1章 「しっぱい」のすゝめ ※出版記念 無料チラ見せ公開※
▶️『人間合格』
しっぱいの多い人生を送ってきた。
ぼくには、世の中の「成功」というものが、あまりわからない。
昔の小説家は、知らないことや人と違うことに苦悩したり、人からの視線を気にしたり人と比べたりして、「失格」と言ったけれど、ぼくはとりあえず、人間はだいたい「合格」だと考えている。
だいたいのことは楽しんで、生きていればそれだけで合格でいい。
人生なんて、しっぱいは多いほどいい。
誰かが言う「成功」に振り回される必要もない。
10代の頃のぼくは、まさか自分が教育のビジネスをするなんて想像していなかったし、ましてや「ビジネス」や「起業」という考え方すら頭になかった。
事業を始めたときでも「10年後くらいに、どうにか形になったらいいな」くらいに考えていたのが、いつのまにか応援や期待をしてくれる人が増えて、メディアで紹介されるようにもなった。
社員が6人しかいない会社なのに、「すごい会社」の人たちが期待をしてくれている。
ソフトバンクやJTB、旭化成や三井住友銀行、JAL、ユニクロやリクルート、関西電力、ベネッセ、積水ハウスにJR西日本。あとは、母校の立命館。
どの会社も、子どもや若い世代に期待を寄せている。それでありつつ迷っていたり模索していたりもする。
「5教科を教えない」どころか、ほとんど何も教えない教室として、子どもたちの興味に向き合って「プロジェクト」を繰り返してきたら、結果的にいつのまにか役に立てている。
うちの生徒たちは、お勉強ができる子もそうじゃない子も、学校生活が充実している子も不登校の子も、みんなが好き勝手に面白がりながら、それぞれのプロジェクトに向き合っている。
そこから生まれたアイデアや仕組みや方法論を、面白がってくれる大人たちがいる。ということは、生徒たちの取り組み方は、これからの教育や社会にとって、何かしら参考になるみたい。
むずかしいことをしてきたわけじゃない。子どもたちもぼく自身も、ただやってきたのは「やってみる」を繰り返すこと。
しっぱい大歓迎、人は違って当たり前。むしろ少数派の方がレアでいいじゃん、というスタンスで「やってみる」を増やしてきた。
ここでは、ぼくがそう考えるようになった過去の経験と、これからの教育や勉強、そして10代の過ごし方について紹介していきたい。
「そんなことより、さっさと具体的な方法を!」と思う人は、この章は飛ばしてしまって、この後の【準備編】から読んでもらってもいい。
何にしても、人間に「失格」の人はいないし、みんな合格でいい。
そこに「しっぱい」のスパイスを増やしてみると、人生の選択肢は豊かになるし、可能性は広がるし、応援してくれる人も増えていく。
ちょっとだけ、ぼくの話に付き合ってみてほしい。
▶️受験勉強には「動詞」が少ない
君は今、受験を控えていろんなことを考えていると思う。
「目指せ! 〇〇大学!」
「〇〇学部に入るんだ!」
「あの会社に入りたい!」
「こんな仕事をしてみたい!」
「お金がほしい! 稼ぎたい!」
もしくは逆に、「何がやりたいのかわからない」とか、「どの大学・学部を選べばいいんだろう?」と考えているかもしれない。
「あのガチャでアタリを引いた人がいたらしいぞ」とか「あそこのガチャはいいらしい」、「いやいや実は」なんて噂も聞こえてくる。
……とりあえず、勉強だ!
そんな感じで「勉強を頑張ることが、今の自分にできること!」と思っているとしたら、たぶん数年も経たないうちに「自分は何がしたいんだっけ?」と悩むことになる。
もちろん「確実にそうなる」とは言えない、言わない。
今の世の中はガチャだから、すぐにアタリを引けることだって充分にありえる。けれど、それはやっぱり運任せ。ただ少なくとも、最近では、「お勉強を頑張るガチャ」のアタリ確率は、そこそこ下がっている。
ぼくが出会ってきた社会人も子どもも、活躍している人やそうじゃない人がいるけれど、楽しそうに過ごす人には、共通点がある。
それは、「名詞」よりも「動詞」の人。
名詞を目指すんじゃなくて、動詞を繰り返す人。
〇〇大学、〇〇学部、会社や仕事や資格って、どれも目指しているのは「名詞」。ぼくが知っている社会人も子どもも「動詞」を繰り返している人の方が、楽しそうに過ごしてる。
もっと言えば、お勉強の動詞って、教科書や参考書を「読む」、内容を「憶える」、そしてテストを「受ける」って、どれも「受けの動詞」だよね。
それよりも、自分から積極的に動く「攻めの動詞」を多めに経験しておいた方が、自分の選択肢が増えていく。
それを踏まえて、ぼくが考える「動詞」は、大きく4つ。
「疑う、探す、吐き出す、広げる」。
ぼくはアホなりにそれを繰り返してきたからこそ、今の自分がある。
教室の生徒たちも、この動詞を実践することで、自分の道を歩いている。
そんな話をする前に、ぼくがどんな「動詞」を繰り返してきたか。「どうだ! これが正解だ!」という話ではなくて、ぼくの「しっぱいの変遷」を、自己紹介の意味も含めて書いていこう。
▼続きの目次
▶️医療系一家の「落ちこぼれ」
▶️医者の道から、リベラルアーツ?
▶️「学びたいこと」も「なりたい仕事」もない
▶️「知らない会社」との出逢い
▶️大手サラリーマン中退……10畳の教室
▶️選べる「コマンド」を増やす
▶️AIの進化で「能力の差」がなくなる
(▼第2章につづく)
▼購入はこちらから
興味が湧いてきた人はこちらをポチッとお願いします。全国の書店でも販売されます。
▼各章目次
▼イントロのチラ見せ公開はこちら