バイトをドタキャンして広島に行った話
初めてバイトを休んだ。
春休み、大学の休みの中で最も長い休みだ。思えば夏休みも冬休みも地元の小学生と全く同じ期間で長期休みに大学生みをいまいち感じらなかった。だから春休みの期間を知った時、自堕落な生活が一月以上もゆるゆる続けられる事が嬉しかった。
が、しかし、実際にはどうだ、私の春休みはバイトに忙殺されていた。これは完全にしくじりだ。これくらい余裕だな〜とか言ってシフト入れまくった自分を、休み前の自分を全力で止めたい。加えて新しく掛け持ちし出したバイトはフードコートの飲食店なので仕事がマルチタスク。一つのことを黙々と作業するのが好きな私にはとことん向いていなかった。向いてない仕事を毎日やる事は思ったよりしんどく精神が削られる。そんなおり、なんだかもうどうでも良くなって、気づいたら店長に仮病のラインを送っていた。8連勤の最後の日だった。
バイト逃避行
バイトを休んだ朝(午前9時くらいだったと思う)私は小さなトランクに1日分の着替えと乾燥機から取り出したまんまの下着が入ってる洗濯ネットを入れて部屋を出た。
そういえば、店長に送った仮病のラインはあっさり通用して私はなんなく休みをもらえてしまった。構えていた分肩透かしな気分だった。
駐車場の赤くて小さな愛車デミオに乗り込みエンジンをかける。行き先は広島。兎に角、別の県に行きたかった。九州でも良かったが関門トンネルを通るので断念。(関門トンネルを通るのが苦手なのだ)
車を買ってもらう際、両親と約束した事がある。その一つが初心者マークが取れるまで高速道路を使わないこと。危ないのと私がいろんな所に行きまくりそうだから、とのこと。なるほどよく分かってらっしゃる。確かに以前の電車での島根旅行に行ったとき「高速が使えれば」と何度も思った。しかし、私は約束事を守る良い子なので広島へは高速道路を使わず下道で行く。
山口県は、というか中国地方は思ったよりでかい。舐めてかかると本当にやばい。下関から広島市内まで下道だと片道6時間以上。高速だと3時間くらいなのになとSpotifyの適当なプレイリストをかけて運転する。
今回も1人旅なので話相手はいない。運転中は電車移動とは違いスマホや読書をして時間を潰すことが出来ない。恋するプレイリストを耳で拾いながら、ほぼ瞑想のような自問自答を脳内で繰り返すのみだ。ちなみに恋する予定は特にない。
1日目
1日目はほぼ移動で終わってしまった。途中のパーキングエリアで予約したゲストハウスにチェックインをして、近くのお店で広島風お好み焼きを食べた。「広島“風”というと広島県民は微妙な気持ちになる」と広島出身の子が言っていたのを思い出す。他県のお好み焼きと広島でこお好み焼きの認識のずれが明確になるからとのこと。
さて、初めて広島のお好み焼きを食べたのだが、鉄板に厨房で作られたであろうお好み焼きがどん、と持ってこられて少し困惑した。鉄板に乗ってるこれをどう食べようか、どう食べるのが正解なのか分からない。とりあえず普通のお好み焼きみたいに4等分にして一切れずつお皿にとって食べたがこれが生活なのかも分からなかった。味は思いの外想像通りでマヨネーズとソース、卵と麺の味。マヨネーズとソースが薄い卵?とその下のもちもちの麺と生地を包みこんで一体にしている。たっぷりのソース味が運転で疲れた心身に染み渡る。やはりソースは偉大だ。
2日目
この日は午前中に宮島と午後に広島市内を観光した。
