映画監督、和田誠のフ・シ・ギ
和田誠さんが亡くなって数年が経つ。
不思議なのは、いまだに週刊文春の表紙イラストが続いている事。
どれくらい描き溜めているんだろう。
「文春砲」など過激な週刊誌だが、表紙には記事内容の文字が無い。
そんな週刊誌は他に無い。
和田さんの絵と発売日だけ。
たぶん和田誠へのリスペクトだと思う。
切り抜いて、額縁にでも入れて欲しいのかと思う。
シンプルで味わいあるイラスト。
私は亡くなったさいとうたかを『ゴルゴ13』の顔を、コンビニの本棚で時々確認している。
ゴルゴのシューティングゲームCMを撮った事があるし、子供の頃からのファンだった。
それに私が絵を描き始めるきっかけになった人だ。
残念だがゴルゴの表情に独特の「色気」が無くなった。
明らかにさいとうたかをでは無い。
もともと分業性を取っていたが、ずっとゴルゴの顔はさいとうさんが描いていた。
作品全体をディレクションする人が亡くなって、ゴルゴの魅力が全く無くなった。
ビッグコミック誕生以来の作品で、同誌のアイデンティティにもなっていたが、おそらく遠くない時期に連載終了になるだろう。
ビッグコミックの一枚看板では、もう無い。
ラーメン屋だって、後継者が居なければ閉店するしかない。
真似できない、さいとうたかをのペン使い。
和田誠タッチも同じ。
和田さんを知ったのは、手塚治虫さんの漫画誌『COM』の表紙。
長じて、私は彼の著作『お楽しみはこれからだ』や、似顔絵イラストに夢中になる。
三谷幸喜は和田誠、糸井重里氏との対談で、今まで話していた自分の映画知識は『お楽しみはこれからだ』からの引用が多かったと謝罪していた。
私もだから、耳が痛い。
この二人、「ビリー・ワイルダー好き」とか似ている。
和田誠も映画監督している。
私は麻雀が分からないから、代表作『麻雀放浪記』を見ていない。
でも真田広之の『真夜中まで』や、小泉今日子『快盗ルビイ』は大好き。
日本映画らしくないオシャレな演出。
『真夜中まで』は『お熱いのがお好き』のビリー・ワイルダータッチだった。
ジャズマン真田広之と中国人女性がギャングに追われ、夜の東京を逃げ回る映画。
小道具のトランペット、そして音楽の使い方がとても上手い。
本当に手馴れていた。
なぜか、多くの俳優がカメオ出演。
三谷幸喜や大竹しのぶなど、役名さえ無い。
きっと友情出演。
真田広之と中国人女性が、やはりカメオ出演の唐沢寿明のオープンカーを逃走用に失敬する。
銀座通りを走るのだが、素人でも分かるミスがある。
運転席の二人の背景。
銀座の景色が、車高の低いスポーツカーではない。
スポーツカーを大きなトラックの荷台に乗せて撮影してる。
映画で、演技者の運転しながらの芝居撮影は御法度。
例えばスクリーンプロセスという手法。
スタジオで、車の後のスクリーンに街の風景を映写し撮影するとか、外ロケなら車高の低い特殊な牽引車を使い、運転してる風に撮影する。
今ではCG合成だが。
車高が高すぎる違和感。
何か理由があったのだろう。
試写室でスタッフは、このシーンに全員が眼を閉じたはずだ。
『快盗ルビイ』は『おしゃれ泥棒』や『ティファニーで朝食を』みたいなタッチ。
絶対アイドルだった小泉今日子を、オードリー・ヘップバーンの様に撮ってる。
失敗ばかりの可愛い「女泥棒」に振り回されるのは、またまた真田広之。
三谷幸喜と糸井重里氏たちとの対談裏話が面白い。
和田さんが撮影スタッフ全員の似顔絵を描いて、撮影記念にプレゼントした。
すると、感激した若い照明助手がお礼に来る。
「監督の絵、とても上手です。絶対に絵でも食べて行けます」と。
和田さんは「すごく嬉しかった」と笑ってた。
アマチュア監督なのにセンスだけで映画が撮れてしまう不思議な人。
もっと撮って欲しかった。
私は、そろそろ『麻雀放浪記』を見なきゃ、と思う。
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