中心に反時計回りに回っているのだから、反時計回りというのは、そこから来ている思想が肉体運動にまで影響しているとは、言えないでしょうか?
そして、北極星といえば、スターナビゲーター。海民や遊牧民などが目印とする星です。
キリスト教やイスラム教が生まれ、最初に発達した社会は、遊牧社会です。
さあ、このことは何を示していますかね?