読書感想文 太平天国
こんにちは。舞えない兵庫と申します。
読書感想文、本日は菊池秀明著 太平天国です。
清末期の太平天国の乱の発生から滅亡までを描いた新書になります。
副題の通り太平天国には皇帝がいませんでした。皇帝は天に御座す上帝ただひとり。他が皇帝を名乗ることは許されません。上帝の次男、イエス・キリストの次男にして太平天国の教祖であった洪秀全でさえその肩書きは天王でした。また、最初期の太平天国では天王 東王 西王 南王 北王 翼王の六王制でした。
移民である客家の反乱という側面もある太平天国はアヘン戦争の敗戦などで苦難にあえぎ、構造的疲労を隠せない清に対する反発、そして厳しい軍律が支持され、またたくまに勢力を広げ南京を制するまでに至ります。
また太平天国では上帝のもとでの大家族主義、大同主義を採用していましたが、実際は太平天国の教え以外に対してはかなり排他的でありこれが中国の伝統的な教えである儒教に対する排斥、そしてそれに対して危機意識を持つ士大夫層の反発を招きます。その中で自ら太平天国を倒そうとする人間が立ち上がります。その代表格がのちに湘軍を率いる曽国藩でした。
曽国藩と洪秀全、ふたりの争いは中国南部を舞台に火花散る戦いとなりました。
見かけ上はキリスト教国でありながらあまりに排他的であった太平天国は欧州列強の支持を失い、また洪秀全と東王楊秀清の内部争いによる粛清劇、天京事変など勢力を落とす太平天国は名将李秀成の孤軍奮闘ありながらもやがて落日の日を迎えます。
最後は上帝に援軍を要請するといって息絶えた洪秀全。彼は天にまします上帝、ヤハウエに会えたのでしょうか。