泊まったゲストハウスはフェリー発着場のすぐ近くで起きてすぐに行けた。宮島といえば厳島神社。JRのフェリーでは航路は潮の満ち引きによっては厳島神社の近くを通るようだ。せっかくなので近くを通る時間を選んで乗ってみた(写真右上はその時に撮った物)。船内は3階層になってて一階は車2、3階は人が乗る場所、JRだから椅子やその配置が妙に電車を彷彿とさせる。何かの規格であろうAdoさんの宮古島のPRアナウンスが流れていたのを憶えている。
平清盛が厳島神社を建てた当時から島へは船で往復していたそうで、フェリーからの景色は船の大きさ形式は違うがそれを通して何百年前の様子を垣間見た気がする。
宮島到着後フェリー駅から出てすぐに鹿がお出迎えしてくれた。人なんか全く興味ないみないにマイペースでうんちをコロコロこぼしながら闊歩する姿はなんとも神の使いとは言い難いw
そんな鹿達とばいばいをしてさて目的地へと歩き出す。右手に海を眺めながら通りに沿って向かうと厳島神社に着く。
神社とあり実際に神社なのだが、個人的には造りや内装設備など“貴族の別荘”というのがしっくりくる。能舞台や廊下など、かつての平氏や人々の営みを見ているようだった。
宮島は食べ歩きグルメも盛んで旅行雑誌や広島特集の記事では決まって宮島の食べ歩きコーナーがあった。しかし、現地に行って驚いたのが酒の多さだ。もちろん私は19歳なので飲まなかったが、飲み歩き用のビールが売られていたりレモンサワー飲み放題のお店があったり、至る所にアルコールが売られていた。あと半年後私が20歳になったらぜひ飲みだおれの旅をしてみたいものだ。
宮島を堪能後、デミオを走らせて広島市内に。
市内に近づくにつれて車の数が多くなりやや渋滞気味になる。市内の道路は運転初心者にはやさしくない。四車線五車線の道路を一体どう走るのが良いのか考えて、ナビを頼りに四苦八苦だ。
なんとかコインパーキングに車を停めて市内散策へ。
至る所に慰霊碑が置かれている為だろうか、都会で現代的、しかしノスタルジーともとれない、畏怖や戒めに近いものが漂っている。広島の街は独特な雰囲気があった。
市内でもう一つ観光した所があり、それが広島城だ。広島に城があるというイメージがあまりなかったが、行ってみればそれなりに立派な構えであった。
お城、というとその街のシンボルで街から天守閣を仰ぎ見る象徴的な存在だと思っていた。実際以前行った松江城はそのような象徴的城であった。大変失礼ではあるが広島城を遠くから眺めた正直な感想は「ちっちゃ!!!」だった。城自体はそこまで小さくないし、なんならかなりしっかりした造りだ。周りの建物が高いビルだからか原爆ドームの印象が強すぎるからか、都会の中にぽつんと佇む姿がなんだかチグハグな印象で少し面白い。
本当は城内も見たかったのだが、車に財布を置き忘れていたので出来なかった。悔しい。
3日目
この日はほとんどが移動時間だった。
向かった場所は福山城。市内から福山市までかなりあり、また、そこから下関まで運転する(両親との約束通り下道で)というなかなかハードスケジュール。
あいにくの雨であったが城内の内装は新しく博物館も見応えがあった。特に色とりどりの甲冑が幾つも並んでいる光景は見事だ。
ぶらぶらと散策をした後、愛車で下関への帰り道を走る。
広島県と山口県は国道二号線で繋がっているのでほとんど一本道で帰れる。途中で3回、サービスエリアで休憩をとりながらゆっくりと帰った。
シャワールームもあるサービスエリアもあって泊まれるじゃんと思ったが真っ直ぐ帰る。
無事に帰れた頃にはどっと疲れがでた。
総括
今回はバイトがどうしても嫌で逃げ出した旅行であった。頭を空っぽにして行く旅行は楽しいことをして良いものを買って美味しい物を食べることで心を軽くしてくれた。
バイト代が1ヶ月分溶けてしまったがもうすぐ給料日なので良いだろう。
ラーメン屋は本当に向かないのでやめよう。それから店長は普通にいい人です。