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8年間、"正体不明の怪しい教室"を続けてたら、本を出版することになった話。

2016年、脱サラして京都に戻ってきて、「5教科を教えない教室」なる大変怪しいものをつくりました。

窓がなく、中が全く見えない、倉庫みたいな教室(と、言い張っていた場所)に、夜な夜な子どもたちが吸い込まれていく…。

中では子どもたちがお商売を計画したり、
不思議な実験を行ったり、
謎のアート作品を作ったり、
ロボットを動かしたりしてるらしい…。

怪しい。怪しいというか、もはや怖い。

当時、近所では「マルチ商法の拠点じゃないか…」「新しい宗教…?」と噂されるくらいの正体不明さでした。

そこから、8年。なぜかその怪しい教室のことを書いた書籍を出すことになりました。
しかも教育書籍の老舗、赤本の教学社さんから。

とてもありがたい。
ただ、とてもありがたいんだが、何が起きた。

受験に関係ない。そもそも5教科全く教えていない。
なんなら「教える」というスタンス自体持っていない、僕らです。
大丈夫か、教学社。僕らでいいんか、教学社。
僕らの何を信用してくれたんだ教学社。

あの怪しさ満点の教室がどんな流れで怪しさを払拭したのか、
これは一度ちゃんと振り返っておきたい。
どこで怪しさが消えて、信用できるポイントが生まれたのか、そのきっかけがわかるかもしれない。

ということで振り返って、怪しさミシュランしていきたいと思います。


▶️教室をつくった(2016年)

2016年4月27日、放課後教室「studioあお」を創業しました。学校の勉強ではなく、社会とつながる体験を提供する教室としてスタート。近所の子ども等を集めてイベントしたり、近所の家全部ピンポンして挨拶したり、町内全部ポスティングしてみたり。とにかく知ってもらうところからはじめました。

やべえ。めっちゃ怪しい。
すごくふんわりした内容のチラシが出てきました。情報がなさすぎるというか、もはや何も言ってないというか…。薄すぎて逆に怪文書。
よくこれで潰れなかったな。その点だけ褒めてあげたい。

怪しさミシュラン:★★★


▶️一人目の生徒が入った(2016年)

studioあお、始祖の生徒。
学校終わったらうちに来て、宿題終わらせて、うちで用意してたプログラムをやってという感じ。

お、生徒が入ったって話なので、これは怪しくない…かと思いきや、持ち前の怪しさゆえに、一人目の生徒が入ってから半年間、生徒はこの子だけでした。
※ちなみに後ろに映ってる人たちは手伝ってくれてた学生スタッフたちです。生徒よりもスタッフの方が多い状態がずっと続きました。なにそれ怪しい。怪しいってか意味がわからん。

怪しさミシュラン:★★★


▶️子ども主導のプロジェクトがはじまった(2016年)

ノラ猫の飼い主を見つけたい!という小4女子の発言をきっかけに、ノラ猫アイドル化プロジェクトが始まる。自分で決めた「プロジェクト」を中心に学んでいくスタイルのきっかけ。
みんなの特技を持ち寄ってつくったノラ猫写真集は200冊売れて、飼い主も見つかった。

やっと怪しくなさそうなのきました!studioあおの根本とも言える「子ども主導のプロジェクト」の源泉になった出来事です。
これは多くの人に共感してもらった取り組みなので、全然怪しくないかと思いきや…

はい、残念!怪しい!
ノラ猫を追いかけ、他人の敷地に入って勝手に撮影するの図です!プロ意識の高さが裏目に出ました。

怪しさミシュラン:★★


▶️初めて教育者として登壇した

「先生の学校」という教育者の学びの場を主宰していた三原菜央さんが、初の登壇機会をくれました。約50人の教育関係者の前で「プロジェクト」を中心にした学びについてお話ししました。

あがり症なので、こっそりペットボトルに芋焼酎を入れて登壇した結果、とっても楽しくお話しできました。
これ以降、登壇のお声がけを多方面からいただくようになりました。
まだまだ新しくて、「プロジェクト型の学び」や、「探究」といった文脈についてよくわからないという方も多いので、たくさんの人に聞いてもらえるのはありがたいです。

ただ、全力で捻じ曲げた見方をすると絵面がマルチ商法セミナーに見えなくもないので、怪しさミシュラン的には星がどうしても付いてきてしまいます。
(※先生の学校は1ミクロンも怪しくない取り組みです)

怪しさミシュラン:★★


▶️初めてテレビに出た(2017年)

「よーい、ドン」という関西ローカルの番組のコーナー、「となりの人間国宝」(街なかで出会った印象に残った人を取材する番組)で教室の様子が写りました。この番組のおかげか、それからテレビオファーが割と来るようになり、年に2,3回のペースでいろんな番組で取り上げていただいています。

