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石原さとみと、シンゴジラ


「ヱヴァンゲリオン」は子供向けとは言い難い。

主人公14歳の碇シンジに、ハムレットの様なエディプスコンプレックス設定。

「碇」の名は、グズグズした自身への「怒り」なのだろう。

父、碇ゲンドウと、仄かな恋心を抱く綾波レイの楽しげな会話を見つめるシンジ。

相容れぬ父親、どちらに嫉妬しているのか判らない演出は面白かった。

アスカ、ミサトと女性キャラたちが魅力的な作品だ。

庵野秀明は、幾つか実写作品も作っている。

何年か前の夏、私は蒲田駅に降り立ち、打ち合わせ先に向かう。

駅前の様子がおかしい、車が一台も動いていない。

そればかりか、車の停め方が尋常ではない。

大通りは玩具箱の中みたいなカオス状態。

道路の真ん中に約300人が列を作り、駅の方に向け座り込んでいる異様な光景。

ヤグラが組まれ、カメラが乗っている。

「これ全部、撮影エキストラか」と理解する。

CM撮影で、こんなスケールの現場は滅多にない。

スマホで検索すると、蒲田でのゴジラ撮影情報がある。

「そう言うことか…」

恐らくゴジラから逃げるモブ(群衆)シーンを撮るのだろう。

「シン・ゴジラ」は怪獣映画ではなく、未知の脅威に対応(或いはアタフタ)する政治家や官僚達が主役の映画だった。

怪獣映画では無く、災害対策映画だった。

その頃のコロナ禍と偶然重なる。

政治家や自衛隊へのリアルなリサーチ。

「エヴァ」の要素も巧みに盛り込まれる。

長谷川博己が演じる矢口蘭堂は「碇ゲンドウ」を意識した名。

成獣になる前のゴジラのデザインはヱヴァの「使徒」みたいな顔だった。

出色は、石原さとみ演じる米国の生意気な大統領特使カヨコ・パターソン。

このキャラクターは笑った。

庵野監督は石原さとみに、ヱヴァのヒロイン「あんた、バカ?」のアスカ・ラングレーで演じるようにと、恐らく注文している。

いや、絶対そう思う。

石原は、アスカの声優の言葉の発し方の研究もしていた様に思う。


一言の注文だけで、俳優を輝かせるのが監督だ。

練り込まれた膨大な台詞のスピードが、映画のリズムを作る。

この映画が海外で爆死、不発なのは、台詞劇だからだろう。

字幕に出来る量ではない。

身を乗り出して見ないと、置いて行かれる。

台詞のリズムだけで突っ走る作品なのだと思う。

最初のゴジラ第1作は原水爆の恐怖。

今度は地震や津波、東日本震災や原発事故を含ませている。


恵まれた仕事もあれば、そうじゃない仕事もある。

いつだったか「ヘヴン。(何とか)レストラン」というドラマは、石原さとみが可哀想だった。(別に探さなくていいから)
レストランのオーナーの役だったと思うが。

漫画原作で台詞劇だが、演出が酷すぎた。

無計画なカメラアングル、無秩序な編集。
たぶん、大まかに俳優任せの演出。

この演出家、何を見せたいのか、たぶん何も分かっていない。

狙いなど無いから、空回りし続けるドラマ。

俳優たちは与えられた台詞を話すだけで、誰もが「この現場から逃げ出したい」と思っている様に見えた。

ネットで座長の石原さとみと演出家が揉めたようなニュースを見たが、なんか分かる気がする。
綿密な役作りをして、現場に立つ女優に、その場の思い付き芝居を要求したのだろうなと思っている。
たぶん、この監督は俳優への本当の意味のリスペクトが無い。

石原さとみのドラマで、見るのを放棄したのはこの作品だけだ。
これなら「アンナチュラル」続編でも作ってくれと、あん時、マジに思った。

演出家、監督仕事は、オーケストラの指揮者のようなもの。

タクトに想いを乗せて指示しないと、演者はヱバンゲリオンの様に「暴走」する。

幾つかのドラマに「ヘヴン、何とかレストラン」と同じ臭いを感じて、監督名を確認する。
必ず同じ監督だった。

スタッフロールも笑える。
自分の名前だけペン字、手書きの名前をタイトルクレジットにしている。
他のスタッフは活字なのに。
そんな小細工より、作品を良くする事に努力しろよ。

この人が何故、売れているのか理解できない。

何の作為もないアングルの決め方、そして繋ぎ方。

別の刑事ドラマで、西島秀俊の刑事を意味も無く後ろ向きに走らせる、歩かせる描写とか、軌道を逸した演出があった。
伏線とか、ドラマの筋立てに何の関係も無いのに。
「この後ろ向きだと、身体の調子が良い」とかのセリフがあったかも。

何なんだろう?
西島さんも、理由が判らない演出は拒否しなさいよ。

貞子シリーズ、当然良い悪いは有るのだが、第1作がよく出来ていて、好きなホラーだったから、見てしまう。
しかし、小芝風花の『貞子』映画。(探すなよ!)
なんかおかしい、小芝風花がテレビ局かなんかの廊下で着ぐるみのゆるキャラと意味もなくぶつかっている。
窓外を見ると、昼間の道端で白い着物の貞子らしい足元がある。
カメラがパンナップすると、ハゲた変態おじさんだった。
「何なの? これ?」「ホラーじゃ無いの?」
クレジットを見ると、また同じ監督。
私は、タブレットをオフにした。

何がしたいの?
このズレ加減は、普通じゃ無い。
自分が面白いと思うと、人も面白がってくれると誤解している。

それ以来、この監督の作品は見ないと決めてる。


先日「ラストマイル」を見た。
好きな監督と脚本家だからだ。
このコンビは緻密な演出をする。
『カルテット』が鮮烈だった満島ひかりと、『ドライブ・マイ・カー』で好演した岡田将生だし。
楽しめる作品だった。
でも、本心は「アンナチュラル」の面々を見る為だった。

まあゲスト的出演だし、石原さとみの芝居も「ナチュラル」に、アドリブ入れながら、楽しんでいる様に見えた。

私のピノキオ小説の両方に出てくる電通クリエイター「島田里美」は、キャラは違うが、ご贔屓「石原さとみ」にあやかっている。

もう一度言うけど。

「アンナチュラル」せめて、映画で復活しないかな〜。






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