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【大人のためのクリスマスコメディ】映画『RED ONE』をレビュー

 今回レビューするのは、クリスマスを舞台にしたアクションコメディ映画『RED ONE』です。

 予告編で見てからとても気になってたこの映画。ドウェイン・ジョンソン × クリス・エヴァンスのW主演がクリスマスの夜を派手に暴れまわる、なんてたとえ中身が薄かろうが子供向けだろうが観るしかないでしょうと楽しみにしていました。思いのほか劇場公開が早く終わってしまい見逃したと思っていたら、Amazon primeで即公開ときました。ここらの流れは既定路線でしょうか。ただおかげでクリスマスに間に合いましたので、感想を以下に述べていこうかと思います。

 感想内にはネタバレが多分に含まれますので、未視聴の方はお気をつけください。


映画『RED ONE』

レビュー本編

おおまかなストーリー

 クリスマス前夜、世界中の子どもたちにプレゼントを配るため北極で準備を進めるサンタクロース一行。長らく居場所は秘匿されていたが、ハッカーであるジャック(クリス・エヴァンス)が匿名からの依頼によりその居場所を暴いてしまいサンタクロースは誘拐されてしまう。護衛隊長カラム(ドウェイン・ジョンソン)は世界にクリスマスを届けるため、ジャックを連れてサンタクロース救出のため動き出す_

 映画内では現実の世界に加え、魔法や人外の生物が存在しているお伽噺的な世界も舞台となります。テーマもクリスマスでイマジネイティブな世界観はあたかも子供向けのような印象を与えがちですが、この作品のターゲット層は子供ではなく大人ではないか、と映画を鑑賞して思いました。

大人に向けたクリスマス映画

 今作には主人公が2人います。まずはELF所属でサンタクロース護衛隊の体調を務めるカラム。とても優秀な護衛役でサンタクロースからの信頼も厚いため順風満帆な生活を送っているように見える彼ですが、とある悩みから今期で退職を考えていました。年々悪い子が増え、それをたしなめる大人も減っている。そんな世界にプレゼントを送り届ける手伝いという自分の仕事に無力感を感じ、その意義を失ってしまった彼に仕事を続けるモチベーションはもうありませんでした。また、ジャックはまさにその悪い子に該当する人物。大人になった今でも裏稼業で生計を立て、息子にはあまり関心を寄せていない。悪い子リストは最悪クラスのLevel 4として登録されているいわゆる悪人でした。そんな2人がサンタクロースの誘拐という出来事からバディを組み奮闘していくというストーリーです。「転職」「子育て」といった悩みや大人になってから自分を変えたいと真剣に願う主人公たちの姿が、クリスマスやサンタクロースの救出というテーマの中で描かれているのがなんともいえない面白さを演出していました。大人たちが本気でクリスマスに取り組む様子にコメディ的な爽快感を感じつつ、少し自分の今と重ねてしまうような没入感をえられる人も少なくないのではと思います。

 この救出劇の中でジャックは自らや息子と向き合うようになり、また幼少期から拒んでいたクリスマスやサンタクロースを信じ楽しめるようになります。そんな姿を見てカラムもまた、悪い子だってまだ変わっていける、そんな力がクリスマスにはあるのかもしれないと考え方を変え仕事を続けていくことを選びます。映画としての着地も綺麗でシンプルながらストレートなメッセージがむしろこの作品らしいかなと思いました。

懐かしさのあるクリスマス

 今の大人に刺さるテーマを扱いつつ、そんな大人たちの子供心をくすぐるような表現が多いのも特徴的です。ノームのような空想の生き物たちと同じ職場で働きコミュニケーションをとっていたり、はたまた敵として現れたり。「こんな世界があれば楽しそう」と子供の頃に誰もが一度は考えたであろうファンタジーな世界が見れるのもまた楽しいところです。

 個人的に一番心躍ったのはカラムが扱う道具でした。この道具の光線をおもちゃに当てるとそれが実物になり、これを駆使して任務を行います。作中では主にミニカーに使用していましたが、おもちゃのパンチングロボットに使用してピンチを脱する場面があったりと幅広く活用できるもので、一度自分も使ってみたいなとワクワクしてしまいました。

 この「行ってみたい」「使ってみたい」といった好奇心をとにかく刺激してくる映画で、深く考えずとも楽しめるような作品になっているかと思います。

悪役の存在感は薄め

 サンタクロース誘拐の主犯である魔女グリラや、サンタクロースの兄弟でありながら悪魔へと姿を変えたクランプスなどが立ちはだかる展開があり、アクションシーンはかなり見応えがあるかとは思うのですが、わりと呆気なく退場してしまうのはややマイナスイメージかと思いました。クランプスもまた作品のテーマである「人は変われる」ところを体現するような共闘シーンがあるのですが、そこに至る過程があっさりしててなあなあにされているように感じました。グリラも魔女と紹介されながら最終戦では巨大な魔物へと姿を変えたのみだったのも寂しかったです。子供の頃に考えるような世界観をこれまで作ってきたのだから、もっと無茶苦茶な戦いを繰り広げたほうがむしろ良かったのではと感じました。

 キャラクターの消化が雑と言えば、ポスターにも登場している喋るホッキョクグマのガルシアも登場場面が思いのほか少なくてがっかりしました。カラムとジャックの2人に焦点を当てすぎて面白そうな他のキャラクターが霞んでしまっていたように思います。本部側のガルシアら作業員の動きなどを同時進行で見せる、といった表現も個人的には欲しかったかなと思いました。あくまで本作の本筋はカラムとジャックによるバディものなので不要かもしれませんが、2時間という尺を考えればあっても良かったのではといった感想を抱きました。

まとめ

 映画『RED ONE』鑑賞の総合的な感想としては、粗い部分がありつつも大人が童心に帰れるような世界観とテーマを、爽快感溢れるアクションとコメディのタッチで描き切っている作品だったかなと思いました。大人たちが真剣にクリスマスに取り組むさまをストレートに受け取る映画かと思いますので、日常に疲れてしまった大人やクリスマスにワクワクしたい家族の方々にはおすすめかと思います。

 ここまで読んでくださった方ありがとうございます。


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