テレビで教室の中の様子が出たことで、問い合わせがいっぱい来ました。
狭い教室のキャパはすぐにオーバーして、近くの大きいテナントに移転。おかげさまで怪しさ払拭かと思いきや…

残念!ビルの名前が怪しい! YOKAI SOHOて!
住所が怪しいって致命的です。

怪しさミシュラン:★


▶️生徒が(勝手に)どんどん想像超えるように(2018年〜)

生徒たちのプロジェクトがどんどん世の中に飛び出したり、驚くような規模になっていたり、教室外でも自分で活動していたり。いい意味で大人の想像やコントロールの外側に。

「社会とつながる」が大事なテーマのstudioあおですが、つながるというよりも「飛び出すっ!」って感じのプロジェクトがいくつも出てきました。

チャレンジングな目標やテーマを設定し、たくさんの人に助けてもらいながら実現していく。過程でたくさんの"しっぱい"はありますが、むしろ"しっぱい"自体が学びであり、教材。
"全部うまくいっちゃうプロジェクト"なんて試行錯誤の余地もなくて、もったいない。

ただ、ここら辺まで来ると、逆になんでstudioあおの子はそんなにプロジェクトがポコポコ出てくるんだ。優秀な子だけを選んで選抜しているんじゃないか。と怪しまれます。

うまくいっても怪しまれる。なにしても怪しい。怪しいの天才。
(ちなみに選抜してません。誰でも歓迎です)

怪しさミシュラン:★★


▶️「探究」が必修化した(2022年)

文科省が「総合的な探究の時間」という科目を高校で必修化しました。そのことがきっかけで、「自分が設定した、答えのない問いに向き合う学びのスタイル」の認知が広がったように感じます。

これのおかげで随分怪しさ消えた気がする。お上の後光を背負ってる感じ。
「学校でもやるようなやつなんですよー」っていうので納得を得やすくなったし、何しろ学校や教育委員会、企業さんからのご相談が増えました。

だがしかし、「探究」という言葉自体が安売りされているというか、
なんか「5教科以外の話しとけばとりあえず探究」とか、
「企業からお題もらって、いい感じにプレゼンさせとけば探究」
みたいな空気が好きじゃなくて、「まあ、うちはPBL(プロジェクト型学習)なんすけどね。実際に"やってみる"ことが全ての中心にあります。他とは違います。」みたいなこと言ってました。

その変なこだわり怪しい!
ていうか、PBLとかアルファベットの名前怪しい!
という意見は甘んじて受け入れます…。
(※最近はもうめんどくさくて探究の塾って言ってます)

怪しさミシュラン:★★


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みなさんどうでしたか。
どこでうちの教室の怪しさが消えたか、そのポイントを発見するために「怪しさミシュラン」してみましたが、僕は一つの結論に達しました。

今もまだ、全然怪しい。

振り返ってみたけど、怪しさ抜けてなかったわ。だめだこりゃ。

ただ、まだ怪しいんだけども、全然怪しいんだけども、教学社さんがうちの何を信用してくれたかはなんとなくわかってきた。
子どもたちの「やりたいこと」に8年間毎日向き合ってきた。この一点においては、うちは信用に足るかもしれない。
そこがうちの素敵なところなんですよ。その素敵な雰囲気だけ伝わってたら嬉しい。


で、今回出版する本はこの8年の実践の中で僕らが気付いたことと、築いたことを出し惜しみせず、盛り込んだものにしました。
ただ、まだまだ知名度もない僕らは、ただ待っててもたくさんの人には届いていかない。
ので、もう本の中身を試しに読んでもらうのがいいんじゃないかと考えました。

と、いうことで本の中身を一部を無料公開します。

8月頭の1週間、各章の一部をnoteで公開していくので、みなさんぜひとも読んでくださいまし。で、面白かったら買ってみて。

本でしか読めない部分や、副音声(と僕らが言ってる本文中のミニコラム)、ワークシートなんかもあるので、もちろん本の方が濃い内容です。

うちのこと、もっと知ってくれたら、怪しさも少しは払拭されるかもしれない。
大手を振って、街を歩けるかも。(別に歩いてるけど)

出版のオファーをいただいた2023年秋には
「受験のことを全く知らない僕に書けることなんてあるのか」と不安でしたが、ただ一点「進路」(というか「未来の選択」)という点においてはお役に立てる本になったと思ってます。
まずはチラ見せ公開note、ぜひ読んでみてください。


できるだけこの本のメッセージがたくさんの人に届いて欲しいので、
もし読んでみて、面白かったら周りの人にも教えてあげてください。
SNSでのシェアも大歓迎です!

🔽目次も公開しておきます


読んでくれてありがとうございました。

川村哲也

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